16世紀フランス。素敵な王子さまとの結婚を夢見る美しい王女・マルゴ。宗教対立が激化する中、マルゴの運命は翻弄され…恋愛、結婚の秘密に分け入る作者初の歴史劇。
最近観た『メアリ・スチュアート』とか、もっと言えば『SANCTUARY』の世界ですよね。愛とセックスと政治と戦争のめまぐるしい物語でした。
マルゴと三人のアンリ、すなわちギーズ公と次兄アンジュー公とナヴァル王の物語…というような提示も序盤にはあったのですが、そして確かにそれぞれと深く愛と憎悪の確執が描かれたのですが、少女漫画としてはアンジュー公はともかくギーズ公ないしナヴァル王とのラブロマンスにもっと振ってもよかったのではないかなあ、と思います。ギーズ公なら、結婚できなかったけれど初恋の人としてずっとずっと好きで、いろいろ事情があって引き裂かれ翻弄されたカップルだったけれど確かに愛はあったのだ…という悲劇にしてもいいし、ナヴァル王なら、最後は離婚に終わってしまったけれど確かに愛はあったしこれまた運命に翻弄されたカップルだったのだ…ということにしてもいい。要するにロマンチック・ラブ・イデオロギーを貫いた方が据わりがよかったと思うんですけれど、そういう意向はなかったようですね。わりと淡々と描いているというか、みんな勝手にあちこち恋愛するしフラフラするししょうもない浮気をする。「これこそが真実の愛!」みたいなのがない。そういう意味ではオトナな作品に仕上がっていますが、物語の芯がないとも言えるかなーと感じました。単なる歴史絵巻になってしまいますからね。
もちろん、ストーリーは複雑な史実をよく描きほぐし、虚実入り乱れながらドラマチックに紡がれているのですが、結局物語で大事なのって主人公の感情とその生き様だと思うので。マルゴ自身が何かを貫いたとか達成したとかの描き方にはなっていなくて、流されつつも命長らえた、というだけの終わり方になっちゃっているように見えるから、ちょっと弱いなと思うのかもしれません。
とはいえ下手したら何百人という登場人物をきちんと描き分けているのがすごいし(少女漫画家では実はこれができる人は少ないですよね)、コミックスの紙がいいせいもあるのですがベタが綺麗で、抑制された端正なトーンワークと生き生きした描線が白と黒の美しさで見せる漫画本来の力を発揮していて素晴らしい。コマ割りもコマの中の構図も抜群に読みやすく、ベテラン作家によくあるようにフキダシが小さくなりすぎたりもしていない。漫画として抜群に読みやすいのが素晴らしいのです。基本的なことを今でもきっちりやっているだけと言えば言えるのですが、どんどん崩れていくベテランが多い中でこれはすごいことです。たくさんの資料にあたっているらしい、当時の服飾や城郭の描写なども素晴らしいです。
一点気になったのは、こんなにデッサンもしっかりしているし過去にはバレエ観劇にはまってバレエをモチーフにした作品もたくさん描いていて人間の肉体をそれこそ完璧に描いてきたこの作家が、マルゴの下半身、つまりお腹とか腰とか脚の付け根あたりを描くときだけデッサンがちょっと狂っていて、そしてマルゴのセックスへの執着というか感覚というかの描写もなんかちょっとヘンに思えることです。ものすごく処女の妄想っぽい…それも古い…ここがとにかく不思議で奇妙でした。
でもこれで作者は『ポーの一族』の連載に集中できるのかな。これもベテランにありがちな残念な二番煎じになっていないのが素晴らしく、続きを待ち望んでいます。あとホントにスーパー歌舞伎になればいいのにのと思っている…新シリーズが楽しみです!
最近観た『メアリ・スチュアート』とか、もっと言えば『SANCTUARY』の世界ですよね。愛とセックスと政治と戦争のめまぐるしい物語でした。
マルゴと三人のアンリ、すなわちギーズ公と次兄アンジュー公とナヴァル王の物語…というような提示も序盤にはあったのですが、そして確かにそれぞれと深く愛と憎悪の確執が描かれたのですが、少女漫画としてはアンジュー公はともかくギーズ公ないしナヴァル王とのラブロマンスにもっと振ってもよかったのではないかなあ、と思います。ギーズ公なら、結婚できなかったけれど初恋の人としてずっとずっと好きで、いろいろ事情があって引き裂かれ翻弄されたカップルだったけれど確かに愛はあったのだ…という悲劇にしてもいいし、ナヴァル王なら、最後は離婚に終わってしまったけれど確かに愛はあったしこれまた運命に翻弄されたカップルだったのだ…ということにしてもいい。要するにロマンチック・ラブ・イデオロギーを貫いた方が据わりがよかったと思うんですけれど、そういう意向はなかったようですね。わりと淡々と描いているというか、みんな勝手にあちこち恋愛するしフラフラするししょうもない浮気をする。「これこそが真実の愛!」みたいなのがない。そういう意味ではオトナな作品に仕上がっていますが、物語の芯がないとも言えるかなーと感じました。単なる歴史絵巻になってしまいますからね。
もちろん、ストーリーは複雑な史実をよく描きほぐし、虚実入り乱れながらドラマチックに紡がれているのですが、結局物語で大事なのって主人公の感情とその生き様だと思うので。マルゴ自身が何かを貫いたとか達成したとかの描き方にはなっていなくて、流されつつも命長らえた、というだけの終わり方になっちゃっているように見えるから、ちょっと弱いなと思うのかもしれません。
とはいえ下手したら何百人という登場人物をきちんと描き分けているのがすごいし(少女漫画家では実はこれができる人は少ないですよね)、コミックスの紙がいいせいもあるのですがベタが綺麗で、抑制された端正なトーンワークと生き生きした描線が白と黒の美しさで見せる漫画本来の力を発揮していて素晴らしい。コマ割りもコマの中の構図も抜群に読みやすく、ベテラン作家によくあるようにフキダシが小さくなりすぎたりもしていない。漫画として抜群に読みやすいのが素晴らしいのです。基本的なことを今でもきっちりやっているだけと言えば言えるのですが、どんどん崩れていくベテランが多い中でこれはすごいことです。たくさんの資料にあたっているらしい、当時の服飾や城郭の描写なども素晴らしいです。
一点気になったのは、こんなにデッサンもしっかりしているし過去にはバレエ観劇にはまってバレエをモチーフにした作品もたくさん描いていて人間の肉体をそれこそ完璧に描いてきたこの作家が、マルゴの下半身、つまりお腹とか腰とか脚の付け根あたりを描くときだけデッサンがちょっと狂っていて、そしてマルゴのセックスへの執着というか感覚というかの描写もなんかちょっとヘンに思えることです。ものすごく処女の妄想っぽい…それも古い…ここがとにかく不思議で奇妙でした。
でもこれで作者は『ポーの一族』の連載に集中できるのかな。これもベテランにありがちな残念な二番煎じになっていないのが素晴らしく、続きを待ち望んでいます。あとホントにスーパー歌舞伎になればいいのにのと思っている…新シリーズが楽しみです!