宝塚大劇場、2017年1月1日13時(初日)、2日11時、15時、17日18時(新人公演)。
東京宝塚劇場、2月23日18時半、28日18時半、3月9日18時半(新人公演)、15日18時半、16日18時半。
1928年、ベルリンにあるグランドホテル。世界に名だたるこの高級ホテルには、それぞれの人生を背負った人々が今日も回転扉を通ってやって来る。フェリックス・アマデウス・ベンヴェヌード・フォン・ガイゲルン男爵(珠城りょう)は思うまま、望むままに生きることに情熱を傾ける、美しく快活で魅力的な青年貴族。一見優雅な長期滞在客だが、実は宿泊費を滞納し続けるほど多額の借金を抱えている。エリザヴェッタ・グルーシンスカヤ(愛希れいか)は世界的な名声を得ているプリマ・バレリーナ。しかし今では世間も彼女を忘れつつあり、彼女自身も踊ることへの情熱と自信を失いかけている。引退興行の途上、このホテルにやってきた。オットー・クリンゲライン(美弥るりか)は不治の病に冒され、最後の日々をホテルで過ごすためにやってきたしがない簿記係…そして従業員たち、それぞの人生が交錯する…
脚本/ルーサー・デイヴィス、作曲・作詞/ロバート・ライト、ジョージ・フォレスト、追加作曲・作詞/モーリー・イェストン、翻訳/小田島雄志、訳詞/岩谷時子、オリジナル演出・振付・特別監修/トミー・チューン、演出/岡田敬二、生田大和。1989念ブロードウェイ初演、93年に月組で初演されたミュージカルの再演。新月組トップスター珠城りょうお披露目本公演。
大劇場初日の感想はこちら。
東京公演で台詞がいくつか足されていましたね。まずフラムシェン(早乙女わかば、海乃美月の役替わり)が生理について「遅くなる」ではなく「遅れている」と言うようになったこと、これは正解。それだけで女なら誰でもなんのことかわかるものなので「来ないのよ、アレが」は蛇足かもしれないけれど、この時点で彼女が妊娠しているかもしれないということは全観客にわからせておいた方がいいことなので、これはいい改変だったと言えるでしょう。
逆にオットーの「私がユダヤ人だからですか?」は余計だったかな…この時代のこの社会で、差別されていたり抑圧されていたりするユダヤ人なら、ましてオットーのような性格の人なら、こんなことは実際にはまず言わないと思うのですよね。むしろ彼の服装をもっと貧相で薄汚れたものにするべきだったのです、宝塚歌劇ではなかなか難しいことかもしれないけれど。浮浪者みたいな不潔さじゃなくて、古びてくたびれていて体に合っていない、という記号が必要なんですけれど、それが足りなかったのだと思います。
彼は普段からつましい暮らしをしていて、けれど余命いくばくもないことを知って全財産はたいて最後の贅沢をしにホテルに泊まりに来た男です。病気で痩せてしまって以前の服が体に合わなくなっている、そして質の悪いくたびれた服をずっとずっと着ている庶民です。高級ホテルの格式に合わない客であり、正規の宿泊料金を払えなさそうな客だと思われたからこそ、支配人は部屋がないという嘘を吐くのです。それで十分なはずなのです。きちんと閉じられていない鞄というのは記号としてはむしろ微妙だと私は思います。死にかけている男が何をそんなに持とうというのでしょう?
のちに男爵が彼に仕立て屋を紹介しようと言いますし、オットー自身もフラムシェンと踊ることになるときは服の埃をはたいたりしていますが、穴が開いていたり継ぎが当たっていたりするのはさすがにオーバーなんだろうし、くたびれた貧相な服装、ってのをスターにさせることが宝塚歌劇では難しいんだな、と痛感しました。でもやっちゃってもいいと思うんですよね、それでもみやちゃんはスターだし美しさは隠せないんですからね。せっかくしょぼくれたいい芝居をしているんだから、フォローするのはそこじゃなかったと思いました。
あとは、男爵の「あなたが呼吸する空気を呼吸するためです」のあとのスーハー、が増えたのかな。ホントにチャーミングですよね。もちろん動揺をごまかす場つなぎの芝居としての仕草なんだけれど、すごくいいと思いました。珠城さん自身もお茶会で「笑うところです、笑ってください」と笑って言っていましたが、このユーモラスさにさざ波のように客席に笑いが広がるのが気持ちよかったです。
というかこの作品は今現在においてもなおややお洒落すぎていると私は思っていて、この場面に来て主役ふたりの台詞がきちんと交わされる芝居らしい芝居になるまでは、パラパラした歌と群像劇の展開になんの話か追えなくて退屈しかける観客が多いように感じるので、この場面に入ると安心するんですよね。そのつかみとしてすごく効いていると思いました。
本当にお洒落でスタイリッシュで、24年前にこれを宝塚歌劇でやろうとしたことがすごいし、今もなお素晴らしい作品だし今後も再演に耐えられる作品だと思いました。死のボレロを男爵とエリザヴェッタが躍ることやラストに再度幕が上がって男爵が銀橋を渡り、みんながハケて空になった本舞台に戻ってきてエリザヴェッタと踊る流れなどは今回のバージョンのみのものなのでしょうが、そういう部分も素晴らしい。いいお披露目公演でした、堪能しました。
珠城さんは、欲を言えば男爵を演じるにはまだ若いというか、もう一声、ヤクザな崩れた色気が欲しかったところではありますが、チンピラに堕落しきれない真面目さや芯のところでの誠実さが特にエリザヴェッタとの恋に落ちてからに効いてくるので、やはり男爵役でよかったと思います。立派な主役でした。
でも大劇場初日とかホント、例えばエリックに奥さんの安産を安請け合いする感じのテキトーさとか全然出てなかったもんなー…でも後半ぐっと良くなりました、成長しているのです暴騰しているのです!(笑)
あとは歌だなー、「♪欲しいのは」の「は」が半音下がるのはホント聞いていてつらかったので、がんばっていただきたいものです。
ちゃぴはもう圧巻で素晴らしい。でも宝塚歌劇の娘役を逸脱しているとも私は思いません。きちんと演技で「39歳と39か月」の女を演じてみせていて、だからこそ恋に落ちて「女の子に戻る」姿が愛らしくて泣かされたのです。でも彼女はこういうことをもうずっと繰り返してきたのかもしれませんね…
ウィット(光月るう)に言う「あんたのために踊るわ!」のユーモアというかポーズも含めてむしろギャグ、というのが大劇場初日では全然出ていなかったと思うのですが、東京ではチケットが完売と聞いて俄然機嫌が良くなって、でもあくまで不承不承の振りをする…という流れがくっきり出て良くなったと思いました。
きっと彼女はけっこうお茶目でチャーミングで芸術家らしい芸術家、なんですよね。ウィットにはちゃんとした妻子がいるのかもしれないけれど、例えば今後の彼女はラファエラ(朝美絢、暁千星の役替わり)のものになることはやはりありえなくて、むしろウィットと結婚したりする形でまとまったりするんじゃないのかしら…とか思いました。彼もまた、単なるビジネス、単なるマネージャーとしてだけでない愛情を、エリザヴェッタに対して持っていたに違いないのですからね…
みやちゃんも、歌はやっぱりもうひと押し欲しかったかな。まあカナメさんと比べるのも酷なんですけれどね。でもそれ以外は本当に素晴らしいオットーでした。優しい、温かい、いじましい。ビギナーを同伴するとみんながみんな彼の幸せを祈るのが印象的でした。私は、フラムシェンの産む赤ん坊の顔を見るどころか、パリに向かう列車の中でこときれる彼しか想像しないというのに(^^;)。
