万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮の核放棄には強制力が必要ークラッパー米国家情報長官発言

2016年10月26日 14時49分31秒 | 国際政治
北朝鮮の核放棄は成功の見込みない、核能力抑制が関の山=米高官
 二度に亘って立て続けにミサイル実験には失敗したものの、北朝鮮の脅威が消え去ったわけではありません。脅威の高まりを裏付けるかのように、米国家情報長官であるジェームズ・クラッパー氏は”北朝鮮の核放棄は見込みが薄い”と発言しております。

 氏の分析は、核兵器の保有こそが北朝鮮の”命綱”である以上、如何なる条件下であれ、それを自ら手放すことはない、というものです。氏が、機密情報に触れる機会も多く、また、膨大な情報を入手できる国家情報長官の立場あることから、この見解が、全くの見当はずれとも思えません。一方、北朝鮮に対しても、イラン型の解決を実現したい国務省は、氏の発言の火消しに躍起になっております。カービー報道官は、従来の政策方針からの変更はないと説明していますが、1994年の核合意せよ、六か国協議にせよ、過去の北朝鮮との交渉が、悉く失敗に終わっている現状を考慮しますと、北朝鮮相手では、話し合い路線の限界は誰の目にも明らかです。

 石油産出国であるイランは、制裁解除によって莫大な石油収入を得ることができ、自力で経済の立て直しに取り組むことができます。また、イスラム革命を経た宗教的原理主義の国とはいえ、一先ずは、民主的な選挙も実施されています。一方、北朝鮮は、経済制裁が解除されたところで、最貧国からの脱出は困難です。可能性があるとすれば、韓国に合併されるか、あるいは、国際的な経済支援を受けることですが、前者では、金王朝体制は消滅しますし、後者では、NPTに違反する核開発に、”むち”ではなく”あめ”を与えることを意味し、倫理上の問題が生じます。つまり、前者のシナリオでは北朝鮮が反対し、後者のシナリオは、国際社会が許さないのです。また、北朝鮮は、民主主義の観点からしても、イランより遥かにカルト的な独裁体制を敷く非民主的国家です。

 一般の社会にあっても、全ての人に対して同じ手法のアプローチは使えないものです。国際社会も同様であり、イランと北朝鮮を同列に扱うことはできないのではないでしょうか。クラッパー米国家情報長官の発言は、北朝鮮の核放棄には、それが如何なる手段であれ、強制力を働かせざるを得ない現実を示していると思うのです。

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