万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北方領土の”二重国籍化”は不可能では?

2016年10月17日 15時15分45秒 | 日本経済
ロシアとの北方領土の共同統治、全く考えていない=菅官房長官
 本日、日経新聞の一面に”北方領土に共同統治案”という、衝撃的な見出しが躍っていました。この共同統治案、菅官房長官が午前の会見で全面的に否定しましたが、北方領土の”二重国籍化”は、事実上、不可能ではないかと思うのです。

 記事を読む限りでは、共同統治案の内容とは、”人”を対象に日ロ双方が主権を及ぼすとする案のようです。つまり、双方の国民に居住・移動の自由を認めた上で、それぞれの国民に対して国籍国が、自国の国内法の下で行政権や司法権を及ぼすというものです。立法権についても、何れの形態であれ、共同立法の可能性も視野に入れているそうです。

 しかしながら、この案では、肝心の点が明確にされていません。それは、”領域”に対する主権の如何です。当記事によりますと、共同統治案は、日本国側が、従来からの主張であった北方四島に対する帰属の確認を求めないことをも意味すると解説されています。仮に、共同統治案の内容が、上述した”人”に対する統治権のみに限定されるならば、共同統治の対象となる北方領土は、事実上、ロシアの主権が及ぶ地域となります。また、仮に、”領域”に対する共同統治にも合意したとしますと、北方領土の防衛は、一体、どうなるのでしょうか。論理的には、日ロ共同防衛軍の設立と運営を帰結しますが、共同軍方式は、現実的にはリスクが高すぎます。

 現在、米ロ対立が完全に解消されたわけではなく、ロシアは、ウクライナ問題等をめぐり”西側諸国”と摩擦を起こし、法の支配をも蔑にしています。日米同盟をも考慮すれば、将来的に日ロが対立する場面もなしとは言えません。また、共同防衛軍方式を断念し、ロシアに北方領土の防衛を任せたとしても、万が一、対ロ有事が起きるようなことがあれば、北方領土の日本人住民の運命は、第二次世界大戦末期の状況の再来ともなりかねないのです。

 北方領土問題は、法と正義に照らせば、日本国に理がありますので、北方領土を”ソ連邦の戦利品”と見るプーチン大統領が政権のトップである間に解決を急ぐ必要はありません。北方領土の”二重国籍化”はリスクに満ちているのですから、国際司法制度の下で日本国の領有権確認の後にこそ返還プロセスに関する交渉を行うべきであり、今は、当問題を解決する時期ではないと思うのです。

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