鈍想愚感

何にでも興味を持つ一介の市井人。40年間をサラリーマンとして過ごしてきた経験を元に身の回りの出来事を勝手気ままに切る

NHKの朝ドラ「ゲゲゲの女房」を安心して見ていられる理由

2010-05-09 | Weblog
 3月から始まったNHKの朝の連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」が面白い。現存の妖怪漫画作家の水木しげるの奥さん、布枝さんが書いた自伝をもとに制作されたせいか、親近感があって思わず引き込まれてしまう。NHKの朝の連続テレビ小説としては82回目になるが、最近はかつての「おしん」のような爆発的な人気を呼ぶものはなく、このところずっと視聴率は低迷している。それだけに放送時間を15分繰り上げてPRに務めたこともあってやや視聴率は上向いているようだ。
 「ゲゲゲの女房」は島根県境港市で戦中を生き抜いた主人公、布美枝が実家の酒屋を手伝っているうちに婚期を逃しかけるが、叔父の紹介で水木しげるとの見合いを持ちかけられ、わずか5日後に結婚することになる。一方の水木しげるは戦争でマラリアに罹り、敵機の襲撃で左腕に重傷を負い、左腕を切除することになるが、戦中の体験をもとに戦記、妖怪漫画を書くことで生計を立てている。主人公は詳しい事情も知らず、東京・調布で新婚生活に入るが、思いのほかの困窮ぶりに戸惑うものの、持ち前の明るさで乗り切っていく。
 主人公を演じる音楽家でもある女優の松下奈緒は174センチの長身で、のんびりした主人公をうまく演じていて、安心して見ていられる。実際の年齢は25歳だそうだが、ドラマのなかの年齢は29歳とやや上に設定してあり、何事にも動じない落ち着いた雰囲気を出しているのがいい。最近の朝ドラの主人公を演じるのはいずれも若い女優で、元気溌剌でピチピチしているのはいいのだが、一方では何をしでかすのかわからない面もあって見ている者を不安な気持ちにさせるところがある。
 それと戦後まもなくの生活は家の中や、街の風景に同じ頃を体験した者にとって何やらノスタルジーを感じるような親しみのようなものがあり、思わず画面に惹きつけられるようなものがある。街の通りの八百屋の店先に並べられた野菜や果物、貸し本屋の棚、家の中の居間の真ん中に置かれた卓袱台など何気ない通りの風景や小道具が、昔を思い出させ、懐かしい気持ちにさせてくれる。昭和の戦後間もなくの貧しい時代に幼少の時代を過ごした団塊の世代にとって、テレビ画面を通して見るすべてのものがノスタルジックな思いを募らせてくれる。
 そんな場面設定のなかで、落ち着いた演技を見せられれば、思わず惹きつけられてしまうのも無理はないことだろう。それに先には漫画家として一世を風靡し、大成する水木しげるが登場するのはわかっているのだから、安心して見ていられるのだろう。NHKの大河ドラマもそうだが、あらかじめ結末はわかっているのだから、安心して見ていられるのだ。
 それにしても昭和の戦後間もなくの風物にノスタルジックなものを感じるのはそれだけ年とったというもとなのだろう。常に前へ、前へと思って歩んできた積もりだが、心のどこかに昔を懐かしむような思いがあるのだろう。
 
コメント (2)
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