駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇花組『仮面のロマネスク/EXCITER!!2017』

2017年03月23日 | 観劇記/タイトルか行
 梅田芸術劇場、2017年3月19日16時半。

 1830年、ナポレオン失脚後に再び王政が復活したフランス・パリ。しばしの安逸を貪る貴族たちが作り上げる社交界に、ひときわ注目を集める美貌の貴公子がいた。ジャン・ピエール・ヴァルモン子爵(明日海りお)、類まれなる才覚で零落した家名を再興した青年貴族である。婦人たちとの艶聞が絶えないヴァルモンだったが、かつての恋人メルトゥイユ侯爵夫人(仙名彩世)だけは特別な存在だった。若くして未亡人となったメルトゥイユは高嶺の花として一目置かれる才媛であり、ヴァルモンと唯一対等に渡り合える女性だったが…
 脚本/柴田侑宏、演出/中村暁、作曲・編曲/寺田瀧雄、吉田優子、振付/名倉加代子。1997年雪組で初演、2012年宙組で再演、2016年花組で三演されたラクロ『危険な関係』を原作とするミュージカル。花組新トップ娘役・仙名彩世のプレお披露目公演。

 前回の全国ツアー版の感想はこちら
 演目発表時には正直「また!?」とは思いましたけれどね…ただでさえ再演ものは比べて観られてしまうのに、同じ組同じ主役近い時期の上演と損すぎる気がしました。まあ比べて観てしまう私が悪いのだとは思いますが。
 ヒロインが変わる、というのはもちろん大きいことだとは思いますが、トゥールベルがよかっただけにねえ…という心配もあり…
 で、まずプログラムを見たときに、私は感心しなかったんですね。単純に、地味だな、と思いました。メルトゥイユは「あなたはおっとりしているから」と言われるようなカムフラージュ技を発揮している人ではありますが、それでもこぼれ出てしまう艶やかさ、色気、美貌があるべきキャラクターなんだと思うんですよね。ゆきちゃんはやればもっと派手に作れる人だと思うだけに、残念でした。まだ遠慮があるのかなあ? でも相手役であるみりおがかなりデコラティブに扮装しているだけに、バランスが悪いなあと感じてしまったんですよね…
 なので舞台でもやっぱりそう見えました。おちついているとか老けて見える、というよりはひたすらに地味…いろいろ考えていそうな奥深さは出せていたと思うのですが、そもそも難しいヒロインでもあり、私は違和感を持ったままで芝居に熱中できなかったのでした。
 でもこれからなんだろうなあ、やっぱり。場数がまだまだ足りていませんもんね。ポテンシャルは素晴らしいものがあるはずなので、がんばっていっていただきたいです。ふりきっちゃえ! 応援しています。

 逆に目が覚めるように感じたのはカレーちゃんのダンスニー(柚香光)でした! 初めて正しいダンスニーを観た気すら私はしました。脚本が描いている、作品が求めている、正しいダンスニーの造形。若くてハンサムでいい子でちょっとおバカ。これがいい感じにできていたのはイシちゃんでもみっちゃんでもキキちゃんでもなくカレーちゃんだったのでした。
 これはそれこそ今までの場数が効いていて、そういう経験を踏まえてからの久々の若い軽い役で、本人も楽しそうにやっているのがよくわかりましたし、けれどやりすぎてしまったりヘンにひねて作ったりしていなくて、とてもよかったと思いました。
 あと、劇的に歌唱が安定しましたよね!? これはショーでも驚愕しました。滑舌は前回公演が悪すぎた気がするので今回だけではどうとも判断できませんでしたが、この美貌とダンス力に歌の安定が加わったらかなり大きいのではないでしょうか…!? 期待しています。

 べーちゃんのトゥールベル法院長夫人(桜咲彩花)がまた、イメージが違っていたのですがこれはこれでおもしろかった…というのはあまりに好みを振りかざしすぎな感想なんでしょうね、すみません。でもべーちゃんが好きなんだ…!
 見た目的にどうしても丸顔だし健康的すぎる感じで、神経症的に禁欲的なつましい美女…とは遠いんだけれど、だからこそ、快楽が近いところにあること、あるいは近いところにある快楽の味を知っていそうな感じが出ていて、おもしろいよろめき具合だなと思ったのでした。

 またまた逆に「うーむ…」となったのがセシル(城妃美伶)かなあ…私はこの人の娘役力をすごく買っているのだけれど、今回はなんかこの役に求められる初々しさ、おぼこさが見えなかった気がしました。

 あとはマイティーもよかったなあ! いいアゾラン(水美舞斗)だなと感じました。主人を見習ってちゃんと色男になっているところがよかったです。
 あきらのジェルクール(瀬戸かずや)はさすが髭がヤラしくてよかったですね(ほめてます)。
 まひろくんのベルロッシュ(帆純まひろ)は顔が好みなので期待していたのですが、ごく短いソロがまだまだで、まあこれからかな、まだ沼ではないな、と判断(^^;)。
 前回と同じロベール(夕霧らい)のらいらいが前回同様「ヴィクトワール逃げてー!」と言いたくなる無駄な色気を発揮していて、観ていて楽しかったです(ほめてます)。
 つかさっち、うららちゃんに泉まいらくんとなった三人組がなかなかコミカルで印象的でした。
 あ、ブランシャール夫人(白姫あかり)もよかったなあ。あと華優希ちゃんホントめっかわでした。
 
 久々に観ると、補完が必要な難しい芝居だなあと改めて感じ、全ツ向きではないのではと改めて感じました。みりおのこじらせャラ系譜としてもギィがさらに上を行ってしまったのもあって、今さらヴァルモンってのもなあ…と思ってしまったということもあります。
 総じて、「うーむむむ…」と思いながら観てしまったのでした。残念、残念(この台詞は前回からなくなっているんだよ!)。


 スパークリング・ショーの作・演出は藤井大介。
 2009年の感想はこちら、2010年の感想はこちら。この頃はホントいいショーを作ったよねダイスケ…
 そんなに回数は観ていないんですけど、実況CDを愛聴しているので(初演版の方かな)ものすごく覚えていて、記憶がガンガン蘇ってきてそれはそれは楽しい観劇になりました。ショーだから比較する暇はないんだよね、「ああそうだった、わあ懐かしい楽しい!」みたいにウケているうちに終わってしまいました。楽しかったです。
 とっぱしはまぁ様だいもんPちゃんでやってたんじゃなかったっけ?とか、ああやっぱ大階段欲しいなザカザカ降りてくるのがよかったのになー、とか、トップ娘役センターの主題歌リプライズいいよね!とか。ああ、ここはえりたんのソロだったとか、まっつの美声だったとか…
 ここでもやっぱりゆきちゃんは私にはややパンチ不足に見えてしまったのですけれど、みりおが意外にも楽しそうに、激しくバチバチできていたので大満足。RIO-BOYもめっかわだったしね。マシュケナダも素晴らしかったです。
 新トップコンビに新しく振り付けたデュエダンは今ひとつ中途半端だった気が…? ま、邪馬台国に期待していますね。


 ガンガン進化して全国で花開いてくれるといいなと思っています。気をつけて行ってらっしゃーい!
(友会で当てて譲った最前列で、親友が死ぬかもしれんな…合掌)
 


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする