宝塚歌劇宙組『PAGAD/Sky Fantasy!』大劇場公演初日と翌11時公演を観てきました。
キキさくお披露目です。まぁみりもまかまどもまかかのもプレお披露目も本公演お披露目も初日に行きましたし、『エクスカリバー』も初日を観ましたが、やはり本公演お披露目初日には格別のものがありますね…! 開演アナウンスの名乗りへの拍手はまあ通常かなと思いましたが(ショーも指揮者挨拶がないのに開演アナウンス終わりに謎の拍手が沸いていました…!)、冒頭セリ上がってきたキキちゃんが振り返って!顔が見えて!ライトが当たって!拍手!!のときの拍手の音量はハンパなかったですし、それがそのままずっと続いて、キキちゃんが下手に移動して銀橋に出て歌い出すまでたーっぷり続いたのでした。こんなの、私は初めてだったなあ(2日目もやったのはどうかと思いますが、まあ週末でそこが初日というファンも多かったろうからなあ…でも逆に変な習慣になってしまわないことを老婆心ながら祈ります)。ショー中詰めの客席降りでのキキちゃんのはしゃぎっぷりや大サービスっぷり、客席の大喜びっぷり、そしてカテコのご挨拶と客席からのすすり泣きも、感慨深いものがありました。
まずはめでたい。長く待たされてしまった形になりますが、良作に恵まれ、充実したトップ期となりますよう、心よりお祈りしています。
さて、いわゆるカリオストロ伯爵が主人公のミュージカル・ノワールは、デュマ・ペールの小説を原作とした『BLACK MAGIC』なる映画が元、とのこと。パガド、とは奇術師、転じて詐欺師、山師、錬金術師…のことだそうな。トップになったのに黒い役、ピカレスク・ロマンでお披露目、とはいかにもキキちゃんですね。まあでも私はこの人はフツーに白い真ん中役が十分保つし逆にその方が魅力的なのでは、と思っていますけどね…二番手時代にさんざんやったような役回りをせっかくトップになったのにまたやらされるのはどうやねん、ってのと、どうしてもいろいろ既視感があったので、そこは残念だったかな。
でも、田渕先生の作劇は非情に手堅くオーソドックスかつスマートで、ストレスがありませんでした。アンサンブルの扱いなども上手いと思います。予算の関係かセット(装置/川崎真奈)はややショボく見えたかな…またお衣装(衣装/澤井香菜)にもやや見慣れたものが多かったのは残念でした。でも意味不明でつながらない会話とか日本語の誤用がなかった、それだけでもたいしたものです(皮肉です。こんな低いハードルで満足している場合ではない。劇団は脚本に少しも早く校閲かドラマトゥルクを導入してください)。
マリー・アントワネットの首飾り事件は池田理代子『ベルサイユのばら』なんかにも出てくる有名なものですが、どうつながるのかな、と興味深く観られましたし、ストーリーテリングとしても楽しかったです。
どこまでが原作小説、ないし映画準拠かわかりませんが…『ベルばら』にもオリバだっけ、アントワネットのそっくりさんが出てきましたし、このあたりは史実なのかな? さーちゃんはロレンツァとアントワネットの二役を務めて、立派なものでした。ゴージャスなドレスを着るとちょっと花組トップ娘役だったゆきちゃんを彷彿とさせますね…ダミーも上手く使えていたと思いました。
キラキラ担当のずんちゃんジルベールがまたちょっと既視感あるお役だったのが残念でしたが…でも、あいかわらず手堅く上手いです。トップコンビが結ばれるのでなければこのパターンがいいと思うので、私は楽しく観ました。
なので、おもしろかったんですけど…でもこのキキちゃん、というかジョゼフというお役って、カッコいい…ですか、ね…?(>_<)ちょっと…なんか…アレじゃないですか……?
ピカレスク・ロマンって、主人公がアウトローだろうが犯罪者だろうが悪漢だろうが、それは時の政府から見たら、とか当時の社会から見ると、というだけの話で、本人には彼なりの愛や正義や理想があって、それは一本筋が通っていて、観客なり読者なり視聴者なりもそれに共感できる…というのが基本だと思うのです。でも今回…苦しくないですか?
ロマだと差別され、母親を魔女だと決めつけられて一方的な裁判で絞首刑にされて(しかし薬草の知識などがあって子供の死期が診断できただけ…とかにした方が良くはないかな? 未来を読める、とかになるとオカルトだし、そら魔女やね、ってなっちゃうじゃん…)、不当だ、ひどい、復讐してやる…となるのは、わかります。でもまっぷーギターノはじめきよちゃんデラムやこってぃアントニオ、ブッキーのゾロイダと、家族同然の仲間がいるのに、ジョゼフはちょっとかたくなすぎだしこじらせすぎだよね…とは、ちょっと思っちゃうかな。同じように両親を亡くしているロレンツァが、すくすくまっとうに育っているだけにね…もちろん彼女の親は病死か事故死か、くわしくはわからないいけれどまあジョゼフの母親のケースとは全然違う、多少は納得しやすいものだったのでしょう。でもその後の彼女は、親戚の家にでも引き取られているのかもしれませんが、乳母ないし侍女のりずちゃんグレースがついているだけで、そこそこ肩身の狭い思いをしてきたのかもしれないわけじゃないですか。でもけなげに、というかいたって健康的に育って、恋にも素直に落ちていて(ここ、ちょっとイージーなんでなんかもっとエピソードがあってもいいのでは、とも思いましたが…まあ脇筋と言えば脇だからな)、過去にこだわることなく今を生き、より良い未来を夢見ているわけです。それがジョゼフにはまぶしかったのかもしれないけれど…というかそういう描写があれば彼がロレンツァを愛すようになるのもわかるし、過去や復讐の念に囚われている彼の情けなさのフォローにもなったかな…彼も復讐なんて虚しいかも、って気づいてはいるんだよ、でも切り替えられないんだよ、みたいな感じがもう少し出れば、もっと観客も同情しやすく、感情移入しやすいかと思うのです。
ひょんなことから母親の仇のもえこモンターニュ子爵と再会し、王太子妃アントワネットと瓜ふたつだとという娘ロレンツァと知り合って、これは使える、ととりあえず仲間になる…のはわかるんだけど、その後のジョゼフのプランが明かされないので、観客はちょっと共感の筋を見失うんですよね。単に隙見てグサッと刺し殺す、とかだけではつまらない、と考えているならそれはそれで、そう言ってくれないと。急に「復讐よりも野望が…」とか言い出されても、どんな?とハテナ?なんですよ。あとでじゅんこさんメスマーが、庶民を虫けら扱いしてしたい放題という権力そのものが憎いので、逆にその権力を得て世の中に腹いせしようとしたのだ…みたいなことを言うくだりがありますが、エッそうだったの?感がハンパなかったです。しかもモンターニュをハメたあとは、また目的は復讐、みたいに戻っちゃってるし…野望、どこ行った?
また、その復讐なり野望なりのためにロレンツァを利用しよう、というなら結婚する必要はないわけで、でも花嫁衣装なんか作らせちゃって(ゾロイダへの仕打ちはオレ様男とかS系男子とかっていうより、単に非道で胸糞悪いモラハラ男仕草じゃありませんでした…?)、つまりそんなにロレンツァのことが好きってこと? いつ? なんで? ロレンツァが「ジョゼフ、かわいそうに…」みたいなことを言ってくれたのって、催眠中じゃありませんでした? 彼女は正気のときには常にジルベールのことを想っているし、そうでないときにはアントワネットの替え玉として職務をまっとうしている(?)ので、ジョゼフのことなど好きでもなんでもないようなんですけれど…? 相思相愛の若い男女の間に一方的に割り込んでワガママ三昧って、なんてインセル仕草なの…?ってちょっと、かなり、ドン引きしません…?
ゾロイダがしていることは正しくて、単なるやっかみだけならロレンツァの命を助けたりもしないので、私は非情に好感が持てました。こういう女性が描けるんだから、もうちょっと考えようよ田渕先生…私はラストはあの天幕の奥で彼女が待っていてもいい、と思いましたよ? 彼女は今はセラフィーナと名乗り、カリオストロ伯爵夫人としてジョゼフとともに旅をしているのである…というのは、悪くないオチだと思うんだけどな。
明言されてはいないけれど、ジョゼフはロレンツァに母親の面影を見て恋した部分もあるようですが(それで一目惚れ、ということなのか? でも演出がヌルくてよくわかりませんよねえぇ?)、これは女性観客にはまったくウケないネタなので、むしろ完全に却下した方がいいです。たとえ自身が母親である女性でも物語は娘時分の視点で観るものだし、人は誰でも誰かに似ているという理由で愛されても嬉しくもなんともないに決まっています。自分が自分だから愛してもらいたいんですよ…なんで男性作家ってこのネタ描くのかなー、自分は自分だってだけでは愛される自信がないってのの裏返しなのかなー。ホントやめてほしいわー…
ギターノに諭されたあと逆ギレして銀橋で歌う歌も、せつなさマックスのハイライト!というよりは、ちょっとしょーもなく感じられるんですよね…でもここは「俺はもう後戻りできないんだ!」(みんな大好きヨン・ホゲ@『太王四神記』)じゃなきゃダメじゃん。ううーん、なんか惜しいんだよなー…
あとモンターニュの悪事が意外とショボいのも悲しい。まあジョゼフに比べたらしょせん彼は小悪党、ということにしたいのかもしれませんが…彼の懐刀っぽいナニーロのシャンボールはクール・ビューティーで素敵だったので、彼が主を脱獄させて手に手を取って逃げ落ちる薄い本を脳内で紡いでおきますね。
あとあと、じゅっちゃんのデュ・バリー夫人はすごーくよかったんだけれど、しかし彼女は国王の公式な愛妾として富も権力も何もかもを手にしていたので、結婚して王妃になりたいなんて考えていなかったんじゃないのかなー…最後にジルベールにいいこと言って去っていくのは、つまりは彼女が真に望んでいたのは国王との愛、みたいなことになるんだろうけど、そんな話だったか?という気もしましたし、ううぅーむ。あと、アントワネットとの宮廷の覇権争いに敗れて去っていく、という描き方は、実際に下級生にトップ娘役に就任されて組替えしていく中の人の立場をなぞりすぎているので、ファンは観ていてお尻がちょっとモゾモゾすると思います。近く組替え先での次期就任が発表されでもするのなら、見え方が違ってくるとは思いますが…というかこれまでもまあまあ手厚かったけれど今回はショー含めて完全な別格扱いで、組替えの餞別ってのもあるんだろうけど、文春案件の劇団からの謝罪ないしフォローが入ってるんですかね…?とかちょっと邪推したくなるレベルでしたよね。芝居ではさーちゃんも渡っていない銀橋を(ソロを長くして歌って渡らせろよ…)堂々歌って渡って去るのは、さすがに、どうも、なあ…古い話でアレですが、ミハルが就任したときのヨウコちゃんみたい…(>_<)
と、こうまでうだうだねちねち語りましたが、逆に言うとこのあたりがもうちょっと整うと、ものすごくおもしろい、せつない、しかし楽しい傑作になるのでは?というくらい、わりとちゃんとした作品だったと思うのですよね、私。『フリューゲル』とかにはそんなこと言えないもん…(おっと)
また王国作って王になるとか言い出しちゃったよ、とか建物の屋上でチャンバラ始めたら落ちるぞ落ちるぞ、ってなっちゃうのは、もう仕方ないですしね…(^^;)そうそう、ここの回想の親子は手前のセリの上げ下げで出した方が良くないかなあ、奥に出すと遠近感が狂うんですよ…
ああぁどうしよう、もっと褒めねば。
えーとえーと、サラちゃんクララ(この時代にあんな眼鏡が?とは思うが)となるくんヨハンがよかったなとか、ジルベールの部下のりせくんニコラもよかったなとか、宿屋の女将役の沙羅ちゃんがさすが芝居が上手いよなとか、ましろっちやるのくんがやっぱいい仕事するよなとか、なっつやまなちゃんの手堅さがホント貴重だなとか、嵐之くんが起用されて嬉しいなとか…でも新公ヒロインに抜擢するくらいなら夢風ちゃんがやったサクラの娘は花恋こまちにしてちゃんと客に認識させてくれよ、とは思いましたかね。あっ、またつっこんでしまった…
でもまあ、ファンは楽しく通うのでは?と思う出来かと…フォローになってなかったらすみません……
ショー・スピリットはなんと宙組本公演担当が15年ぶりというBショーで、もうもうまさに待ってました!という感じでした。
イヤまったくいつものBショーで、構成なんざそれこそ既視感ありまくりなのですが、宙組でやってくれるということが貴重なんです! これまで銀橋に出るスターの数の少なさに定評がありすぎた宙組で! あの子もあの子もあの子も、こんなにも出してもらえて歌まだ歌って…ともうそれだけで楽しかったです。減るもんじゃないしいいんだよ大盤振る舞いで!
