prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「クラウド アトラス」

2013年03月25日 | Weblog
六つの時代も場所も違う世界を同時並行させながら描いてまったく混乱しないのはそれぞれのモチーフが単純なものでそんなに混乱しないのと、世界同士が干渉しあったりしないからで、考えてみればテレビで六つのケーブルテレビのチャンネルをザッピングしながら見ているのに近い。
ザッピングしながら見てもそれぞれの番組が混ざったり内容が追えなくなったりすることはまずないが、これもそういう感じ。どこにチャンネルまわしても似たような顔が出てくるのも近いか。
ある意味おいしいところ、いいところをピックアップしながら繋げていくようなものだから退屈はまったくしない。

トム・ハンクスはさすがに全部わかったけれど、後はこの役をこの人がやっていたのと思わせる。ただ特殊メイクで誰だかわからなくするのは、一時のエディ・マーフィの七変化(実際は七人どころではなく、ひとつ所に住む家族全員を一人でやるという妙な力の入れ方をした芸、というより芸当)を見てもわかるように、見ていて楽しむという性格のものではない。内輪受けかビデオユーザー向けで、一見の客にはありがたくない。
それに、正直一流俳優ならあれくらいの演じわけできて当然で、びっくりすることではないと思う。

ウォシャウスキー兄弟(姉弟か、ややこしいなあ)の他、「ラン・ローラ・ラン」のトム・ティクヴァも監督していて、エンドタイトルで見ると完全に撮影班は二つ別々にあったみたい。どういう分担なのかわからないが、それで混乱しないのはいわゆる作家性を放棄しているからか。

一人の男が時間も空間も越えてあちこちに出没する「スローターハウス5」(所五号)みたいな飛躍感と、にもかかわらずドレスデン爆撃という戦争体験の核の重力とが拮抗する緊張感はない。
自由と解放といったモチーフに対して作り手の側にそれほど切迫感がないせいだろうか。

老音楽家と採譜者として雇われる若い音楽家のエピソードはケン・ラッセルの「夏の歌」、未来世界のエピソードは「ソイレント・グリーン」といった具合にあからさまにそっくりなのだが、原作はどうなっているのだろう。
(☆☆☆★)

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クラウド アトラス@Movie Walker

クラウド アトラス@ぴあ映画生活

3月24日(日)のつぶやき

2013年03月25日 | Weblog

podcast「ヴォイニッチの科学書」で、腸内で善玉菌が死滅してしまった状態の治療で、他人の善玉菌が混ざった腸内の中身(つまりウンコの素)を注入するというのが出てきたと聞いてびっくり。


「エクソシスト」「尼僧ヨアンナ」 #もし映画館のオーナーになったら上映したい2本立て 違うようで似ている、似ているようで違う二本。


「汚れなき祈り」「マグダレンの祈り」 #もし映画館のオーナーになったら上映したい2本立て キリスト教が嫌いになること請け合い。

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きのうスマホで聞きかけて途中で一時停止しておいたポッドキャストを再生しようとしたら消えてなくなっていた。どうなってるの。


「博士の愛した数式」「プルーフ・オブ・マイ・ライフ」 #もし映画館のオーナーになったら上映したい2本立て 後者の原題はただのProof。一義的には数学での「証明」という意味。数学を扱ってちゃんとドラマに仕立てた二本。


【本棚登録】『誰も「戦後」を覚えていない 昭和30年代篇 (文春新書)』鴨下 信一 booklog.jp/item/1/4166606…