ラファエラはあーさの方がニンだったかな、ありちゃんも健闘していたけれどちょっと役をつかめていない感じに見えました。ただそれで言うと新公のれんこんがベストだった気がしたかなー…
エリックはありちゃんの方が良くて、それは歌が良かったからです。ホントに上手くなりましたよねー。ラストの大曲はあーさはつらかったんだよな…
そしてフラムシェンは私は意外やくらげちゃんの方が好きで、これももっと言えば新公の結愛かれんちゃんの方が良かった。これは踊れる順でもありました。ヨシコのフラムシェンは「100パーセント理解しました」の前にちゃんと間を取って、しっかり言っていたのに対し、今回のフラムシェンは食い気味に言っていて要するに理解していないわけで、それはどうやら生田先生の演出によるものだったらしいのですが、それでもくらげちゃんの役作りにはまだクレバーさとか計算高さが見えたんですよね。あと立ち方がいちいちわざとらしかったのもとてもよかった。フラムシェンはそういう、いつスカウトされてもいいように自分を飾っている女だったことが表れていたからです。だから買い手が現れたし彼女自身も納得して売った、土壇場でビビったにしても…というふうに見えたのです。でもわかばはあまりに無防備で考えなしの役作りをしているように見えて、結果的にのちの展開が痛々しく見えすぎて私は不快に感じたのでした。
くらげちゃんの方が背が高くてスカートが短く見えて、やたらパンチラするのもポイント高かったです(笑)。そしてかれんちゃんはホントちょっと下品ギリギリくらいに色気があったなあ、そしてまだ下級生すぎて怖いもの知らずなんだろうけれどほんとに舞台度胸を感じたなあ。あのタレ目は識別できるようになるとホントに目立っていてロケットなんかもガン見でした、期待大!
みつるプライジング(華形ひかる)は専科としてきっちりいい仕事をしていた印象でした。宝塚版ではソロもカットされているし、細かい設定は省略されていてただのスケベおやじになっちゃっているんだけれど、まあ仕方がないですよね。
ドクター(夏美よう)も実は新公がよかったなあ…
あとは支配人(輝月ゆうま)のまゆぽんの慇懃無礼さ、良かったです。原作小説だと伯爵の設定なんですよね、それが労働者階級に転じている屈託を、ちゃんと感じさせました。
それからなんといってもとしちゃん運転手(宇月颯)ね! 素晴らしかったですね!! 男爵の部屋に勝手に入って長椅子に寝そべって銃の手入れ、たまりませんでしたよね…!!!
ボーイではれんこん、ヤス、あちくんをガン見。電話交換手ではさくさくをガン見。
二階から観たときの群舞やフォーメーション、照明の効果も本当に素晴らしかったです。いい作品でした、改めて新生月組お披露目、おめでとうございました。
あ、新公についてはツイッターでつぶやいてしまって気がすんじゃっているのでちょっとだけ。るねっこは大劇場の方が男爵っぽく演じられている気がしました。珠城さんとはまた違ったノーブルさがあってよかったんだけれど、東京ではエリザヴェッタと恋に落ちて以降が特にただの好青年になってしまって見えた気がしました。
くらげちゃんは達者でした。あとおだちんがホント上手い歌もいい舞台度胸がある大物感あるすごい! エリックのはるくんも華があって沼の予感。
総じてもうひとつの役替わり公演を観た気になるくらい、レベルの高い新公でした。
モン・パリ誕生90周年レビューロマンは作・演出/稲葉太地。起用頻度が高くなっているのが心配ですが、とてもとてもいいレビューでした。オーソドックスでクラシカルですが、珠城さんの持ち味に合っていたと思います。楽しかったです。
白馬の王子は鬘より何より、銀橋にずっと珠城さんがいることに動揺しましたよ大劇場初日…そそくさと渡ってハケなくていいんだ、トップスターってこういうことなんだ…!と感動しました。ひとりだけ全部の髪が白いちゃびが可愛かったなー!
そのちゃぴのニューヨークは拍手が入るタイミングが東京から図られていてよかったよかった。『CRAZY FOR YOU』が大好きなのでたまりませんこの場面。ゆりちゃんもあーさも色気が素晴らしい!
メキシコのいい男たち勢揃いでのダンス対決もベタけど素晴らしい。としちゃんにピンスポってのも素晴らしい。
ブラジルのカポイエラも素晴らしい、サンバのとんちき衣装も素晴らしい。トップスターはこうでなくっちゃ! そしてちゃぴのステップが素晴らしいのだがさち花の美脚をガン見してしまう私なのでした…
からのシルクロードはそのさち花さまとまゆぽんのカゲソロが本当に神! からの飛翔も本当に素晴らしいです。まさか月組でこんなにもきれいなトリデンテ場面、三角形隊形を観られるなんて…と感動しました。
全体にみつるを歌手として起用しているのは謎すぎましたが、ロケットはすんごい力抜かずに踊るあちを観ているうちに終わり、からの黒燕尾に白い羽扇の娘役たちによる「モン・パリ」ってのがもう尊すぎて感涙。すごーくゴージャスですよね。まんちゅーピックアップも素晴らしすぎました。
そして組カラーのドレスを着たちゃぴが下りてきて歌う…美しすぎました。リフトも軽々、愛に満ち溢れていて、視線がしっかり合って。
さらにパレードに、としちゃんやゆりちゃんをひとり降りさせる気遣いたるや…! うちでもやってくれていいんだよ頼むね稲葉くん!?と念じましたよね。
というわけで大満足のレビューなのでした。
なんちゃって世界巡りだと思っているので、どういう航路なんだとか各国の文化の扱いはこれでいいのかとかは私は気になりませんでした。楽しく観てしまい、いつもいつもあっという間だった…と幸せに帰れる公演でした。
いい組に仕上がっていくことをさらにさらに期待しています!
東京宝塚劇場、2月23日18時半、28日18時半、3月9日18時半(新人公演)、15日18時半、16日18時半。
1928年、ベルリンにあるグランドホテル。世界に名だたるこの高級ホテルには、それぞれの人生を背負った人々が今日も回転扉を通ってやって来る。フェリックス・アマデウス・ベンヴェヌード・フォン・ガイゲルン男爵(珠城りょう)は思うまま、望むままに生きることに情熱を傾ける、美しく快活で魅力的な青年貴族。一見優雅な長期滞在客だが、実は宿泊費を滞納し続けるほど多額の借金を抱えている。エリザヴェッタ・グルーシンスカヤ(愛希れいか)は世界的な名声を得ているプリマ・バレリーナ。しかし今では世間も彼女を忘れつつあり、彼女自身も踊ることへの情熱と自信を失いかけている。引退興行の途上、このホテルにやってきた。オットー・クリンゲライン(美弥るりか)は不治の病に冒され、最後の日々をホテルで過ごすためにやってきたしがない簿記係…そして従業員たち、それぞの人生が交錯する…
脚本/ルーサー・デイヴィス、作曲・作詞/ロバート・ライト、ジョージ・フォレスト、追加作曲・作詞/モーリー・イェストン、翻訳/小田島雄志、訳詞/岩谷時子、オリジナル演出・振付・特別監修/トミー・チューン、演出/岡田敬二、生田大和。1989念ブロードウェイ初演、93年に月組で初演されたミュージカルの再演。新月組トップスター珠城りょうお披露目本公演。
大劇場初日の感想はこちら。
東京公演で台詞がいくつか足されていましたね。まずフラムシェン(早乙女わかば、海乃美月の役替わり)が生理について「遅くなる」ではなく「遅れている」と言うようになったこと、これは正解。それだけで女なら誰でもなんのことかわかるものなので「来ないのよ、アレが」は蛇足かもしれないけれど、この時点で彼女が妊娠しているかもしれないということは全観客にわからせておいた方がいいことなので、これはいい改変だったと言えるでしょう。