プロローグの赤と金、なんか最近れいこちゃんとかで観なかった?とか思うのですが、いいんですいいんです。長いけど楽しく手拍子しましたよ!
個人的にはプロローグの次の、雨のタンゴの場面が好きです。モノクロ縛りのお衣装(これもよく観るヤツだけど)と、もえこの場面かと思いきやトップコンビが出てきちゃうところとか、意外と尺が長くていろんなバリエーションが展開されるところとかも好き。でもその次の、ずんちゃんブッキーなんだけどじゅっちゃんが虹のラスボス、みたいな場面もよかったです。
そこからは中詰めなんだけど、とっぱしが上手スッポンセリ上がり背中、振り向いたらナニーロ!で「キャーッ!」となりました私(笑)。いやぁいいよね若手あるあるで。まだまだ保っていなくてあわあわしていて、そしたら下手から女子四人が助っ人に現れましたが(笑)(みんな女子です)(翌日三人しかいなくて、終演後に確認したら有愛きいちゃんの休演が告知されていました…)。
さらには客席降りがあって、キキちゃんが先頭切って中通路まで爆走して、ハイタッチもありで…このご時勢に…ありがたいけどいいのよそこまでしなくても…まだまだ感染が怖いんだから…でも21列目だったので振り返って手を出しましたすみません、キキちゃんの手はひんやりしていました。
さらにさらに中詰めのシメがこってぃひろこセンターの若手場面でさあ、なんとひろこまで歌っててさあ、いやぁハラハラしたね!(爆)
からの、なんとまっぷーなっつが上下スッパンセリ上がりで宙組25周年を寿ぐ歌なんか歌っちゃって、胸アツでしたね…そこから白いお衣装にサークレットのよくある場面なんだけど、みんなが学年ごとかな?キキちゃんと絡んでいって、さらにはこれで退団のきよちゃん沙羅ちゃんシンメの爆踊りターンがあって、もううるうるしました。
ロケットもよかったなあ、歌手がいるのもよかったですね。
そしてまたまた別格じゅっちゃんのターンからフィナーレへ。でも次にさーちゃんセンターで娘役場面を作ってくれたのが嬉しかったです。てかBのフィナーレのちょっとバグってる大盤振る舞い、ありがたいですね。
黒燕尾、男役全員出てるんでしょ? 景気よくていいね! さらに歌い継ぎと、きよちゃん沙羅ちゃんの銀橋デュエットまで…ありがたや。娘役も花道まで使って全員ズラリと景気よく、そしてデュエダンは組カラーの紫。オーソドックスな振りでリフトもないけれど、お初だろうさーちゃんがそつなくこなしていて良きでした。カゲソロは葉咲うららちゃん、素敵でした。
エトワールはサラちゃん、これも良き。ずんちゃんも立派な二番手大羽根を背負って万雷の拍手、ショートの鬘のさーちゃんがザッツ・プリンセスで、お辞儀からのキキちゃんのスタンバイに若干間に合ってない感じも愛しかったです。ラインナップはナニーロは組長のまだ外で、そこは線を引くのね、と思いましたが…まあバウ主演も控えているし、これからかな! おかゆもスチール入りしたし、キョロちゃんが戻ってくればさらに手厚くなっていきますし、新生宙組、期待しかありません!
衝撃のニュースについては、今はまだなんとも、なので…
みんなが心身ともに元気で健康で、楽しくハッピーに公演し続けられますように……
いろいろ心配だし憤ることも多いけれど、私はファンをやめるとか観なくなるとかは考えていなくて、観て文句を言いたい派なので…イヤ別に文句を言うために観ているんじゃなくて、あくまで改善を求めて、良かれと思って、愛あればこそ言うのですけれど…
どうぞ、そんなファンの想いに応えていただきたく…でないと200年とか150年どころか、110周年だって完走できるか怪しいんだからね! 自覚せーよ劇団!!
