prisoner's BLOG

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「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」

2016年11月13日 | 映画
優秀な編集者と作家の関係というのは、キャッチャーとピッチャーや、プロデューサーと監督というのと似て、単純にスポットライトを浴びるのと裏方という以上に、二人のどちらとも違うひとつの人格の違う面というところまで至る、一種のベターハーフ関係に近くなるのかもしれない。

そういう意味でニコール・キッドマン扮するトマス・ウルフ夫人が相当に二人の関係にカリカリしているのは夫が仕事と結婚しているようなものとか、ホモソーシャリティから女を締め出しているという以上に自分以外にベターハーフを作っている嫉妬とも思える。
夫人自身が衣装デザイナーという表現者であり、おそらく売れない時期の夫を支えたのに排除された鬱積もあるのだろう。

編集者には作家に転身する人も多いのだが、ここでのパーキンスはあくまでキャッチャー役に徹していて、コリン・ファースがずうっと帽子をかぶっていてある決定的な瞬間まで脱がないのだが、ウルフの才能には内心脱帽していてもまず第一の読み手として相対する矜持を持ち続けているメタファーだろう。

それにしてもウルフの書きっぷりの量産ぶり(「天才は量産する」という言葉を思い出した)はすさまじく、削りに削る作業が主になるのが、映画でプロデューサーが尺を詰めるよう要求するのを思わせる。

ウルフに先立って名声を得ていたヘミングウェイやフィッツジェラルドといった人たちも、才能と引き換えに自殺や早死にとあまり幸せな生き方はできなかったのを見守る役割でもある。ここも半分夫婦のよう。
(☆☆☆★★★)

ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ 公式ホームページ

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11月12日(土)のつぶやき その1

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