prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「クライング・フィスト」

2006年04月27日 | 映画
若いのと中年のと二人の男をずうっと等分に平行して追っていき、それぞれが背負っている人生の重みや家族の絆をよく知った上で、ラストのボクシング新人戦へと雪崩れ込む。
普通のボクシング・ドラマだったら試合の結果がつまりドラマの結論になるわけだが、両方合わせたらどっちかが勝てばどっちかが負けるのには変わりなく、つまりは人生という“闘い”だけが残るかのよう。

チェ・ミンシクが日本の歌舞伎町に出没していた「殴られ屋」晴留屋明がモデルの役をやると聞いて以来、最も見たい映画だったが、期待にたがわぬ出来。若手のリュ・スンボムがこれまた勝るとも劣らぬ魂のこもった演技。
実際の殴られ屋は本当に殴られていたわけではなく、打ち返しはしないがボクシングのテクニックでかわして客が殴ることができたら殴れるというものだった。そうでなかったら身がもたない、というか、そうしていても身がもたなかったが。

二つの人生を追うのに、カメラワークや色彩の使い方など相当にスタイリッシュに凝ってシーンごとのタッチを変えている。
ラストの試合など、第一ラウンドはカメラをリングの外にずっと置き、第二ラウンドは手持ちカメラがリングに入って二人と一諸に踊るようにえんえんと切れ目なく追っていく、という調子。
それにしても、ほとんど一ラウンドずうっと切れ目なしに戦い続けたのではないかと思うほど二人の役者がカットを割らずえんえんと打ち合い続けるのは、驚異。
(☆☆☆★★★)



クライング・フィスト - goo 映画

クライング・フィスト 泣拳 - Amazon