鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

自社株式購入に疑義あり

2006-11-24 | Weblog
 大手鉄鋼メーカーのJFEホールディングスがこのほど、この13日から来年6月30日にかけて3000万株、投下資金1200億円を限度に自社株式の取得を発表した。会社法165条第2項の規定による定款の定めに基づくもので、経営環境の変化に対応して、機動的な資金政策の遂行を可能とするのがねらい、という。同社の06年3月期の単独決算の経常利益は1073億3百万円、連結でも5173億1300万円を稼ぎ、この中間期の連結の経常利益は2238億9700万円と過去最高級の高収益を誇っている。利益面から見て、自社株式取得には一見なんら問題はなさそうだ。JFEホールディング以外にも、産業界でこのところ自社株式取得に踏み切る企業は多い。
 株式価値を高め、機動的な資本政策云々というのは確かに耳ざわりもよく、何の問題もないように聞こえる。しかし、果たしてそうなのだろうか。鈍想愚感子はこの自社株式取得についてかねて疑問を持っている。社員が汗水たらして稼いだお金を株式価値を高めるという大義名分のもとに自社株式を買ってしまう、というのは経営者の姿勢としておかしいと思わざるを得ないのだ。利益が出たら、まず、会社の将来の事業を築くための新規投資に充てることを考えるのが経営者の務めである。会社の寿命は30年と言われ。同じことをしている限り、30年も経てば事業は陳腐化する。従って、次代の会社の事業の柱を育てるべく日夜新規事業へ目を配り、必要な資金、人材を投じるべきである。それが自社株取得に向けられるということはふさわしい新規投資案件がない、ということに他ならない。そんね経営者は失格の烙印を押されても仕方ないだろう。
 それに自社株式取得は株価に対する盲信があるのではなかろうか。株式相場での評価というのは理論的には解明できない要素が多い。株式の時価総額が一定であればいえるのであるが、株式数を減らしたからといって株価が上がるとは限らない。株式数が減れば、同じ配当率であれば配当総額は減って、会社の負担は少なくなるが、配当率を変動させればいいことだ。会社経営にとって、必要以上に株価に神経を遣うことは止めた方がいい。ライブドアのように株式時価総額を企業価値そのものだ、と吹聴して経営を進めてきた経営者が道を誤って転落していったケースを何度も見ている。
 また、従業員にしてみればそんなドブにお金を捨てるようなことをするなら、ボーナスでもいいから従業員に報いてほしい、と思っていることだろう。そんなことをすれば、翌年の賃金交渉に響く、と懸念するのなら、そうならないように交渉すれば済むことだろう。かつて、トヨタ自動車が自社株式購入をしたので、労働組合に直接聞いたことがあるが、御用組合なのか「けしからん」という表現は聞かれなかった。
 会社を経営するのに何が一番大事か、経営者はよく考えてほしいものだ。
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