逆にオットーの「私がユダヤ人だからですか?」は余計だったかな…この時代のこの社会で、差別されていたり抑圧されていたりするユダヤ人なら、ましてオットーのような性格の人なら、こんなことは実際にはまず言わないと思うのですよね。むしろ彼の服装をもっと貧相で薄汚れたものにするべきだったのです、宝塚歌劇ではなかなか難しいことかもしれないけれど。浮浪者みたいな不潔さじゃなくて、古びてくたびれていて体に合っていない、という記号が必要なんですけれど、それが足りなかったのだと思います。
彼は普段からつましい暮らしをしていて、けれど余命いくばくもないことを知って全財産はたいて最後の贅沢をしにホテルに泊まりに来た男です。病気で痩せてしまって以前の服が体に合わなくなっている、そして質の悪いくたびれた服をずっとずっと着ている庶民です。高級ホテルの格式に合わない客であり、正規の宿泊料金を払えなさそうな客だと思われたからこそ、支配人は部屋がないという嘘を吐くのです。それで十分なはずなのです。きちんと閉じられていない鞄というのは記号としてはむしろ微妙だと私は思います。死にかけている男が何をそんなに持とうというのでしょう?
のちに男爵が彼に仕立て屋を紹介しようと言いますし、オットー自身もフラムシェンと踊ることになるときは服の埃をはたいたりしていますが、穴が開いていたり継ぎが当たっていたりするのはさすがにオーバーなんだろうし、くたびれた貧相な服装、ってのをスターにさせることが宝塚歌劇では難しいんだな、と痛感しました。でもやっちゃってもいいと思うんですよね、それでもみやちゃんはスターだし美しさは隠せないんですからね。せっかくしょぼくれたいい芝居をしているんだから、フォローするのはそこじゃなかったと思いました。
あとは、男爵の「あなたが呼吸する空気を呼吸するためです」のあとのスーハー、が増えたのかな。ホントにチャーミングですよね。もちろん動揺をごまかす場つなぎの芝居としての仕草なんだけれど、すごくいいと思いました。珠城さん自身もお茶会で「笑うところです、笑ってください」と笑って言っていましたが、このユーモラスさにさざ波のように客席に笑いが広がるのが気持ちよかったです。
というかこの作品は今現在においてもなおややお洒落すぎていると私は思っていて、この場面に来て主役ふたりの台詞がきちんと交わされる芝居らしい芝居になるまでは、パラパラした歌と群像劇の展開になんの話か追えなくて退屈しかける観客が多いように感じるので、この場面に入ると安心するんですよね。そのつかみとしてすごく効いていると思いました。
本当にお洒落でスタイリッシュで、24年前にこれを宝塚歌劇でやろうとしたことがすごいし、今もなお素晴らしい作品だし今後も再演に耐えられる作品だと思いました。死のボレロを男爵とエリザヴェッタが躍ることやラストに再度幕が上がって男爵が銀橋を渡り、みんながハケて空になった本舞台に戻ってきてエリザヴェッタと踊る流れなどは今回のバージョンのみのものなのでしょうが、そういう部分も素晴らしい。いいお披露目公演でした、堪能しました。
珠城さんは、欲を言えば男爵を演じるにはまだ若いというか、もう一声、ヤクザな崩れた色気が欲しかったところではありますが、チンピラに堕落しきれない真面目さや芯のところでの誠実さが特にエリザヴェッタとの恋に落ちてからに効いてくるので、やはり男爵役でよかったと思います。立派な主役でした。
でも大劇場初日とかホント、例えばエリックに奥さんの安産を安請け合いする感じのテキトーさとか全然出てなかったもんなー…でも後半ぐっと良くなりました、成長しているのです暴騰しているのです!(笑)
