prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「君も出世ができる」

2019年08月26日 | 映画
1964年製作の日本製ミュージカル。
監督の須川栄三はのちにATGで井上ひさし原作ミュージカル「日本人のへそ」を製作しているくらいだからミュージカルに対するこだわりはあるのだろうが、これは製作スケールの大きさからすると比較にならない大作で、というより日本映画史上最大級ではないかと思わせる。

1961年に「ウエストサイド物語」が大ヒットし、この前後、1965年の「サウンド・オブ・ミュージック」までミュージカル大作が続けざまに製作された影響はあるだろう。

正直、「本場」のミュージカルにどこまで本気で挑戦したのかわからないが、結果としてドメスティックな、あまりに日本的な妙な味の方が面白い。
ダンスシーンなどよく言えば粗削り、悪く言えば雑だが、エネルギーはある。

東宝の「社長」シリーズといったサラリーマン映画の系譜(製作・藤本真澄)にも位置するのだろうけれど、しかしこの当時、1959年に12億弱だった映画人口は5年後のこの年には3分の1の4億人にまで落ち込んでいる。もろに高度成長期真っ只中で多忙を極めていたであろう実際のサラリーマンたちが見に来たのだろうかと思ってしまう。

「アメリカでは」を連呼する内容(アメリカの合理主義と日本のムダだらけのビジネス慣行の比較)など、今だったら出羽守と揶揄されるだろうけれど未だに生きているところ多々あり。

作詞が谷川俊太郎というのはともかく、作曲が黛敏郎というのは後年のド右翼のイメージがあるだけに意外だったが、この当時、オリンピックの開会式前の音楽やアメリカ映画「天地創造」の音楽を作曲していた、国際的あるいはバタ臭い作曲家というイメージだったのだろう。