キキさくお披露目です。まぁみりもまかまどもまかかのもプレお披露目も本公演お披露目も初日に行きましたし、『エクスカリバー』も初日を観ましたが、やはり本公演お披露目初日には格別のものがありますね…! 開演アナウンスの名乗りへの拍手はまあ通常かなと思いましたが(ショーも指揮者挨拶がないのに開演アナウンス終わりに謎の拍手が沸いていました…!)、冒頭セリ上がってきたキキちゃんが振り返って!顔が見えて!ライトが当たって!拍手!!のときの拍手の音量はハンパなかったですし、それがそのままずっと続いて、キキちゃんが下手に移動して銀橋に出て歌い出すまでたーっぷり続いたのでした。こんなの、私は初めてだったなあ(2日目もやったのはどうかと思いますが、まあ週末でそこが初日というファンも多かったろうからなあ…でも逆に変な習慣になってしまわないことを老婆心ながら祈ります)。ショー中詰めの客席降りでのキキちゃんのはしゃぎっぷりや大サービスっぷり、客席の大喜びっぷり、そしてカテコのご挨拶と客席からのすすり泣きも、感慨深いものがありました。
まずはめでたい。長く待たされてしまった形になりますが、良作に恵まれ、充実したトップ期となりますよう、心よりお祈りしています。
さて、いわゆるカリオストロ伯爵が主人公のミュージカル・ノワールは、デュマ・ペールの小説を原作とした『BLACK MAGIC』なる映画が元、とのこと。パガド、とは奇術師、転じて詐欺師、山師、錬金術師…のことだそうな。トップになったのに黒い役、ピカレスク・ロマンでお披露目、とはいかにもキキちゃんですね。まあでも私はこの人はフツーに白い真ん中役が十分保つし逆にその方が魅力的なのでは、と思っていますけどね…二番手時代にさんざんやったような役回りをせっかくトップになったのにまたやらされるのはどうやねん、ってのと、どうしてもいろいろ既視感があったので、そこは残念だったかな。
でも、田渕先生の作劇は非情に手堅くオーソドックスかつスマートで、ストレスがありませんでした。アンサンブルの扱いなども上手いと思います。予算の関係かセット(装置/川崎真奈)はややショボく見えたかな…またお衣装(衣装/澤井香菜)にもやや見慣れたものが多かったのは残念でした。でも意味不明でつながらない会話とか日本語の誤用がなかった、それだけでもたいしたものです(皮肉です。こんな低いハードルで満足している場合ではない。劇団は脚本に少しも早く校閲かドラマトゥルクを導入してください)。
マリー・アントワネットの首飾り事件は池田理代子『ベルサイユのばら』なんかにも出てくる有名なものですが、どうつながるのかな、と興味深く観られましたし、ストーリーテリングとしても楽しかったです。
どこまでが原作小説、ないし映画準拠かわかりませんが…『ベルばら』にもオリバだっけ、アントワネットのそっくりさんが出てきましたし、このあたりは史実なのかな? さーちゃんはロレンツァとアントワネットの二役を務めて、立派なものでした。ゴージャスなドレスを着るとちょっと花組トップ娘役だったゆきちゃんを彷彿とさせますね…ダミーも上手く使えていたと思いました。
キラキラ担当のずんちゃんジルベールがまたちょっと既視感あるお役だったのが残念でしたが…でも、あいかわらず手堅く上手いです。トップコンビが結ばれるのでなければこのパターンがいいと思うので、私は楽しく観ました。
なので、おもしろかったんですけど…でもこのキキちゃん、というかジョゼフというお役って、カッコいい…ですか、ね…?(>_<)ちょっと…なんか…アレじゃないですか……?
ピカレスク・ロマンって、主人公がアウトローだろうが犯罪者だろうが悪漢だろうが、それは時の政府から見たら、とか当時の社会から見ると、というだけの話で、本人には彼なりの愛や正義や理想があって、それは一本筋が通っていて、観客なり読者なり視聴者なりもそれに共感できる…というのが基本だと思うのです。でも今回…苦しくないですか?
