駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

碧野圭『書店ガール』(PHP文芸文庫)

2012年08月17日 | 乱読記/書名さ行
 吉祥寺にある書店のアラフォー副店長・理子ははねっかえりの部下・亜紀の扱いに手を焼いていた。一方の亜紀も、ダメ出しばかりする「頭の固い上司」の理子に猛反発。そんなある日、店にとんでもない危機が…書店を舞台にした人間ドラマを軽妙に描くお仕事エンターテインメント。

 『ブックストア・ウォーズ』を改題したそうですが、正解だったかも。でもどうせなら『書店ガールズ』の方がよかったかもしれません。
 最近、書店や出版社勤務ののち作家になり、その経験を生かしてバックステージもの…というかバックヤードものを書くのがはやっているようですが、これは「働く女子小説」としても秀逸でした。
 25歳ほども年が違おうが、結婚していようが独身だろうが、恋人がいようがいまいが、お金持ちだろうが庶民だろうが、仕事に真面目で熱心であれば、仕事もプライベートもいろいろもめるのが女性の人生というものです。
 そこを、実ににねちねちと的確に描いていておもしろかったですし、決して馴れ合わず、でもいい戦友にはなれるかもしれないふたりの女性の生き方を明るくクリアに描いていて、好感が持てました。
 もちろん男性だってそうなのかもしれないけれど、そんなことは知らん(^^;)。
 世はまだまだまだまだ男社会なんだから、女性を応援するのは当然なのです、ハイ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『大江戸緋鳥808』

2012年08月17日 | 観劇記/タイトルあ行
 明治座、2012年8月14日マチネ。

 花のお江戸の吉原廓。人々の羨望のまなざしの中を悠然と歩んでいくのは、誰にも揚げられないことで名を馳せる美貌の花魁・高尾太夫(大地真央)。絵師の参次(東幹久)は仲間と共に飲み歩きながら、太夫から目を離せないでいた。一方江戸八百八町では将軍のひとり娘・直姫(湖月わたる)が柄の悪い浪人を叩き伏せていた。その騒ぎにまぎれたスリを鮮やかに絡め取ったのはね謎の女・緋鳥(大地真央)だった…
 原作/石ノ森章太郎、演出/岡村俊一、脚本/渡辺和徳。全2幕。

 石ノ森章太郎の『くノ一捕物帖』を原作にしつつ、設定を借りただけでストーリーはオリジナルだとか。
 借りた設定とは、表は花魁で裏ではくノ一、将軍家のお世継ぎ騒動に活躍し…という部分でしょうか。
 多分に漫画チックでスピーディーかつイージーに進む舞台でしたが、派手でわかりやすく、大衆娯楽作とはこうでなくっちゃという感じで、意外に楽しく観てしまいました。

 真央さまは…ミュージカルで何度か見たことがあるはずなのですが、まあなんと顔の小さいこと!
 顔が小さかっただけで黒木瞳が相手役に抜擢されたという現役時代のエピソードもなるほど納得、でした。
 実は最前列観劇だったのですが、わりにナチュラルな演技をする俳優も多い周りの中で、ただひとり大芝居をしていて、たとえば誰かと会話している場面でも相手役を見ていない、もっとずっと先に視線を置いているんですね。その大劇場サイズの芝居っぷりに感心しました。
 じゃんじゃんお衣装を変えて目を楽しませてくれますし、その分裏では早変わりが大変なんだろうし、大女優さまだなあ、と感動しました。

 ワタルは凛々しかったよ!
 将軍家のひとり娘で、男装して袴姿で剣の腕も立つ姫君。ぴったり!
 フィナーレは袴で歌うより着流しかいっそ黒燕尾でガンガン踊ってほしかったけれどね!
 突然現れたご落胤の「兄上」が世を継ぐ気がない優男(市瀬秀和。ハンサムだったけどワタルより背が低かったよ…)で、それに歯噛みしたり怒ったり…
 自分が男に生まれていたら父上を支えられたのに、と悔しがるいじらしさ、泣かせました。
 なんか全体に、少年漫画のようでもあり少女漫画のようでもある世界観でした。そして常に女性キャラクターが元気でした(^^;)。

 直姫が兄妹のドラマを演じれば、緋鳥は父と娘の、また姉と妹のドラマを演じます。
 緋鳥の父親は忍者の大ボス大蛇(隆大介)ですが、半分テロリストみたいなところもあって、かつて無辜の民を大量に殺して恨まれている人物。
 緋鳥もその片棒を担がされましたが、父親が捕縛されたときに自分は逃げられて、罪滅ぼしのように正義の味方をやっている。しかし父親は娘を我が手に取り戻し、再び世に出ることを望んでいる。その妄執…
 そしてツチノコ(早乙女友貴。美少年だったなあ!)はもしかしたらちょっと精神薄弱な、その分純粋な少年で、狂気じみた武芸の強さと姉への思慕の情を持っている…
 このドラマも泣かせました。

 なのに男性キャラクターはほぼ何もしない(^^;)。
 ヒロインの相手役は一応参次なんだろうけど、絵師としても売れてないし仕事していない、色男らしくてお七(貴城けい。可愛かったよ!)はそこに惚れているらしいけれど全然説得力がない、ぼんくらの意気地なしでした…
 緋鳥の手下として支える定吉(山崎銀之丞)とちょっと三角関係めいたメロドラマを作りたかったんだろうけれど、まったく不発でした。
 お七は参次にめろめろなのに参次は緋鳥にひと目惚れ、緋鳥も一時は憎からず思うけれど、使命とともに去っていき、結局参次はお七とまとまってハッピーエンド…という流れなんだけれど、お七ホントそれでいいの?と不安でしたよ。
 武ばったポジションにいない、文人タイプの、一般庶民の芸術家、ということでは作者の投影でもあるんだろうけれど、それを活躍させられないところが、情けないよねえ男性作家…

 さすがの存在感を示したのが長屋の大家お藤役の未沙のえる。女優デビュー作ですがまったく危なげがなく舞台を占めていました。
 しかし舞台といいプログラムのお稽古場写真といい、真央さまと並ぶと同期のはずが母と娘イヤ祖母と孫娘ができそうですよ…真央さまどう直してんの…(あわわ)

 フィナーレは、とうせやるなら小林幸子ばりにもう一押し…それか群舞に羽扇を持たせるべきでした(^^;)。
 歌はかしちゃんが一等上手かった。アイドルソングふうに町娘姿で歌うのも最高に愛らしかったわ!
 しかしアフタートークショーで真央さまにおもろい替え歌を歌わせるために原曲を歌ったマヤさんの美声が素晴らしくてさあ…! カゲソロか、ワタルの場面で歌わせてワタルには躍らせるべきだったわね!

 二幕でいきなり真央さまが歌う場面があって、「あれ? これってミュージカルだったんだ?」と激しく動揺させられましたが、それ以外はとにかく楽しい公演でした。
 博多座ほどじゃないけど売店が充実しているのも楽しいし、いい劇場ですよね。140周年、おめでとうございます。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする