実際にあった事件をなんと実際に事件があった場所でロケして撮ったというリチャード・フライシャーとしては「絞殺魔」と「見えない恐怖」の間に位置する日本劇場未公開作。
TSUTAYAの復刻ライブラリーの一本として出たのを見たわけだけれど、後味の悪さは「絞殺魔」に通じるものがある。
リチャード・アッテンボローの変質者演技が凄くてチビデブハゲを全部備えているので疑われそうなのを話術が巧みでいつのまにか騙されてしまう感じを見事に出していた。
冤罪を着せられる被害者の夫役のジョン・ハートがまた小心のくせにというかだからというか大口を叩きたがり、自分を信じられず墓穴を掘る役を演じてまた上手い。すごく若いのだけれど、若くても変に精気がないパーソナリティーは変わらず。
フライシャーの演出は技巧を目立たせないで見せることに徹し、リアリズムかと思っていると法廷で真犯人のアッテンボローがなぜか突然泣き出したりするといった奇矯な飛躍が入ってくる。
見れば興味深いけれど売りにくいので未公開になったというのもわからないではない。