ロマだと差別され、母親を魔女だと決めつけられて一方的な裁判で絞首刑にされて(しかし薬草の知識などがあって子供の死期が診断できただけ…とかにした方が良くはないかな? 未来を読める、とかになるとオカルトだし、そら魔女やね、ってなっちゃうじゃん…)、不当だ、ひどい、復讐してやる…となるのは、わかります。でもまっぷーギターノはじめきよちゃんデラムやこってぃアントニオ、ブッキーのゾロイダと、家族同然の仲間がいるのに、ジョゼフはちょっとかたくなすぎだしこじらせすぎだよね…とは、ちょっと思っちゃうかな。同じように両親を亡くしているロレンツァが、すくすくまっとうに育っているだけにね…もちろん彼女の親は病死か事故死か、くわしくはわからないいけれどまあジョゼフの母親のケースとは全然違う、多少は納得しやすいものだったのでしょう。でもその後の彼女は、親戚の家にでも引き取られているのかもしれませんが、乳母ないし侍女のりずちゃんグレースがついているだけで、そこそこ肩身の狭い思いをしてきたのかもしれないわけじゃないですか。でもけなげに、というかいたって健康的に育って、恋にも素直に落ちていて(ここ、ちょっとイージーなんでなんかもっとエピソードがあってもいいのでは、とも思いましたが…まあ脇筋と言えば脇だからな)、過去にこだわることなく今を生き、より良い未来を夢見ているわけです。それがジョゼフにはまぶしかったのかもしれないけれど…というかそういう描写があれば彼がロレンツァを愛すようになるのもわかるし、過去や復讐の念に囚われている彼の情けなさのフォローにもなったかな…彼も復讐なんて虚しいかも、って気づいてはいるんだよ、でも切り替えられないんだよ、みたいな感じがもう少し出れば、もっと観客も同情しやすく、感情移入しやすいかと思うのです。
ひょんなことから母親の仇のもえこモンターニュ子爵と再会し、王太子妃アントワネットと瓜ふたつだとという娘ロレンツァと知り合って、これは使える、ととりあえず仲間になる…のはわかるんだけど、その後のジョゼフのプランが明かされないので、観客はちょっと共感の筋を見失うんですよね。単に隙見てグサッと刺し殺す、とかだけではつまらない、と考えているならそれはそれで、そう言ってくれないと。急に「復讐よりも野望が…」とか言い出されても、どんな?とハテナ?なんですよ。あとでじゅんこさんメスマーが、庶民を虫けら扱いしてしたい放題という権力そのものが憎いので、逆にその権力を得て世の中に腹いせしようとしたのだ…みたいなことを言うくだりがありますが、エッそうだったの?感がハンパなかったです。しかもモンターニュをハメたあとは、また目的は復讐、みたいに戻っちゃってるし…野望、どこ行った?
また、その復讐なり野望なりのためにロレンツァを利用しよう、というなら結婚する必要はないわけで、でも花嫁衣装なんか作らせちゃって(ゾロイダへの仕打ちはオレ様男とかS系男子とかっていうより、単に非道で胸糞悪いモラハラ男仕草じゃありませんでした…?)、つまりそんなにロレンツァのことが好きってこと? いつ? なんで? ロレンツァが「ジョゼフ、かわいそうに…」みたいなことを言ってくれたのって、催眠中じゃありませんでした? 彼女は正気のときには常にジルベールのことを想っているし、そうでないときにはアントワネットの替え玉として職務をまっとうしている(?)ので、ジョゼフのことなど好きでもなんでもないようなんですけれど…? 相思相愛の若い男女の間に一方的に割り込んでワガママ三昧って、なんてインセル仕草なの…?ってちょっと、かなり、ドン引きしません…?