あとは歌だなー、「♪欲しいのは」の「は」が半音下がるのはホント聞いていてつらかったので、がんばっていただきたいものです。
ちゃぴはもう圧巻で素晴らしい。でも宝塚歌劇の娘役を逸脱しているとも私は思いません。きちんと演技で「39歳と39か月」の女を演じてみせていて、だからこそ恋に落ちて「女の子に戻る」姿が愛らしくて泣かされたのです。でも彼女はこういうことをもうずっと繰り返してきたのかもしれませんね…
ウィット(光月るう)に言う「あんたのために踊るわ!」のユーモアというかポーズも含めてむしろギャグ、というのが大劇場初日では全然出ていなかったと思うのですが、東京ではチケットが完売と聞いて俄然機嫌が良くなって、でもあくまで不承不承の振りをする…という流れがくっきり出て良くなったと思いました。
きっと彼女はけっこうお茶目でチャーミングで芸術家らしい芸術家、なんですよね。ウィットにはちゃんとした妻子がいるのかもしれないけれど、例えば今後の彼女はラファエラ(朝美絢、暁千星の役替わり)のものになることはやはりありえなくて、むしろウィットと結婚したりする形でまとまったりするんじゃないのかしら…とか思いました。彼もまた、単なるビジネス、単なるマネージャーとしてだけでない愛情を、エリザヴェッタに対して持っていたに違いないのですからね…
みやちゃんも、歌はやっぱりもうひと押し欲しかったかな。まあカナメさんと比べるのも酷なんですけれどね。でもそれ以外は本当に素晴らしいオットーでした。優しい、温かい、いじましい。ビギナーを同伴するとみんながみんな彼の幸せを祈るのが印象的でした。私は、フラムシェンの産む赤ん坊の顔を見るどころか、パリに向かう列車の中でこときれる彼しか想像しないというのに(^^;)。
ラファエラはあーさの方がニンだったかな、ありちゃんも健闘していたけれどちょっと役をつかめていない感じに見えました。ただそれで言うと新公のれんこんがベストだった気がしたかなー…
エリックはありちゃんの方が良くて、それは歌が良かったからです。ホントに上手くなりましたよねー。ラストの大曲はあーさはつらかったんだよな…
そしてフラムシェンは私は意外やくらげちゃんの方が好きで、これももっと言えば新公の結愛かれんちゃんの方が良かった。これは踊れる順でもありました。ヨシコのフラムシェンは「100パーセント理解しました」の前にちゃんと間を取って、しっかり言っていたのに対し、今回のフラムシェンは食い気味に言っていて要するに理解していないわけで、それはどうやら生田先生の演出によるものだったらしいのですが、それでもくらげちゃんの役作りにはまだクレバーさとか計算高さが見えたんですよね。あと立ち方がいちいちわざとらしかったのもとてもよかった。フラムシェンはそういう、いつスカウトされてもいいように自分を飾っている女だったことが表れていたからです。だから買い手が現れたし彼女自身も納得して売った、土壇場でビビったにしても…というふうに見えたのです。でもわかばはあまりに無防備で考えなしの役作りをしているように見えて、結果的にのちの展開が痛々しく見えすぎて私は不快に感じたのでした。
くらげちゃんの方が背が高くてスカートが短く見えて、やたらパンチラするのもポイント高かったです(笑)。そしてかれんちゃんはホントちょっと下品ギリギリくらいに色気があったなあ、そしてまだ下級生すぎて怖いもの知らずなんだろうけれどほんとに舞台度胸を感じたなあ。あのタレ目は識別できるようになるとホントに目立っていてロケットなんかもガン見でした、期待大!
