鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

まるで暴力礼賛の「ノーカントリー」

2008-03-17 | Weblog
 16日は東京・渋谷へ映画「ノーカントリー」を見に行った。今年の第80回米アカデミー賞で作品賞はじめ8部門でノミネートされ、作品賞、監督賞、助演男優賞、脚本賞の4つを受賞した昨年の代表的な映画で、年はじめから何回も予告篇で紹介されていて、面白そうな感じがしていた。朝一番の回に飛び込むと老若男女とりどりに結構な入りで、アカデミー賞受賞の威力は流石といった感じで、ホットコーヒーを飲みながら開演を待った。
 「ノーカントリー」は原題はNo Country for Oid Menで冒頭は保安官が見るからに凶暴な犯罪者を荒野で捕まえ、パトカーで連行する場面から始まる。ところが、犯人は連行された保安官事務所で後ろから電話を終えた保安官を手錠をかけたまま首を締めて、床に転がり、殺してしまう。場面は変わって、再び荒野に戻り、1人の狩猟者が鹿をねらって銃を放つが、逃げられてしまう。再度、鹿を追っていくうちにギャングの一団とメキシコ人が撃ち合った惨劇が繰り広げられた現場に遭遇する。
 死にかかった運転手から「水をくれ」と言われるが、「水はない」と断る。なおも状況を見ているうちに離れたところにいる仲間を見つけ、警戒しながら近づいていくと、樹にもたれて死んでいた。傍らにある革製の鞄を開けると、なかにドルの札束がぎっしりと入っていた。早速、家に持ち帰り、どうしたものか、と考えているうちに先ほどの水をやらなかった男の顔が浮かんできて、せめて水をやっておくのだった、と後悔し、夜に再び水を持って現場に戻る。しかし、すでに男は死んでおり、具合いの悪いことに一味のだれかが現場に現れ、不審者として追われることになり、なんとか窮地を脱する。
 一方、保安官を殺した極悪人はパトカーを装い、別の保安官らを麻薬取引の現場に連れてきて、殺人の行われた現場検証を行い、一瞬のうちに2人を殺害してしまう。そして高速道路で行きずりの殺人を行い、逃走のための車を奪う。
 ここから札束を持って逃げる狩猟者とそれを取り戻そうとする極悪人、そして、両者を追う保安官の3つ巴の逃走劇が展開される。極悪人は家畜を殺すエアガンを使っていとも簡単に邪魔者を殺していく。トミー・リー・ジョーンズ扮する保安官がOld Manなのだろうが、結局最後まで極悪人を挙げるに至らず、引退してしまい、極悪人は最後は交通事故で瀕死の重傷を負い、法の下に裁かれず、神の報いを受けた、ということか。
 コーマック・マッカーシーの小説「血と暴力の国」をジョエル&イーサン・コーエン兄弟が脚色・監督した作品で、いかにも米国らしい一見、暴力礼賛の映画である。もちろん、こんな暴力や殺人がまかり通っていいわけがない、と思って制作しているのだろう。だから「ノーカントリー」のタイトルは国や政府の何もしない不作を皮肉ってつけているのだろう。身終わって、あまり、後味のいい映画とはいえない。アカデミー賞助演男優賞をもらった極悪人役を演じたハビエル・バルテムの無言で殺人を繰り返す演技が好演を通り越して、不気味で、凄かった。助演でなく主演といった感じであった。
コメント
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