ゾロイダがしていることは正しくて、単なるやっかみだけならロレンツァの命を助けたりもしないので、私は非情に好感が持てました。こういう女性が描けるんだから、もうちょっと考えようよ田渕先生…私はラストはあの天幕の奥で彼女が待っていてもいい、と思いましたよ? 彼女は今はセラフィーナと名乗り、カリオストロ伯爵夫人としてジョゼフとともに旅をしているのである…というのは、悪くないオチだと思うんだけどな。
明言されてはいないけれど、ジョゼフはロレンツァに母親の面影を見て恋した部分もあるようですが(それで一目惚れ、ということなのか? でも演出がヌルくてよくわかりませんよねえぇ?)、これは女性観客にはまったくウケないネタなので、むしろ完全に却下した方がいいです。たとえ自身が母親である女性でも物語は娘時分の視点で観るものだし、人は誰でも誰かに似ているという理由で愛されても嬉しくもなんともないに決まっています。自分が自分だから愛してもらいたいんですよ…なんで男性作家ってこのネタ描くのかなー、自分は自分だってだけでは愛される自信がないってのの裏返しなのかなー。ホントやめてほしいわー…
ギターノに諭されたあと逆ギレして銀橋で歌う歌も、せつなさマックスのハイライト!というよりは、ちょっとしょーもなく感じられるんですよね…でもここは「俺はもう後戻りできないんだ!」(みんな大好きヨン・ホゲ@『太王四神記』)じゃなきゃダメじゃん。ううーん、なんか惜しいんだよなー…
あとモンターニュの悪事が意外とショボいのも悲しい。まあジョゼフに比べたらしょせん彼は小悪党、ということにしたいのかもしれませんが…彼の懐刀っぽいナニーロのシャンボールはクール・ビューティーで素敵だったので、彼が主を脱獄させて手に手を取って逃げ落ちる薄い本を脳内で紡いでおきますね。
あとあと、じゅっちゃんのデュ・バリー夫人はすごーくよかったんだけれど、しかし彼女は国王の公式な愛妾として富も権力も何もかもを手にしていたので、結婚して王妃になりたいなんて考えていなかったんじゃないのかなー…最後にジルベールにいいこと言って去っていくのは、つまりは彼女が真に望んでいたのは国王との愛、みたいなことになるんだろうけど、そんな話だったか?という気もしましたし、ううぅーむ。あと、アントワネットとの宮廷の覇権争いに敗れて去っていく、という描き方は、実際に下級生にトップ娘役に就任されて組替えしていく中の人の立場をなぞりすぎているので、ファンは観ていてお尻がちょっとモゾモゾすると思います。近く組替え先での次期就任が発表されでもするのなら、見え方が違ってくるとは思いますが…というかこれまでもまあまあ手厚かったけれど今回はショー含めて完全な別格扱いで、組替えの餞別ってのもあるんだろうけど、文春案件の劇団からの謝罪ないしフォローが入ってるんですかね…?とかちょっと邪推したくなるレベルでしたよね。芝居ではさーちゃんも渡っていない銀橋を(ソロを長くして歌って渡らせろよ…)堂々歌って渡って去るのは、さすがに、どうも、なあ…古い話でアレですが、ミハルが就任したときのヨウコちゃんみたい…(>_<)
と、こうまでうだうだねちねち語りましたが、逆に言うとこのあたりがもうちょっと整うと、ものすごくおもしろい、せつない、しかし楽しい傑作になるのでは?というくらい、わりとちゃんとした作品だったと思うのですよね、私。『フリューゲル』とかにはそんなこと言えないもん…(おっと)
また王国作って王になるとか言い出しちゃったよ、とか建物の屋上でチャンバラ始めたら落ちるぞ落ちるぞ、ってなっちゃうのは、もう仕方ないですしね…(^^;)そうそう、ここの回想の親子は手前のセリの上げ下げで出した方が良くないかなあ、奥に出すと遠近感が狂うんですよ…
ああぁどうしよう、もっと褒めねば。
えーとえーと、サラちゃんクララ(この時代にあんな眼鏡が?とは思うが)となるくんヨハンがよかったなとか、ジルベールの部下のりせくんニコラもよかったなとか、宿屋の女将役の沙羅ちゃんがさすが芝居が上手いよなとか、ましろっちやるのくんがやっぱいい仕事するよなとか、なっつやまなちゃんの手堅さがホント貴重だなとか、嵐之くんが起用されて嬉しいなとか…でも新公ヒロインに抜擢するくらいなら夢風ちゃんがやったサクラの娘は花恋こまちにしてちゃんと客に認識させてくれよ、とは思いましたかね。あっ、またつっこんでしまった…
でもまあ、ファンは楽しく通うのでは?と思う出来かと…フォローになってなかったらすみません……
ショー・スピリットはなんと宙組本公演担当が15年ぶりというBショーで、もうもうまさに待ってました!という感じでした。
イヤまったくいつものBショーで、構成なんざそれこそ既視感ありまくりなのですが、宙組でやってくれるということが貴重なんです! これまで銀橋に出るスターの数の少なさに定評がありすぎた宙組で! あの子もあの子もあの子も、こんなにも出してもらえて歌まだ歌って…ともうそれだけで楽しかったです。減るもんじゃないしいいんだよ大盤振る舞いで!
プロローグの赤と金、なんか最近れいこちゃんとかで観なかった?とか思うのですが、いいんですいいんです。長いけど楽しく手拍子しましたよ!
個人的にはプロローグの次の、雨のタンゴの場面が好きです。モノクロ縛りのお衣装(これもよく観るヤツだけど)と、もえこの場面かと思いきやトップコンビが出てきちゃうところとか、意外と尺が長くていろんなバリエーションが展開されるところとかも好き。でもその次の、ずんちゃんブッキーなんだけどじゅっちゃんが虹のラスボス、みたいな場面もよかったです。
そこからは中詰めなんだけど、とっぱしが上手スッポンセリ上がり背中、振り向いたらナニーロ!で「キャーッ!」となりました私(笑)。いやぁいいよね若手あるあるで。まだまだ保っていなくてあわあわしていて、そしたら下手から女子四人が助っ人に現れましたが(笑)(みんな女子です)(翌日三人しかいなくて、終演後に確認したら有愛きいちゃんの休演が告知されていました…)。
さらには客席降りがあって、キキちゃんが先頭切って中通路まで爆走して、ハイタッチもありで…このご時勢に…ありがたいけどいいのよそこまでしなくても…まだまだ感染が怖いんだから…でも21列目だったので振り返って手を出しましたすみません、キキちゃんの手はひんやりしていました。
さらにさらに中詰めのシメがこってぃひろこセンターの若手場面でさあ、なんとひろこまで歌っててさあ、いやぁハラハラしたね!(爆)
からの、なんとまっぷーなっつが上下スッパンセリ上がりで宙組25周年を寿ぐ歌なんか歌っちゃって、胸アツでしたね…そこから白いお衣装にサークレットのよくある場面なんだけど、みんなが学年ごとかな?キキちゃんと絡んでいって、さらにはこれで退団のきよちゃん沙羅ちゃんシンメの爆踊りターンがあって、もううるうるしました。
ロケットもよかったなあ、歌手がいるのもよかったですね。
そしてまたまた別格じゅっちゃんのターンからフィナーレへ。でも次にさーちゃんセンターで娘役場面を作ってくれたのが嬉しかったです。てかBのフィナーレのちょっとバグってる大盤振る舞い、ありがたいですね。
黒燕尾、男役全員出てるんでしょ? 景気よくていいね! さらに歌い継ぎと、きよちゃん沙羅ちゃんの銀橋デュエットまで…ありがたや。娘役も花道まで使って全員ズラリと景気よく、そしてデュエダンは組カラーの紫。オーソドックスな振りでリフトもないけれど、お初だろうさーちゃんがそつなくこなしていて良きでした。カゲソロは葉咲うららちゃん、素敵でした。
エトワールはサラちゃん、これも良き。ずんちゃんも立派な二番手大羽根を背負って万雷の拍手、ショートの鬘のさーちゃんがザッツ・プリンセスで、お辞儀からのキキちゃんのスタンバイに若干間に合ってない感じも愛しかったです。ラインナップはナニーロは組長のまだ外で、そこは線を引くのね、と思いましたが…まあバウ主演も控えているし、これからかな! おかゆもスチール入りしたし、キョロちゃんが戻ってくればさらに手厚くなっていきますし、新生宙組、期待しかありません!
衝撃のニュースについては、今はまだなんとも、なので…
みんなが心身ともに元気で健康で、楽しくハッピーに公演し続けられますように……
いろいろ心配だし憤ることも多いけれど、私はファンをやめるとか観なくなるとかは考えていなくて、観て文句を言いたい派なので…イヤ別に文句を言うために観ているんじゃなくて、あくまで改善を求めて、良かれと思って、愛あればこそ言うのですけれど…
どうぞ、そんなファンの想いに応えていただきたく…でないと200年とか150年どころか、110周年だって完走できるか怪しいんだからね! 自覚せーよ劇団!!
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