prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ラストナイト⋅イン⋅ソーホー」

2021年12月16日 | 映画
ロンドンが舞台というのが効いていて、スマホを使っていたり電子タバコがセリフのなかに出てきたりはしていても、街も建物の中も70年代からあまり変わっていないので、現代と過去が行き来すると自然とつながってしまう悪夢感覚に寄与している。

全編にわたる悪夢表現が見もので、主役の二人の女優、トーマシン・マッケンジーと アニヤ・テイラー=ジョイが鏡を挟んでいるところは、ありがちなデジタル合成も使うがアナログで処理しているところもかなりあるのではないか。
つまりマルクス兄弟の「我輩はカモである」の兄弟が鏡が割れているのに気づかないでお互いを鏡に写った自分と思うシーンみたいに。ドリフの「全員集合」で志村けんと加藤茶が真似していた方が馴染みがあるか。
ダンスしている間に二人が入れ替わるシーンは、こういう具合にえらいアナログなやり方で撮っていた。

鏡だけでなく、あらゆる技巧をこらして二人が並立し対立し入れ替わる様子を縦横無尽に交錯させる演出は見もの。

基本には地方から大都会に出てきて享楽的な環境で性的刺激に晒された女の子が興味と恐怖を共に味わい不安定になっている精神状態の映像化といった性格が強い。
ちょっとポランスキーの「反撥」みたいだなと思ったら、果たせるかなラスト近くにそっくりの場面が出てきた。

最初のシーンでヒロインの部屋に「ティファニーで朝食を」のポスターが貼ってあるのには字幕が出るが、「スイート⋅チャリティー」には出ない。何故。


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