万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本国は”植民地”となるのか?ー農業開放政策の行方

2016年10月02日 15時28分30秒 | 日本政治
 本日の日経新聞朝刊の一面に、農業分野における外国人労働者の受け入れに関する記事が掲載されておりました。この記事、日本農業の将来を考えますと、一面に掲載さるだけの理由があるように思えます。

 アメリカ大統領選を機に先行きが不透明化したものの、現在、TPP協定の発効を視野に、日本政府は、農業の国際競争力を高めるべく、様々な政策を実施しています。その一環として、農地の集約化といった農業の経営規模を拡大させる政策も追及され、農業改革は急務とされています。農業分野における外国人労働者の受け入れも、この文脈として理解され、海外から安い労働力を導入することで、農産物価格を下げようとしているものと推測されます。

 しかしながら、この政策、過去において、どこかで見たような気がします。安価な農業労働力を目的とした外国人労働者の導入こそ、実のところ、植民地政策の基本的モデルです。日本国民には殆ど知られていないことですが、現行の法令(「外国人就農に伴う農地の権利取得についての取扱い要領」)によれば、外国人であっても、一般であれ、特別であれ、永住権を有する人は、日本国の農地の使用収益権を取得することができます。今日、急激な勢いで中国国籍者を筆頭に永住権取得者が増加しておりますが、永住資格を得た外国人が、日本国の農地の使用収益権を買い集め、仮に、今般の農業分野での外国人受け入れ案が実現するとしますと、外国で労働者を募集して国内農園で就業させるかもしれません。近い将来、日本各地に、外国人による”プランテーション”が続々と誕生する事態も予測されるのです。まさしく、かつての植民地のように…。農業とは、一つの”農村共同体”を形成する傾向にありますので、”外国人村”と化すのも時間の問題となりましょう。

 日本国政府が描く将来の日本国の農業像とは、外国資本、あるいは、外国人労働力に依存するプランテーション経営なのでしょうか。もし、そうであるとするならば、たとえ、日本産の農産物が国際競争力を幾分得たとしても、地方が培ってきた経済、社会、歴史・文化…は、見る影もなく破壊されることでしょう。農業部門における開放政策が、実質的な”植民地化”を意味するならば、国民から大反対の声が上がるのではないでしょうか。

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コメント (1)
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