駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

マーゴット・リー・シェタリー『ドリーム』(ハーパーBOOKS)

2017年10月20日 | 乱読記/書名た行
 1943年、人種隔離政策下のアメリカ。数学教師ドロシー・ヴォーンは「黒人女性計算手」としてNASAの前身組織に採用される。コンピューターの誕生前夜、複雑な計算は人の手に委ねられ、彼らは「計算手(コンピューター)」と呼ばれていた。やがて彼らは宇宙開発の礎となり、アポロ計画の扉を開く…差別を乗り越え道を切り開いた人々の姿を描く感動の実話。

 先に映画を観てしまっていたため、つまらなく感じちゃうかなと心配していたのですが、そんなことはありませんでした。
 映画はとてもシンプルにストレートにてらいなく変な誇張もなく、実に質実剛健に作られている印象でしたが、やはり省略されてしまった部分はあるもので、この原作のドキュメンタリー小説というかルポルタージュはより複雑で繊細で、特に戦争など、さまざまな要因が絡み合った結果のこの歴史、史実、現実だったのだなと痛感させられました。
 事態の一進一退ぶりとか本当に手に汗握りましたし、不当さへの悔しさや理不尽への怒りに震えたり、それらも負けずに正義や理想や志がゆっくり報われる様子に胸が熱くなったり涙したり、忙しい読書となりました。
 そしてこれはわりと最近の話なのであり、今なお完全な差別撤廃はなされていないのであり、現在を生きる我々にも課されている課題なのだなと改めて感じました。そしてその後、いつかは火星や木星にも…と言われていた宇宙に今、目がいかなくなっていることに対しても、とても思うところがあります。
 私は人類は銀河宇宙などそんなに遠くまでは達せないうちに、あと3世紀くらいで滅亡してしまうのではないかと思ってはいますが、だからといって今をおろそかに生きていいということにはなりませんし、理想の実現に向けて日々たゆまぬ努力を続けるべきなのだ、希望は持ち続けるべきなのだ、と改めて考えさせられたのでした。
 …しかしあれだけモメた映画の邦題やキャッチについてあまりにも無関心なのか、カバー表4のあらすじ説明でなおマーキュリー計画ではなくアポロ計画を持ち出す見識のなさについては激しく問いたいです。だからダメなんじゃねーのこの世の中…


コメント (2)
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