駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇宙組『天は赤い河のほとり/シトラスの風-Sunrise-』

2018年06月21日 | 観劇記/タイトルさ行
 宝塚大劇場、2018年3月16日15時(初日)、17日11時、18日11時、26日13時、4月1日11時、3日13時、18時(新公)、14日18時、15日11時、15時、22日15時(前楽)、23日13時(千秋楽)。
 東京宝塚劇場、5月11日15時半(初日)、15日18時半、23日13時半、29日18時半、31日18時半、6月14日18時半、17日15時半(大楽)。

 紀元前14世紀、古代オリエント。ヒッタイト帝国の首都ハットゥサは、黒海へと流れ込む赤い河マラシャンティアに抱かれ、皇帝シュッピルリウマ一世(寿つかさ)の治世の下、繁栄のときを迎えていた。皇帝の第三皇子カイル(真風涼帆)はその血筋に加え優れた才能を持つ世継ぎと一目置かれている。暁の明星が輝くある明け方、王宮で、カイルは呪術の形代としてタイムスリップさせられた現代の女子高生ユーリ(星風まどか)と出会うが…
 原作/篠原千絵、脚本・演出/小柳奈穂子、作曲・編曲/青木朝子、下村陽子。1995年から2002年まで連載された同名の少女漫画をミュージカル化。

 原作コミックスを予習した際の記事はこちら
 大劇場初日はこちら。その他、こちらこちらこちらこちらなど。
 以上で、だいたい書き尽くしている気はしています。
 なんと言っても大入り満員で、そこはよかったのではないでしょうか。私も、もちろん頼んだ日時にもよるでしょうが、『エリザベート』のときですらこんなにはお断りされなかったよ!?というくらいにお取り次ぎのお断りがありましたが(劇団から会に降ろす枚数が減っているという噂ははたして本当なのでしょうか…)、逆に盛況で人気なのを肌で感じられて、嬉しかったくらいです。まあ中身としてはアレですし(オイ)、やや飽きましたし(オイオイ)、ありがたくも十分観ました。入り待ちにも博多座や青年館に浮気した日以外はほぼ通えましたし(出待ちは嫌いなのでほとんど行きませんでした、すみません…)、楽しい日々でした。満足です。
 大楽のカーテンコールでゆりかちゃんも言っていましたが、いつもより少し長い公演期間で、特に東京公演は寒暖差が激しい日々もありましたが、ひとりの休演者も出すことなく無事に全員で完走できて、本当によかったです。ゆりかちゃんのご挨拶が、もちろんものすごくしっかりはしていたんですけれど、けっこう感極まっていて、傍目には余裕綽々のトップスターぶりに見えましたがやはり当人的にはテンパっていたのかな、プレッシャーや責任感に押しつぶされそうになるときもあったのかもしれないな、でもやり遂げたったー!って達成感と心地良い疲労感に光り輝いている笑顔だなと晴れがましく、また頼もしく、愛しく感じました。
 お疲れ様でした、改めてお披露目おめでとうございました。

 観劇に同伴した知人や周りの感想はよっつに別れていて、原作漫画のファンで「あのエピソードもない、これもない、何もない、なんでこんなになっちゃったの!?」って人と「あんな長いものをよくまとめたねえ、おもしろかったよよかったよ!」って人、原作未読で「なんかすごいダイジェストを見せられた気がする…つまらなかった…」って人と「もっといろいろあるんだろうなとは思ったけれど、フツーにおもしろかった! 漫画も読んでみたくなった!!」って人、という感じでした。まあそうですよね、いずれかに大別されますよね、というところでしょうか。あとは宝塚歌劇と少女漫画のどちらに比重があるファンかや、組ファンかどうか、組子に贔屓がいるかどうかでも見方は変わるのかもしれません。まあでもトータルでは、みんながみんなケチョンケチョンに言うような駄作、大失敗作認定ではなかったかと思います。よかったよかった(低すぎるハードル…)。

