駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

原田マハ『本日は、お日柄もよく』(徳間文庫)

2017年03月12日 | 乱読記/書名は行
 OL二ノ宮こと葉は想いを寄せていた幼なじみの結婚式に最悪の気分で出席していた。ところがその結婚式で、涙があふれるほど感動的なスピーチに出会う。それは伝説のスピーチライター久遠久美の祝辞だった。空気を一変させる言葉に魅せられてしまったこと葉は、すぐさま久美に弟子入りするが…目頭が熱くなるお仕事小説。

 何作か読んでいる作家なのですが、私には当たり外れが大きく感じられ、またこの作品に関しては何故か、結婚式にまつわる恋愛ものの連作短編集だと勝手に思い込んでいて、ずっと手を束ねていました。でも好評は聞いていましたし、ドラマ化が決まって文庫になったようなので、やっと手に取りました。
 結婚式小説ではありませんでした。スピーチ小説、演説小説でした。そういう方向の「お仕事もの」だったのですね…
 私は高校時代にディベートにちょっと興味を持ったことがあって、何かのきっかけがもうちょっとあれば仕事としてそういう方向に進むのもアリだったのかもしれない、とかちょっと思っているのです。そもそも言葉というものに興味があったし、当時書かれる言葉よりむしろ「語られる言葉」に強く関心を持っていたんですね。私は子供のときから能弁で、というか手より口が早いタイプで、みんなを口で指示して仕切って自分は何もせず胡坐かいてグループを統率しているような子供でした。もう少し成長するとそんなサル山のボスみたいなことはしていられなくなるわけで、もっと個人としてきちんと発言したりそれこそ討論になったりとかはそれこそ委員会とか生徒会レベルでも出てくる事態なわけですが、言葉が拙すぎて議論が成立しなかったり伝えるべきことが上手く伝えられなかったり、というような場面を見てきて、なんかもっとうまくやれる方法があるはずなのに…と思っていたりしたのでした。
 国会の答弁なんかもしかりですよね。海外ではもっと演説やスピーチが重要視されているのに、日本では弁が立つというのは口ばっかりで中身がないように取られることが多いようで、でもそういうことも不満でした。言葉だけで中身や実行が伴わないのはもちろんダメだけれど、でもまず言葉でだけでもつかめるもの、伝えられるものがあるだろう、とずっと思っていました。
 日本ではこういうスピーチライターやイメージ戦略、ブランディングの仕事はまだまだ浸透していないのでしょうかね。私はとても大事なことなんだと思うけれどなあ。そういう部分を扱った、まあ全体としてはややぬるく、予定調和な話なんだけれど、うるうるしながら読みました。映像化に向いている作品だと思います、楽しみです。

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劇団メリーゴーランド『不埒な花は誘惑する』

2017年03月12日 | 観劇記/タイトルは行
 神楽坂THE GLEE,2017年3月11日20時(初日)。

 19世紀なかばのイギリス南西部。片田舎にある植物学者ブライアン・ラングフォード(斎桐真)の研究小屋に怪しげな男がやってきた。男はアメリカの実業家ジャック・レミントン(華波蒼)で、学者の研究するある花が欲しいと言う。そこに秘密警察を名乗る謎の女クレア・アイビー(羽良悠里)が飛び込んできて…三人の抱える秘密、そして思いもかけない真実とは?
 脚本・演出/平野華子、俵ゆり、作曲/内海治夫、振付/俵ゆり、平野華子。全1幕のミュージカル・コメディ、フィナーレ付き。

 前回公演の感想はこちら
 密室縛りの特別公演は前回までがふたり芝居、今回は三人芝居。ふたり芝居だといろいろあってもある種のラブストーリーに帰結する気がしますが、三人となると一気に話が多彩になって、「二対一、あるいは一対二、あるいは一対一対一、というふうに目まぐるしく変わる関係性」を十分に楽しめました。設定からして当初は『愛短』か?とか思いながら観ていたのですが、その後も二転三転意外や意外、様々なモチーフを取り込みつつもユーモラスな台詞回しとキャラクターのドタバタで見せる魅せる。毎回本当に感心します。
 しかしクレアのせっかくの「あなたのことが好きだったのよ!」みたいな告白はスルーというか未回収のままだった気がしますが、いいのかしら…(笑)まあジャックは大富豪ってこともあるんでしょうけれど女の子に囲まれてモテモテなプレイボーイなようなので、クレアももうちょっと考え直した方がいいのかもしれません。天才だけどオタクで変人、でも今や立派ないい男に育ったひよこ豆ちゃんのブライアンの方がいいかもしれないしね…?(笑)
 と、三角関係の夢が見られるんだからやはり三人キャストがいると世界は広がります。桐真くんの加入は大きいですね。舞台度胸もありそうですしとてもチャーミングな役者さんだとお見受けしました。本公演も楽しみです。


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