駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

和泉かねよし『新装版 メンズ校』(小学館ベツコミフラワーコミックス全8巻)

2020年11月14日 | 乱読記/書名ま行
 海まで5分、1日2本のフェリーあり。徒歩ではほぼ脱出不可能の全寮制名門男子校・私立栖鳳高校は別名・アルカトラズ刑務所日本支店。超ド僻地で繰り広げられる恋もHもやりたい盛りの男子高校生たちの狂宴の行方は…

 テレビドラマ第1話は見てみたのですが、私がなにわ男子の誰ひとりとして知らないからか、今ひとつノリきれなかったので、原作漫画を読んでみました。ちょっと前の作品で、映像化に合わせて新装版が出たようでした。
 しかし変わった作風の作家さんで作品ですよね…男の子主人公の少女漫画って別にそんなに少ないわけではないけれど、これは少女漫画ではない気がする…といって、では少年漫画誌か青年漫画誌に載った方がよかったんじゃない?とも思いにくいのです。読者であるこちらとしてもどの立ち位置でどのテイストで読んだらいいのか、困るような…そして結局この作家さんは常に一風変わった作品を描いていて、高校で先輩や同級生にキャッキャウフフみたいなタイプの少女漫画は全然描けない人なのでした。不思議…
 だからこれも、リアルでもないしドリームでもないし、露悪的でもないけれどあるあるというほどでもない、もちろんBLでもない、けれどまあ青春模様を描いているのでなんとなく読めてしまう、不思議な作品だなと思いました。
 エリカのエピソード、というかこういう作品において人の死を扱うのはなかなか難しいものかと思いますが、それこそ人生においてはないこともないものなので、そこはすごく丁寧に、真剣に扱われていて、好感を持ちました。
 あとは、私はメガネに甘いから(笑)野上くんとミキちゃんのパートをもっと見たかったですけど、まあ全体としてはこのバランスくらいでいいのかな…
 なんにせよ、とまどいつつも楽しく読みました。


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須藤祐実『夢の端々』(祥伝社フィールヤングコミックス全2巻)

2020年11月14日 | 乱読記/書名や・ら・わ行
 伊藤貴代子、85歳。認知症で家族の顔さえわからなくなる日々の中、突然訪ねてきたのは、忘れられるはずもない、かつての恋人・園田ミツだった。貴代子とミツは、戦後の女学校時代に心中を図った恋人同士だったのだ。心中が失敗しても恋愛関係は続いたが、貴代子は28歳のときに見合い結婚を決めてしまい、ミツは傷つくが…離れたふたりの人生が再び重なるようになるまでの恋愛の軌跡を、時代を遡って辿るドラマチック一代記。

 端正とは言えない絵柄で、デッサンもちょっと不安定で、決して上手いとは言いがたい気はするのですが、味がある絵を描く作家さんですね。このサイズのコミックスにするには画面の密度もだいぶないけれど、それもまた味に見えます。得だなあ。
 お話の始まりは2018年、平成30年です。そこから遡って第2話冒頭は1988年、昭和63年、さらに第3話になると1969年の昭和44年になって…という、スリリングな構成です。
 ふたりは昭和8年生まれのようなので、20年生まれの私の母親より半世代くらい上の青春を送った感じでしょうか。美人でお金持ちでクラスの人気者の少女と、地味で目立たない文学少女、みたいなふたりが出会い、心を通わせ、でも時代は女の自由を許す空気はまだまだ全然なく、「この体はいつもだれかの物なんだわ」「お国の物だったり親の物だったりやがては夫の物 家の物…/でも本当はこの体も心も自分だけの物のはずだわ」「だれかに傷つけられるんじゃなくて/どう傷つくかを自分で決めたい」「だから一番幸福な時期に死ぬことにしたの」と心中するために山に登り、薬を飲み…ふたりで生きてみることにして山を下りようとし、しかし遭難して大怪我をした…
 そのせいばかりでもないけれど、その後もいろいろとふたりの関係は捻れていって…というのは、時代のせいばかりとも言えないし、そりゃ人生いろいろあるよとしか言えなかったりするし、やっと再会して、けれどまた思わぬ別れがあって…というのも、やはりザッツ・ライフな気がする、せつなく美しい物語です。
 ラスト、もう2ページあれば最後に見開きで抱き合うふたりの絵を入れられたのにな。
 貴代子の娘も孫もひ孫もみんな女ですが、彼女たちが少しは生きやすい世の中に、今、はたしてなっているのでしょうか…
 上下巻で綺麗に対になる装丁が美しい本でした。

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