みつるプライジング(華形ひかる)は専科としてきっちりいい仕事をしていた印象でした。宝塚版ではソロもカットされているし、細かい設定は省略されていてただのスケベおやじになっちゃっているんだけれど、まあ仕方がないですよね。
ドクター(夏美よう)も実は新公がよかったなあ…
あとは支配人(輝月ゆうま)のまゆぽんの慇懃無礼さ、良かったです。原作小説だと伯爵の設定なんですよね、それが労働者階級に転じている屈託を、ちゃんと感じさせました。
それからなんといってもとしちゃん運転手(宇月颯)ね! 素晴らしかったですね!! 男爵の部屋に勝手に入って長椅子に寝そべって銃の手入れ、たまりませんでしたよね…!!!
ボーイではれんこん、ヤス、あちくんをガン見。電話交換手ではさくさくをガン見。
二階から観たときの群舞やフォーメーション、照明の効果も本当に素晴らしかったです。いい作品でした、改めて新生月組お披露目、おめでとうございました。
あ、新公についてはツイッターでつぶやいてしまって気がすんじゃっているのでちょっとだけ。るねっこは大劇場の方が男爵っぽく演じられている気がしました。珠城さんとはまた違ったノーブルさがあってよかったんだけれど、東京ではエリザヴェッタと恋に落ちて以降が特にただの好青年になってしまって見えた気がしました。
くらげちゃんは達者でした。あとおだちんがホント上手い歌もいい舞台度胸がある大物感あるすごい! エリックのはるくんも華があって沼の予感。
総じてもうひとつの役替わり公演を観た気になるくらい、レベルの高い新公でした。
モン・パリ誕生90周年レビューロマンは作・演出/稲葉太地。起用頻度が高くなっているのが心配ですが、とてもとてもいいレビューでした。オーソドックスでクラシカルですが、珠城さんの持ち味に合っていたと思います。楽しかったです。
白馬の王子は鬘より何より、銀橋にずっと珠城さんがいることに動揺しましたよ大劇場初日…そそくさと渡ってハケなくていいんだ、トップスターってこういうことなんだ…!と感動しました。ひとりだけ全部の髪が白いちゃびが可愛かったなー!
そのちゃぴのニューヨークは拍手が入るタイミングが東京から図られていてよかったよかった。『CRAZY FOR YOU』が大好きなのでたまりませんこの場面。ゆりちゃんもあーさも色気が素晴らしい!
メキシコのいい男たち勢揃いでのダンス対決もベタけど素晴らしい。としちゃんにピンスポってのも素晴らしい。
ブラジルのカポイエラも素晴らしい、サンバのとんちき衣装も素晴らしい。トップスターはこうでなくっちゃ! そしてちゃぴのステップが素晴らしいのだがさち花の美脚をガン見してしまう私なのでした…
からのシルクロードはそのさち花さまとまゆぽんのカゲソロが本当に神! からの飛翔も本当に素晴らしいです。まさか月組でこんなにもきれいなトリデンテ場面、三角形隊形を観られるなんて…と感動しました。
全体にみつるを歌手として起用しているのは謎すぎましたが、ロケットはすんごい力抜かずに踊るあちを観ているうちに終わり、からの黒燕尾に白い羽扇の娘役たちによる「モン・パリ」ってのがもう尊すぎて感涙。すごーくゴージャスですよね。まんちゅーピックアップも素晴らしすぎました。
そして組カラーのドレスを着たちゃぴが下りてきて歌う…美しすぎました。リフトも軽々、愛に満ち溢れていて、視線がしっかり合って。
さらにパレードに、としちゃんやゆりちゃんをひとり降りさせる気遣いたるや…! うちでもやってくれていいんだよ頼むね稲葉くん!?と念じましたよね。
というわけで大満足のレビューなのでした。
なんちゃって世界巡りだと思っているので、どういう航路なんだとか各国の文化の扱いはこれでいいのかとかは私は気になりませんでした。楽しく観てしまい、いつもいつもあっという間だった…と幸せに帰れる公演でした。
いい組に仕上がっていくことをさらにさらに期待しています!