万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日韓通貨スワップ協定は不要では?-旺盛な韓国資本の投資

2016年10月08日 14時19分46秒 | 国際経済
 先日、回転ずしの大手であるあきんどスシローが、韓国投資ファンドのMBKパートナーズによって、15億ドルで買収されるとする噂が飛び交いました。この噂、後日、スシロー自身によって否定されたのですが、この一件から垣間見えるのは、韓国資本の旺盛な対外投資です。

 韓国資本の投資先は、東南アジア諸国などにも向けられており、ベトナムなどでは一定の存在感を示しているそうですが、こうした状況を考慮しますと、日韓通貨スワップ協定が必要なのかどうか、疑問が湧いてきます。検討中とされる日韓スワップ協定については、韓国側から5兆円規模の枠組みが打診されたとも報じられていますが、韓国が、急を要するほど外貨準備に不安が生じているとも思えないのです。

 THAADをめぐる中韓関係の冷却化は、韓国経済に打撃を与えるというよりも、韓国企業による中国から他国への投資先シフトを加速させているものと推測されます。ここにきて、韓国資本が対外投資に積極的であるのも、むしろ、中国の制裁圧力に対する回避行動なのかもしれません。また、アメリカのFRBの利上げ観測も遠のき、韓国からの資本逃避のリスクも低減していますし、イギリスのEU撤退によるマイナス影響も、今のところは未知数です。確かに、サムスン電子のスマホ爆発や海運大手韓進の破綻といったマイナス情報もあるものの、さし当たっては、通貨危機を起こすほどの危機的状況にはないのではないでしょうか。

 仮に、それでも、韓国側が、日韓スワップ協定の締結を求めているとしますと、それは、自国の対外投資の信用を支えるために、日本国の”裏付け”を必要としているのかもしれません。つまり、韓国系企業やファンドによる対外投資目的の海外からの借り入れをを背景に、韓国政府は、日本国に対して、”連帯保証人”となるよう求められているのかもしれないのです。しかしながら、防衛的、あるいは、救済的な目的の通貨スワップ協定ではなく、相手国の拡大志向に沿った通貨スワップ協定の締結には、ブーメラン的なリスクが伴います。韓国側の投資戦略が成功すれば、日本企業が韓国資本に押され、シェアを失ったり、韓国企業に買収される展開もないわけではありません(もっとも、あきんどスシローの81%の株式は、2012年にユニゾン・キャピタル・グループが、既に英投資ファンド系のコンシューマー・エクイティ・インベストメント・リミテッドに譲渡…)。また、逆に失敗すれば、”連帯保証人”の立場にある日本国側は、通貨スワップ発動により損失を被ることとなります。何れにしましても、日本国側のメリットは見当たらないのです。

 以上の予測は、表面的な現象からの憶測に過ぎませんが、日韓通貨スワップ協定については、韓国経済の的確な情報分析が必要であることは言うまでもありません。日本国政府は、スワップ協定の可否をめぐって適切な判断を下すためには、まずは、韓国政府に対し、韓国経済についての正確な情報やデータの提供を求めるべきと思うのです。

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