万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

新自由主義はジュラシック・エコノミーか?ー企業の巨大化現象

2016年10月06日 14時53分26秒 | 国際政治
富士通、レノボとパソコン事業統合へ ブランドや工場は存続
 本日、日本企業の富士通が、中国企業であるレノボとパソコン事業で統合を進めているとのニュースが報じられました。レノボと申しますと、2005年に米IBMのパソコン事業を買収し、2011年にはNECの同部門をも飲み込んでいます。

 レノボに限らず、最近、国境を越えた大型合併のニュースが散見され、先月の9月14日には、ドイツ医療・農薬大手のバイエルンによる米モンサントの買収が耳目を驚かせました。企業の巨大化現象の背景には、有望な投資先を探しあぐねている金融機関による買収資金融資戦略もありますが、企業の巨大化現象は、留まるところを知らないかのようです。この現象は、どこか、地球上に大型恐竜が出現した時代を思い起こさせます。大型恐竜が出現した背景には、恐竜には、巨大化を押さえる遺伝子が欠けていたとする説があり、それ故に、際限のない弱肉強食は、ティラノサウルスといった凶暴な巨大恐竜を生み出したのでしょう。しばしば経済は、多様性を以って生態系に準えられますが、あらゆる規制を嫌う新自由主義に基づく経済とは、巨大企業の出現を招き、一瞬の休息が死に直結するジュラシック・エコノミーなのかもしれません。しかも、新自由主義の規制嫌いは、中国系企業といった政治的目的を潜ませた企業による無防備な買収をも許し、より攻撃的、かつ、より巨大な企業を地球上に繁栄させているのです。

 大型恐竜の時代は、白亜紀の末期における環境の激変と地球への隕石衝突によって幕を閉じます。その末期にあっては、ティラノサウルスは共食いをしていたとする研究報告もあるそうです。恐竜滅亡後に至り、地球上の主役は大脳が飛躍的に発達した哺乳類に代わり、多種多様な生物が息づく豊かで美しい地球へと変化してゆきました。今日のジュラシック・エコノミーに対する抑止要因あるとすれば、それはルールにもとづいた公正なる競争政策なのでしょうが、企業巨大化の時代は、その巨大化故に変化やリスクへの対応力を弱め、やがて行き詰まりを迎えるようにも思えるのです。

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