鈍想愚感

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韓国大使・総領事の一時帰国で済む問題ではない、日韓両国は改めて話し合うべきだ

2017-01-10 | Weblog
 韓国の慰安婦問題を象徴する「少女像」が釜山の日本領事館前に設置されたことで、9日長嶺安政駐韓大使と森本康政釜山総領事が一時帰国した。像設置への対抗措置で、2015年末の慰安婦問題の決着をうたった日韓合意の精神にはんするものとしている。駐韓大使が一時帰国するのは2012年8月に李明博大統領が竹島に上陸したのに抗議して行ったのに次ぐ措置であるが、大使・領事の帰国が韓国に対してどういう効果をもたらすものか、いまひとつわからない。

 韓国の従軍慰安婦に対する日本への反発は朴槿恵大統領が弾劾裁判にかかえられていて、事実上大統領の職務がなおざりとなっているのに加えて、韓国国内世論が反朴槿恵となっていて朴政権が行った日韓合意に基づく慰安婦の「若井・癒やし財団」設立、およびそれに続く日本からの10億円の基金拠出についても日本へ10億円を返そうとの声が起きていて、空位の政府と世論の乖離が目立っている。

 なのに日本側はこうした韓国国内の動向を理解することもなく、一方的に大使・領事の一時帰国に踏み切った。安倍首相としてはプーチンロシア大統領との日露領土交渉がうまくいかなかったのに加え、トランプ米大統領との日米同盟も先行き不透明で、安倍政権の売りであったグローバル外交に陰りが出始めていることから、韓国に対して強硬な姿勢を見せることで、自らの存在を内外に見せつけようと思ったのであろう。

 ただ、冷静に考えればここは韓国国内の動向をもう少し見守るべきであろう。死に体の韓国政府が日本の大使・領事引き揚げに対し、「少女像」を撤去させるような手を打ってくるとはまず思えない。韓国国内世論の声がそんなことを許すはずはないからだ。韓国ではいまの朴槿恵大統領が退任して、新たな大統領が就任するまで対外的な政策が打ち出されることはないだろう。

 となると、次の一手は日本がどう出るか、ということになる。早期に大使・総領事を戻すこともできないし、当然さらに強い追加措置を取らざるを得なくなってくる。大使・総領事が韓国にいないことで、韓国民にとっていかなる不都合が生じるものなのか、いまひとつ理解できない。韓国民が経済的に影響を蒙るような経済的な禁輸措置まで踏み込むことにまで進むしかないだろう。となると、韓国世論はさらに反発し、日韓関係はさらに悪化していくこととなるだろう。安倍首相がそこまで考えて今回の措置に踏み切ったかははなはだ疑問である。

 もっとも韓国が設置している慰安婦の「少女像」はいまや韓国内だけでなく米国、カナダ、オーストラリア、中国にも設置されており、世界各国に50体ある、とされている。いずれも韓国がかつての日本軍の蛮行を訴えるねらいで設置したもので、単に韓国の日本大使館、および釜山領事館前の「少女像」だけの問題ではなくなってきている。日本は2015年末の日韓合意の精神に反するとして「少女像」の撤去を求めているが、こうした「少女像」を設置する裏の心情にまで踏み込んで改めて日韓の話し合いが必要だろう。
コメント (1)
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