駒子の備忘録

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初春歌舞伎公演 通し狂言『遠山桜天保日記』

2023年01月25日 | 観劇記/タイトルた行
 国立劇場大劇場、2023年1月22日12時。

 江戸木挽町の芝居小屋・河原崎屋の楽屋で笛方と鳴物師が喧嘩を始めて大騒ぎになる。すると唄方の芳村金四郎こと遠山金四郎(尾上菊五郎)が仲裁に入った。気っ風が良くてみなに慕われる金四郎の諫めに騒ぎは収まるが、そこへ遠山家家老の箕浦甚兵衛(板東楽善)が来訪し、金四郎に北町奉行就任の奉書を届ける…
 作/竹柴其水、監修/尾上菊五郎、補綴/国立劇場文芸研究会。1893年初演の「遠山政談もの」の代表作のひとつ。2008年に歌舞伎として半世紀ぶりにアレンジ上演、その十四年ぶりの再演。今年十月に建て替えを控える初代国立劇場のさよなら公演のひとつ。

 序幕、大詰合わせて全六幕、三回の休憩込み四時間でたっぷりのんびりなんでもアリで送る痛快娯楽作で、楽しく観ました。
 国立劇場は仕事でお堀端をタクシーで走るときなんかにずっと見かけてきましたし、お隣のホテルにはお茶会なんかで何度も行きましたが、演目的にご縁がありませんでした。が、ここ数年私がちょっと歌舞伎づいてきたのと、建て替えとなると劇場として見てみたくて、いそいそとチケットを取ってみました。
 ロビーは広く、売店やお土産物屋さん、幕間に予約して食事ができるレストランやお弁当などが持ち込める無料休憩所がたくさんあり、優雅で心地良く、ベンチも多く配されてトイレも改装されているのか綺麗で、なんの問題もないハコじゃん、と思いました。が、楽屋や舞台機構などの中がいろいろアレなのかな? 客席も、歌舞伎座や新橋演舞場、明治座は確かコの字型で、サイド席は椅子が斜めに振られていない、舞台が観づらい席かと思いますが、国立劇場にはサイド席がそもそもなくて、2階席からでも花道は半分かたちゃんと見えるし、舞台がとても近くて観やすい、いい劇場だと思いました。椅子も、これはちょっと男性の背の高さに合わせている気もしますがヘッドレストがちゃんとある座席で、シートも綺麗。いいところはきちんと残して建て替えられるといいなー、と思います。
 しかし六年もかかるものなのか、大変ですね…歌舞伎って意外とあちこちでやっていてホントめまぐるしいな、全部観ようと思ったら大変なんだろうな、などと思っていたところですが、それでも常打ちの小屋がしばらく使えないのはまあまあ痛手だったりするのでしょうね。でも、新劇場のお披露目にはまた出かけてみたいものです。チケット代があまり上がらないといいな…今回はかなりコスパが高いなと感じました。

 さて、で、遠山の金さんです。最近だとあがちんってことです(笑)。
 まあこういう演目の主人公あるあるなのか、最初と最後にしか出てこないような役ではあるのですが、初演では金四郎と悪役の短筒強盗・生田角太夫(尾上松緑)を初代市川左団次が二役で演じたんだそうですね。それはおもしろい趣向だと思いました。てか歌舞伎ってホントそーいうことするよね(笑)。
 今回も、若旦那が芸妓…ではなく芸事の師匠なんだけどやはりカタギではないという扱いで結婚は許されないというトンデモ差別を受ける女性ですが、ともあれ恋仲ででも別れろと言われて別れられなくて心中してでも死にきれなくて、そして悪党に転がり落ちるという(笑)、先日観た演目と展開おんなじなんですけど!?というあるあるというかあるかそんなこと!とつっこみたい楽しい展開なのですが、そこから三悪人になる仲間とのまたまさかの因縁が…というもうもう展開がたまりませんでした。世間狭すぎだろう!(笑)
「生きていたのか!」「おまえだったのか!」の連続で展開する韓ドラも真っ青のストーリーで、でも百年前も今も庶民はこーいう話が大好物ってことですよね。しょーもないけどいじらしい、人間だもの(笑)。そして最後はお祭り(初芝居、という設定ですが)、総踊り…つまりフィナーレ。ホント、やってることはいつでもどこでも変わらないんですね。
 この若旦那、尾花屋小三郎(尾上菊之助)は前回上演時も今回も続演だったそうですが、前回は角太夫の女房おもと(中村時蔵)とその娘でヒロインのおわか(中村梅枝)を時蔵さんが二役でやっていたとか、それを今回は息子とふたりで母娘を演じるとか、小三郎を慕う丁稚の辰吉(尾上丑之助)をやはり中の人の息子が子役として演じるとか、ホント卑怯というか濃いというかなんというか…そういうところも含めて、長く観て、おおらかな気持ちで楽しんでいく文化なんでしょうね。ちょっとだけわかってきた気分です。
 やはりお白洲での長袴バッサー!桜吹雪ドドン!にはアガります。人情裁きの一件落着、めでてぇなあ!ってなもんです。そして金さんは芝居禁令も解いてくれて、フィナーレ大団円となるのでした。
 プログラムのたちいりハルコのコラムにありましたが、やはり通しだとストーリーが楽しめるので素人にはとっつきやすいですよね。機会を見て引き続きちょこちょこ手を出していきたいです。





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