万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

米大統領選混乱回避の予防策ー投票・開票作業の不正チェックの徹底

2016年10月21日 10時59分06秒 | アメリカ
トランプ氏、大統領選「勝利」なら結果受け入れる
 投票日を前にした最後の直接対決となる第三回目のTV討論会では、共和党のトランプ氏が、大統領選挙における不正投票に言及し、疑義がある場合には結果を受け入れない意向を示唆したと報じられております。氏の態度については、民主党のみならず、共和党内からも批判の声が上がっていますが、この問題が拗れますと、長期にわたり米政治が混乱するとの懸念も寄せられています。

 民主主義国家にあっては、政権の正当性を支えるのは偏に国民多数からの支持であり、公平・公正なる選挙の実施こそ、民主主義の価値を実現する要となります。仮に、選挙において不正があった場合には、政権の正当性は完全に失われ、”権力の盗取”となりかねないからです。トランプ氏は、民主主義国家の仕組みからすれば当然の心配事を述べたに過ぎないのですが、”暴言王”で知られる氏の発言である故に、むしろ、不正選挙リスクの提起の方が”暴言”に聞こえてしまうところが痛いところです。

 トランプ氏の発言は不見識な”暴言”として片づけてしまうことは簡単ですが、この問題は、民主主義の根幹にかかわるだけに、軽視してはならないこともまた確かなことです。実際にトランプ氏が敗北し、選挙結果に疑義が唱えられた場合、票の再集計等の確認作業によって相当の時間が費やされ、アメリカ政治に重大な空白が生じかねないからです。また、逆に、トランプ氏が勝利した場合にも、大手メディアによるの世論調査では一貫してクリントン候補が優勢であったわけですから、今度は、民主党側から不正選挙の疑義が呈される可能性があります。何れのケースでも、アメリカの政治的混乱は避けられなくなるのです。

 こうした混乱を予防的に回避する策があるとすれば、それは、投票、並びに、開票作業において、不正行為のチェックを厳重にする他ありません。表向きには現行の選挙制度への信頼を口にしつつも、内心では、両陣営共に相手陣営による不正選挙を密かに警戒しているならば、なおさらのことです。開票所における監視カメラの設置に留まらず、両党同数、あるいは、政党の党員ではない中立的な市民によるチェック・チームの編成等、様々な方法があります。不正疑惑が生じる余地が一切ない選挙の制度的保障こそ、正当性に関する不要な混乱を回避し、民主主義を守る砦となるのではないかと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする