駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

壽初春大歌舞伎第三部『花街模様薊色縫 十六夜清心』

2023年01月04日 | 観劇記/タイトルあ行
 歌舞伎座、2023年1月3日17時45分。

 鎌倉の古刹・極楽寺の所化である清心(松本幸四郎)は、奉納された祠堂金三千両が盗まれたことで詮議を受けるうちに、大磯の廓の遊女である十六夜(中村七之助)と恋仲であることが露見し、女犯の罪で寺を追放される。これを聞いた十六夜は廓を抜け出して清心を追うが… 
 作/河竹黙阿弥、1859年初演。押し込みや強盗を働き江戸市中を騒がせた鬼坊主清吉をモデルに、江戸城の御金蔵破り、上野寛永寺の僧侶と遊女の心中事件を取り入れた全七幕の作品。

 あけましておめでとうございます。
 すっかりニワカ歌舞伎道に迷い込んでおりますが、お友達にお誘いいただいて「行ける、行ける!」と飛びついてこれが今年の観劇始めとなりました。お着物で観劇にいらしている方も多く、華やかな空気に浮き立ちました。新開場十周年記念公演だそうです、早いものですね。
 さて、というわけで私はずぶの素人なので、有名な場面だたけをハイライトでやるような演目はなんせ知識がないのでワケわからないので苦手で、なるべく通し狂言で観たいと思っています。あとは、仇討ちものとか忠義ものとかのマッチョな演目よりはラブストーリー、世話ものみたいなものの方が好きかなー、というのと、薄い顔の男性が好みなので女形なのにインタビューのときはスーツ姿で薄い顔ながらキリッと語っちゃう七之助さんが妙に好き…というのもあって今回の演目が気になっていたのでした。心中ものだというし、『心中・恋の大和路』とか『うたかたの恋』みたいなメロドラマかな、泣けるのかしらん…とか想像していたわけです。
 が、心中で終わる物語ではなく心中から始まる物語である、しかもなんかけっこうピカレスク・ロマンっぽいらしい…?とだけ聞いて、筋書きもネタバレしないよう斜め読みだけして、心の準備はして客席についたのですが…イヤしかしそれでも意外でしたね!?(笑)
 今回は五幕しかなかったので、途中の、清心と尼になったあとの十六夜が再会してワル夫婦(笑)になるくだりが省かれているようです。髪がある程度延びるだけの時間が経っていたことは類推できても、そのくだりがないのであまりのキャラ変に仰天しましたが、まあそこからの怒濤の展開がとにかくおもしろすぎましたね。しかしできた旦那だなー、とか思っていたらその白蓮(中村梅玉)にもそんな過去が!からのさらにまたそんな過去も!で、韓ドラか!とつっこみたかったし、そこからの大立ち回りと、そこでそういう幕切れにするんだ!?という鮮やかさに驚き感心し感動して大拍手…という、なんてもめでたい観劇始めになりました。いやぁ、歌舞いてますよねえ。てか今や古典芸能と褒めそやされているのかもしれないけれどもともとは大衆演劇、ザッツ・エンタメなんだってのも、ホントわかります。オチもホント、追っ手を振りきって手に手を取って逃げて終わり、でもないしお縄になって後悔して終わり、とか首さらされて教訓めいたことを語らせて終わり、とかじゃないところが実にイイ。ここで、この場面で見得切って終わる、ってところが本当にアヴァンギャルドだわー。震えました。実際の事件を素材にしたにせよ、こういう台本にしちゃう作家がすごいわー。そしてホントしょーもない男の幸四郎さんがいいわー(笑)。
 十六夜も、本名が「さよ」だから遊女の名が十六夜、ってのが洒落てますねー。がらっぱちになったおさよさんも素敵だったなー。てかカットされた幕にあったのかもしれないけど、子供はどうしたんですかねー。産んですぐ里子に出したとかなのかな、まあこの時代にはわりとあることかもしれませんね。しかし水練が得意で浮いちゃって泳げちゃって心中しきれない男ってホントどーなの、おもしろすぎました(笑)。

 ご一緒したお友達と終演後に近くのイタリアンに繰り出して乾杯して、わあわあ語れたのも楽しかったです。でもそこで気づいた、翌日観劇予定だった星組東京公演のコロナ中止の報…がっくし。なので宝塚始めは週末まで持ち越しです。
 テレビ観戦した箱根駅伝も沿道の人出はすっすりコロナ禍以前に戻っていて、ちょっとぞっとしましたよね…いくら屋外とは言えあれだけ密集してわあわあ声援送って、絶対誰かが持ち込んでるし飛沫を拡散させてるしそこから罹患した人がそれぞれ帰宅してそこでまた撒き散らして…と思うと、もはや正確な数を取らなくなったので政府の発表もアテにできませんがここからまた陽性者数は増えるはずで、ホント心配です…
 まあ私も観劇に出かけて友達と食事しているので人のことは言えませんが、規模が違うじゃん、それ以外は引きこもってるしこれで感染したらどこで誰からか特定できるしまだ対応しやすいよ、とか思うわけです。引き続き自分にできる感染対策はして、エッセンシャルワーカーの方々のためにも観劇以外の外出は控え、なるべくおとなしくして今年も生き抜きたいと思っています…本年もどうぞよろしくお願いいたします。


 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする