鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

初春大歌舞伎で奥さんともども大活躍の片岡愛之助の早変わりには目を瞠らかせられた

2017-01-08 | Weblog
 8日は東京・銀座の歌舞伎座へ行き、2年ぶりに「初春大歌舞伎」を観賞した。前回の初春大歌舞伎では1日3回興行であったのが。昼の部と夜の部の1日2回興行となっていて、幕開けの1867年の大政奉還から150年と銘打っての「将軍江戸を去る」と「大津絵道成寺」、伊賀越道中双六 沼津」のいずれも1、ないし2時間の大作で、見ごたえがあった。とりわけ、最初の出し物で山岡鉄太郎を演じた片岡愛之助が続く「大津絵道成寺」では藤娘から鬼まで早変わりの五変化を見せる大活躍ぶりで、一挙に歌舞伎界の花形に躍り出た印象を受けた。

 「将軍江戸を去る」は徳川15代将軍、慶喜が官軍の攻撃を受けて江戸を退く最後の場面を描いたもので、江戸出発を明日に控え、上野寛永寺で恭順謹慎していた慶喜に対し、幕軍の主戦論者の意見に心が揺らぎ、出発延期を申し出る。それを聞いた山岡鉄太郎が幕軍の部隊が「慶喜様はどなたの面会も受け付けていない」と必死で制止するのを押して、なんとか慶喜に会い、その思いを変えてもらおうとするシーンから始まる。血気にはやった幕軍の兵士は山岡のいかなる言い訳も聞こうともしない。そこへ現れた幕軍の幹部が山岡の味方をし、中へ通してくれ、山岡はなんとか慶喜に面会をすることができ、恭順を翻せば江戸は戦火に巻き込まれ、罪もない人々が血をながすことになる、と力説し、慶喜を説得することに成功する。翌日、慶喜は幕軍が見送るなか江戸を後にする。

 続く「大津絵道成寺」は近江の三井寺で鐘供養が行われ、やってきた藤娘が舞を所望され、舞う。舞っているうちに消え、鷹匠となり、次いで犬と戯れる座頭、さrには船頭が現れ、再び藤娘が現れ、いずれも踊りを舞う。それだけでなく、見ている者を驚かすほどの早変わりを披露してくれる。そして、最後には金のなかから大津絵の鬼が現れ、駆けつけた武士に祈り伏せられる。これらの役を片岡愛之助が演じている。踊りはそれほど素晴らしいとは思えなかったが、早変わり囃子方の座る台の中から突然現れたり、格子窓が上に開いてそこへ飛び込んで消えたりと驚きの連続であった。
 
 「沼津」は中村吉右衛門演じる呉服屋の十兵衛が沼津のはずれで出会った平作に頼まれ、荷物担ぎに雇うが、大した仕事もしないで怪我をしてしまい、持っていた印籠の妙薬で治してやる。そこへ現れた平作の娘のお米に一目惚れし、平作の家に行き、泊まることにする。そこでお米を嫁にしたい、と申し出るが、夫がいる、と断られる。その晩、お米は十兵衛の印籠を盗もうとし、十兵衛に捉えられる。事情を聴いた十兵衛はお米が吉原の元女郎であることを見破り、平作の家族状況を聞いていくうちに実は自身が平作の実の息子であることを悟り、亡くなった母親の供養にと30両と母親から預かっていた書き付けを置いて、早々に立ち去る。ところが、十兵衛を追いかけてきた平作は事実を打ち明けてくれることを迫る。で、十兵衛は平作に死期の迫っていることを知り、最後には事実を打ち明ける。ただ、話の割りには上演に2時間近くかかり、見ていてうんざりするような感もなきにしもあらずであった。

 これまでの歌舞伎観賞ほとんど1Fの1等席で観賞していたのを、今回から料金6000円の3階A席にしたが、思ったより舞台に遠いとの感じはなかった。役者の表情が見えないだろうと小型の双眼鏡を持参したのと、席が立体的になっていて、舞台全体が見渡せたことも与かっていた。今後とも3階席で観賞することにしたい、と思った。あと、今回大活躍した片岡愛之助の奥方である藤原紀香が終演後の出口でオレンジ色の着物姿で観客を見送っていたことを目撃した。梨園の奥方の務めと聞いてはいたが、本当にお見送りをしていた。プログラムを見ると、片岡愛之助は夜の部でも2つの演目に主役に近い役を務めており、奥方はさらに裏方としてと止めなくてはならず、重ねて大変だなと思った。
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