麻里布栄の生活と意見

小説『風景をまきとる人』の作者・麻里布栄の生活と意見、加えて短編小説。

生活と意見 (第435回)

2014-06-08 11:13:44 | Weblog
6月8日


鷗外全集第五巻三分の二まで読みました。「大塩平八郎」の、大塩が決起にいたるまでの短い独白を読んでいると涙が出ました。しかし、これを書いた鷗外の心情を考えると少しいやらしいと感じました。「じいさんばあさん」はすばらしいですね。私がいうまでもなく。「純愛」が本当に存在したころの物語。しかも、当人たちは純愛という概念すらもっていない。もっていないから「守る」必要も「貫く」必要もなく、ただ自然な心で一人の人を思い続ける。日本が西欧化してなにを失ったか。鷗外は、突き放した書き方で老夫婦を描くことで、痛烈に現代を批判していると感じます。

なんとなく泉鏡花の「清心庵」も読みました。初めて読んだけど、すごくいいですね。鷗外の理性的世界から離れて、いきなり知らない山の中で迷子になったような気分にさせてくれました。

去年から書いている自分の原稿をひさしぶりに読み返して、あまりの悲惨さにやる気を失いました。これも当然のことですが。
コメント
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