鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

北朝鮮の拉致問題を解決するにも日中、日韓関係がうまくいっていないとダメ

2014-02-02 | Weblog
 2日のTBSの「時事放談」にパネリストとして登場した田中均・日本総研理事長(元外務省審議官)は得意の北朝鮮・拉致問題について「日本政府ももっと大きな構図を描いて北朝鮮との交渉にあたらなければ、解決しない」といまの安倍政権の外交姿勢についてバッサリと切り捨てた。北朝鮮の拉致問題を解決するには「日中、日韓とも仲良くして、そのうえで北朝鮮と交渉し、単に拉致問題だけを切り込むのではなく、核の問題から経済問題まで幅広く議論していかないと拉致家族を返すようなことにまでつながらない」とも語った。安倍首相は北朝鮮の拉致家族を日本に帰還させた際の官房副長官として名をあげた人で、その割りには事の本質を全く理解していない、と言いたげだった。
 田中氏は「先月下旬のオバマ米大統領の一般教書のなかで、中国に触れた部分は1カ所しかなく、それも米国の問題に関連して付随的に言及されたに過ぎず、米国はいまは国内の問題解決にしゃかりきとなっている」と指摘し、米国から見れば、日本はさらにその先にあるとしたうえで、そのなかで日米問題をとらえれば、せめて日中関係は波風立てないで穏便に進んでほしい、というのが米国のスタンスだ、と語った。だから、安倍首相の靖国神社参拝で日中間の外交関係がぎくしゃくするなんてことは「失望」以外の何ものでもない、というわけだ。
 もともと、米国から見た日本は友好国ではあるが、それほど重きを置いてものではない。いまや米国にとって最大の影響を及ぼすのは中国であり、欧米諸国からその中国といまや戦争を仕掛けているのではないか、と見られているのが日本である。さきのダボス会議で講演した安倍首相が日中関係を問われて、「100年前の第1次世界大戦前の英独の関係に似ている」と語ったことから、安倍首相が中国に対して戦争を仕掛けている、と思われているのである。
 安倍首相としては日本を強くするために隣国の中国、韓国に弱みを見せてはならない、と突っ張っているのだろうが、本人の思惑は国内の戦争を知らない若者には受けていて、安倍首相はそれをよしとするようなところが見られるが、とんでもない思い違いである。田中氏の言うように対北朝鮮との交渉に於いても日中、日韓関係がうまくいっていないことには説得力がないし、肝心の交渉がうまくいかないことは目に見えている。言われてみればその通りなのだが、安倍首相にはそのあたりは全く見えていない。側近にイエスマンばかりを配しているので、バランスのとれた意見を言ってくれる人は全くいないということなのだろう。
 田中氏は2002年9月の小泉・金正日の首脳会談で、北朝鮮に拉致問題を認めさせ、拉致家族を帰還させた立て役者で、この会談を成功させるために北朝鮮に対してメリットのあるような会談に持っていくためにあらゆる努力をしたことを振り返り、それに比べればいまは単に拉致問題の解決を要求するだけで、これでは効果がない、とも語った。先のチョン・ソン・タク(張成沢)氏粛清の背後にあるのも党と軍との派遣争いで、金正恩党第一書記は冷酷だ、とも語り、いまだに北朝鮮についての第一級の専門家であることもうかがわせた。かつての同志でもある田中氏の意見を聞こうともしない安倍首相の外交は極めて危ういものであることをいまさらながら感じさせてくれた。
 
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