 そして私のタイムライン調べでは、もちろんバイアスが超盛大にかかっていることは承知しているつもりですがそれでも、あっきーネフェルティティ王太后陛下の評判が良くて、安心するやら嬉しくて小躍りするやら、だったのでした。
 せーこナキアが主人公のゆりかカイル、ヒロインのまどかにゃんユーリに対する悪役、敵役として屹立しているのはもちろん、そこにさらにネフェルティティをここまで立てたことで、物語に厚みや深みが出た部分はあったことでしょう。ただ、カイルはネフェルティティとはまったく絡まないから、結果的にどうしても、ユーリとナキアとネフェルティティという三人の女たちの生き方の違い…みたいな色がより強くなってしまい、それはトップスターが演じる男性主人公を一番に立てるべき宝塚歌劇としてどうなんだ、って問題が出てきちゃいはしたんですが、観客のボリュームゾーンとしては実は「キャー、カイルさまカッコいいー!」みたいな層よりは「ナキア、ちょっと呑もうか…」とか「わかるわネフェさま、おつらかったわよね、私もよ…」みたいな層の方が多かったのかもしれないし(^^;)、なのでこれで結果オーライだったのかもしれません。
 私は当初は、「なーこたんもっと上手くやれよ、もっと上手くできただろう!?」とか思ってイカイカしていたワケですが、だんだん、どうせこんな長い話を90分でやるのなんて無理なんだし、だったらもうやりたいようにやっちゃおう、ってな確信犯で、なーこたんはあえてこの三人の女たちの対比をぶっ込んできたのかな、とも考えるようになりました。せーこはともかく、あっきーの起用はそういう意図ですよね。番手その他の問題ももちろんあったかもしれないけれど、あえて男役に演じさせてまである種のインパクトを演出しようとしたキャラクターなんだと思います。そしてそこまでして、かつわざわざ、愛ちゃん演じるマッティワザとまったく絡ませなかったのも、あえてのことなのかもしれないな、と今は思います。
 そりゃあんなキンキラキンの超豪華お衣装だし、頭飾りもあってでっかくて目立つし、とにかく美貌なことは満場一致だろうし、プロローグを除けば出番は二場面だけなんだけど、たとえボーッと観てても「アレ誰だったの?」って注目するキャラになっていましたよね。そんな大役をやらせていただいた、ありがたいことです。
 中の人は当初はとにかく「男役でないこと」をただただ嫌がっているだけのようでしたし、不慣れなことや支度その他がやはり大変なようでもあって、特に大劇場公演前半ではやたらとバタバタしていていっぱいいっぱいであるようなことしか窺えないようなところがあり、不機嫌そうとまでは言わないまでも不安そう、楽しめていなさそうに感じないこともなかったのですが(個人の感想です)、東京公演ではぐっと落ち着いてきたように見えましたし、時間が有効に使えているようで(東京の方が大休憩が長いですしね)楽屋での暇な時間も楽しめるようになっているようだったり、着込んでいないから寒いと愚痴って笑ったりバレンタインに渡せなかったものが渡せて恥ずかしかったけどよかったと笑ったり(!)、とにかく余裕と前向き感が出てきたように感じられたんですよね(あくまでも個人の感想です)。それは私たちが必死のパッチでお手紙その他で褒め称え励ましまくり勇気づけアゲまくったからかもしれませんし(でも別に嘘やおべんちゃらじゃないんだ、私たちは本当に純粋にそう思ってただ思いを伝えただけなのです)、やっと自分でも納得して芝居ができるようになったり、役の性別にかかわらずその役を生きることを楽しめるようになったり、なんらかの手応えを感じられたりするようになったのかなー、とも思ったのでした。個人的にはあまり芝居が変わらない、初日にある程度仕上げてくるタイプの役者だと思っていたのですが、今回はさすがにけっこう変化を感じて、それも新鮮でした。しかし「さらに女度に磨きをかけてがんばります」みたいな冗談口が聞ける日が来ようとは、漏れ聞いたあの集合日の様子からはよもや思えませんでしたよ本当に…(笑)ああ、よかったよかった。
 ネフェルティティの人生については作中ですごく具体的に描かれているわけではないし、むしろとおりいっぺんに近い説明が台詞の中でなされているだけなのですが、それをちゃんと意味や深みや情感を持って聞かせて、想像させなんなら落涙させる芝居を、贔屓はしてみせていたと私は思っています。
 良かったよ、起用に応えていたよ、大役を果たしていたよ、。役者としてスターとして、確実にひとつステップアップしたと思うよ。女役で剥き出しの肩とか腕とか見られちゃったヒャッホーイ、なんてこと以上の収穫がありましたよ。それが本当に嬉しい公演でした。
 これを踏まえての『WSS』リフ、本当に楽しみです! ショーでは男役をやっているけれど、当人的にはどうやら芝居の男役とは違うもののようで、芝居で男役に戻ることを当人もとても楽しみにしているようでした。これはもうワクワク待つしかありませんね。歌も踊りもがっつりありますが、できることは知っています。全然心配していません。エビちゃんとのカップルも楽しみすぎます! ニマニマして待ちたいと思います!!

