prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「初秋」

2011年10月09日 | 映画
来年公開の映画「わが母の記」の連動企画で、主演・役所広司、監督脚本 原田眞人、原作・井上靖は同じ。

原田監督のブログ(と言っているが、実際は日記ソフトなので更新が追跡しずらい)によると、助監督、編集、録音、音楽、衣装まで同じ。

娘を嫁に出した男が、高校の同級生の男の娘(つまり娘と同年輩の)と結ばれる話。
原作(井上靖)のタイトルは「凍れる樹」なのを「初秋」と「晩春」(作中引用される)と対応するように改題し、同級生三人男が酒呑んでだべる場面もありと、はっきり小津安二郎を意識し、その先の世界を描こうとしている。

娘(ベーコ)役の中越典子は二の腕にタトゥーを入れているのが現代風のようで、幻想シーンで原節子そっくりのスーツ姿になる。

能(これも「晩春」にある)に合わせて、松原(役所広司)と十年前につきあっていた彼女とが同じ能楽堂の客席にいる幻想シーンになり、さらに「晩春」の一場面の再現になる。ただし「晩春」と違って、父娘が距離をとりながら同じ早さで歩くのではなく、松原がベーコを足早に追っかける。父娘ではないのだし、どう見ても全然枯れてなどいないのだから、不思議はない。
このあたりは、以前聴講した監督の早稲田大学での公開講座とつながる。

十年前の彼女と最後に見た映画が「オール・アバウト・マイ・マザー」というのは「わが母の記」の方にひっかかってくるのだろうか。
「ヒズ・ガール・フライデー」とちらっとだけ聞こえるのは、ハワード・ホークスをアイドル(偶像)とする原田監督のサイン。

現実に年の差カップルは珍しくないし、まして役所広司なら違和感はない。
余談だけれど、昔のハリウッド映画のカップルは、父娘ほど年が違うのがむしろあたりまえだった。経済力のある男が女を庇護する、というモラルで作られていたから自然にそうなったので、今のとは形は似ていても中身は全然違う。

松原がやたらと手近な紙を折りたたんでしまう、という癖があって、その折りたたんだ紙が、京都の建築の木の年輪や、木の葉の影などといったマチエールと響きあっているみたい。

CBC(名古屋)の製作だが、全編京都の風物の魅力がぎっしり。
ちょっとだけ出る藤村志保の声の柔らかい響きに感心する。

TBS系 10月8日 15:00~16:54

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