暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

紅葉のさんぽみち-2  栄摂院の散紅葉  

2013年12月02日 | 京暮らし 日常編
                 栄摂院の散紅葉

法然上人ゆかりの金戒光明寺は「くろ谷」さんと親しみをこめて呼ばれ、
朝な夕なに鐘の音が聞こえるご近所さんです。

山門の修復が終わり、2年ぶりの公開とのことで、はじめて登りました。
山門上には釈迦三尊と十六羅漢が安置され、天井には蟠龍図もありました。
高台にある山門なので、京都市中と京都を取り巻く山々が一望でき、
有名な南禅寺三門より「絶景かな!絶景かな!」です。

            
         金戒光明寺山門にて

            
金戒光明寺から真如堂へ抜ける道の途中に栄摂院がありました。

   

普段は非公開ですが、この日は門が開いていて入って行く人があり、
後についていくと、素晴らしい庭に出逢うことができました。
緑の苔の上の散紅葉も美しいのですが、
頭上の錦秋を映し出した池の散紅葉に魅せられました。

          

          

素晴らしい庭を特別公開してくださった栄摂院さんに感謝しながら
しばし見惚れて時を過ごしました。
こんなに近くにこんな穴場があったなんて・・京都ってスゴイです!

次は真如堂、正門から一歩一歩本堂へ近づいて行くのが大好きですが、
この日は大勢の人でイメージ通りには進めません。
いつもは閑静な真如堂ですが、紅葉の最後の見頃なので賑やかです。

                
                   真如堂にて

15時をまわっていたので、吉田山荘・真古館で一服しました。
吉田山荘は元東伏見宮家の別邸で、今は料理旅館です。
真古館は、宮家時代の舘をそのまま残したそうで、
外観も内装も大正ロマン(?)の香が残る、素敵なカフェです。
散歩途中に時々寄りたくなります。

          
                  真古館の窓辺(西側)

二階の三方に窓があり、それぞれ趣が違う景色を楽しむことができます。
「紅葉の頃にはさぞや美しいでしょうね・・」
「その頃は混みますので、静かな雰囲気ではないかもしれませんが、
 ぜひいらしてください」
・・それで今日は、空いていた比叡山側の窓辺へ座りました。

珈琲とぜんざいを注文して外を眺めていると、
電柱に鴉が数羽留まっているのが目に入りました。
「あの鴉、何羽だと思う? 5羽かしら?」と私。
「いやいや、2羽じゃないか?」と主人。
北村美術館の「鴉と鳶」を思い出しながら・・・・・平和です。


          
                  真古館の窓辺(東側)

真如堂が見える窓辺に座っている男性が詩を朗読しています
思わず耳を傾けると・・・宮沢賢治の「雨ニモマケズ」でした。


   雨にも負けず           宮沢賢治

   雨にも負けず
   風にも負けず
   雪にも夏の暑さにも負けぬ
   丈夫なからだをもち
   慾はなく
   決して怒らず
   いつも静かに笑っている
   一日に玄米四合と
   味噌と少しの野菜を食べ
   あらゆることを
   自分を勘定に入れずに
   よく見聞きし分かり
   そして忘れず
   野原の松の林の陰の
   小さな萱ぶきの小屋にいて
   東に病気の子供あれば
   行って看病してやり
   西に疲れた母あれば
   行ってその稲の束を負い
   南に死にそうな人あれば
   行ってこわがらなくてもいいといい
   北に喧嘩や訴訟があれば
   つまらないからやめろといい
   日照りの時は涙を流し
   寒さの夏はおろおろ歩き
   みんなにでくのぼーと呼ばれ
   褒められもせず
   苦にもされず
   そういうものに
   わたしはなりたい


・・・とても満ち足りた気分になり、
夕陽が沈みかけている西山を眺めながら、近衛坂を下りました。

                             
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