出所を待ち続ける囚人だから「ゴドーを待ちながら」の「待つ」という行為に親近感を持つかもしれない、という理屈はわかるのだけれど、基本的にボランティアで芝居を教える側の売れない役者エチエンヌの視点にほぼ固定されているので、囚人たちの刑務所で待ち続ける心情、ひいてはそれぞれの犯罪の背景や家族などとのつながりといったものの描写は手薄になっている。
一方で早く出たいという気持ちの方もあるはずで、あんなに警備の薄い状態で巡業して大丈夫かなと思う。
だからラストもやや唐突の感がある。
刑務所長、判事、法務大臣といった要職が全部女性というのはどの程度リアルなのか知らないが、もちろん不自然ではない。
勝手に裏方の囚人がゴドーになってふらふらと舞台に出ていくのは笑った。本当にゴドーが出てきて芝居が壊れた状態というのを取り込む手もあったかもしれない。