 では以下、簡単に組子の感想を。
 ゆりかちゃん、押すに押されぬヒーローっぷり主役っぷり座長っぷり、素晴らしかったです。わかりやすくカッコいい場面があまりない主人公でしたが、それを保たせたのは当人のスター力だと私は思います。いつかがつんとニンにはまる役を見たいし、また全然違う顔を見せてくれるような作品も観たいです。楽しみしかない、がんばってください!
 まどかにゃん、垢抜けたよね可愛くなったよね上手くなったよね綺麗になったよね! トントン拍子に抜擢されかつ順調に応えてきてのあっという間のトップ就任で、逆にあまり評価されていない気もしますが、すごくポテンシャルを持っているスターだと思うし、それってけっこうすごいことだとも思っています。本質的にはもっと大人っぽかったり暗かったりウェットな役も上手いタイプだと思うので、そういうお役も観てみたいし、こちらも楽しみしかありません。キキちゃんとの映りがいいのも素晴らしい。歌えるのも素晴らしい。次のマリアはさらに深めてくるんだろうなー、楽しみです。
 キキちゃん、改めて、ようこそ宙組へ。いやーいい子をもらった、もう放しませんよ(笑)。二番手っておいしいポジションではあるけれど、花組への組替えではここまでブレイクしなかったんだから不思議なものです。まあ個人的には『カリスタ』は嫌いじゃなかったんですけれど、『ハンナ』も『MY HERO』もあまりピンとこなかったからな…ともあれ、ラムセスという役がよかったというのもあるし、もちろんその役をより魅力的にしたのはキキちゃんの地力だと思うし、歌えるし、まかキキ愛の並びもいいし、スタイリッシュでちょっとスマートすぎる宙組男役陣の中では目立つ華や濃さを持っていて、目立ちます。善譲のときまでさらに磨かれていくことでしょう。大空さんはまゆたんの上にカットインしてそれは申し訳なかったけれど、のちに二番手がテルに替わってそれは効果があったと思うし、テルは今度はまぁ様(とキタさん)を呼んでこれまたよかったと思うし、そんなまぁ様のところに今度はゆりかが来て、そしてゆりかの代になったときにキキが来た。こうしてつながっていくものなんだと思います。この先が楽しみです。
 そして愛ちゃん、それでも初の生え抜き宙組トップスター目指してがんばっていってほしいと思っています。原作漫画の大ファンでスーパーバイザー、素晴らしい。宝塚オタクなところも生かして、芝居でもショーでも少ない出番でも印象づけていたと思います。アタマいいんだよね、そういうのってとても大事だと思う。あとは役と作品に早くもっと恵まれてほしいです。ベルナルドはもちろん楽しみだけれど、もっとできるしハマる役があると思うんですよ、もちろん二の線でね! 期待しています。
 ずんちゃんは、こうなると小さく見えちゃうところが本当に損でもったいないんだけれど、これまた歌えるし踊れるしなんでもできるんだから上手い起用をしていってほしいです。ザナンザのユーリへのときめき芝居にときめかない観客はいなかったと思うのよ…! 頼むよ劇団。
 りくそらの起用も頼みます、りんきらまっぷーかけるさおが上手いのも知ってますが二の線もできるスターなんでよろしくです、モンチりおかなこのことも頼みますよ、まりなもやらせればできるんですよ、もえこあーちゃんももっと冒険させようよね、ゆいちぃやあきもも上手いよ、あとなっつやナベさんの手堅さもね、そしてりっつやわんたが出てきたよね、でもキヨもアラレもいてさらにこってぃどってぃ、楽しみすぎます…!
 娘役陣はきゃのんやエビちゃん、もあちゃんあたりがいい芝居していて、ありさしーちゃんなきあとの歌はせとぅーとさよちゃんが担当していて、春乃さくらちゃんも歌えて、ららが可愛くて、でもまいあにマジで新公ヒロインやらせてくださいねと言っておきたいところです。じゅりちゃんの加入はもちろん心強い。ひろこちゃんもキュートでさらちゃんはラブリーで、夢白ちゃんは美人。楽しみしかありません。
 マギーさん、ご卒業おめでとうございました。その日の24時にツイッターとインスタを始め、翌朝には所属芸能事務所が発表されるようなはりきりぶり、嫌いじゃないです。第二の人生にも幸多かれと祈っています。
 ゆいちゃん、ゆうこさん、りりこにも幸多かれ!


 さて、ロマンチック・レビュー『シトラスの風-Sunrise-』の作・演出は岡田敬二。
 何度でも言いますが私はショーの見方が下手なので、そんな私が下す評価になんの意味もないかもしれませんが、今の組の状態や何よりトップスターの持ち味に合っていない作品を当てたことには私は心底抗議したいと思っていますし、それを別にしてもレトロでオーソドックスでクラシカルでいいって言うよりはやっぱり古くてダサくて新鮮みがなくて単調だったんでないかい?という感想なので、もう語ることはありません…
 とりあえず中詰め、大劇場前半では黒タッセルのイヤリングでそれも素敵だったことは覚えておきたいと思います。
 次はほぼほぼ全員が初シャベになる日本物ショーですね、みんながんばれー! 楽しみにしています。

 宙組誕生20周年、改めておめでとうございました!









コメント
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