鈍想愚感

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国家の罪悪をもっとはっきりと主張したらいいのにとの感想を持った映画「スノーデン」

2017-01-28 | Weblog
 27日は東京・新宿のTOHOシネマズ新宿で同日から公開されたオリバー・ストーン監督の映画「スノーデン」を観賞した。米国の国家安全保障局(NSA)、およびCIA(中央情報局)で情報収集活動に携わっていた職員であったエドワード・スノーデン氏がなぜ辞職してまで自ら関わっていた米国の国家機密を告発するに至ったかを回想風に追ったドキュメントで、NSAに勤務中に日本にも3年間いたことがあるとされていたので、日本を舞台にどのように描かれているか興味があった。スノーデン氏が自らの業務に疑問を持つに至った過程がそれほど克明に描かれていないの不満が残った。

 「スノーデン」は2013年6月3日、密かに香港にあるホテルをスノーデンが訪れ、英ガーディアン誌の記者らと会い、米国のNSAによる極秘の通信監視プログラム、PRISMの存在を打ち明ける場面から始まる。映画はPRISMを開発するに至るまでの経緯を語る形で、スノーデン自身の成り立ちを回想していく。スノーデンは最初は米国軍に志願し、訓練を受けるが体力的についていけず脱落し、情報収集員としてNSAに雇われることになる。最初に通常なら5時間かかるプログラム作成の課題をわずか37分で片づけてしまい、教官を驚かす。スノーデンがなぜそうした能力を持ち合わせていたかは触れておらず天分としかいいようがないのは不満の残るところではある。

 その後スノーデンには次から次へと重要な課題が課せられ、次第に米軍の枢要な攻撃プログラムの開発を任せせられるようになる。ある日、イラク戦争の際にはイラク市内を走るトラックの上に上空から落とした爆弾が命中するようなソフトウエアの開発にも手を貸していたことを知り、愕然とする。そしてセキュリティの確保をねらいとして敵対国だけでなく、同盟国や米国内にまでのあらゆる個人から企業に対する情報を入手していく。また、テロ防止をねらい、世界中の携帯電話の通話内容を追いかけるようなプログラムの開発までする。

 2009年から3年間、日本の横田基地に務め、情報収集活動に専念する場面もあったが、わずかにドローンで上空から撮影するシーンが描かれただけで、とりわけ日本での活動の詳細が紹介されたわけではなく、がっかりさせられた。恋人のリンゼイと「富士山に登ろう」という言葉をやりとりしているシーンがあっただけで、本当に日本でロケしているかはわからなかった。

 ともあれ、違法な情報収集活動に嫌気がさしたスノーデンがプログラムソフトを持ち出し、世界のマスコミに向けて告発するに至るが、そのあたりの心理描写は特に優れているわけだなく、ありきたりの正義感でしかないのも不満の残るところだった。また、スノーデンが告発したとされている日本、ブラジル、フランス、ドイツの政治家35人の電話盗聴なるものがいかなるののであったか、もそれほど克明に描かれていない。

 オリバー・ストーン監督はこれまで「プラトーン」や「7月4日に生まれて」など数々の不戦を訴える映画を作成してきており、今回は制作にあたってスノーデンに9回もインタビューを重ねたとしていた。しかもこ映画の公開にあたって日本のテレビのインタビューで「日本には主権がない」と厳しく言明していたので、この映画でもはっきりと国家の罪悪を主張するようなシーンがあるかと期待したのにという感想である。話題の映画のはずなのに公開しる映画館が少なかった理由がここにありそうだ。
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