駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『アイ・ガット・マーマン』

2012年01月19日 | 観劇記/タイトルあ行
 シアタークリエ、2012年1月18日マチネ。

 ミュージカルの女王エセル・マーマンの一生を描く、クラブ・スタイルのミュージカル・ショー。
 作・演出・振付/宮本亜門、訳詞・歌唱指導/大場公之、音楽監督・編曲/深沢桂子。1987年に初演された宮本亜門のデビュー作。10年ぶりの再演。

 オリジナルキャスト(諏訪マリー、田中利花、中島啓江)、ファビュラスキャスト(浦嶋りんこ、シルビア・グラブ、エリアンナ)、ニューキャスト(樹里咲穂、西国原礼子、Miz)とありましたが、樹里ぴょん目当てでニューキャスト版を観ました。
 タイトルくらいしか知らなくて、「マーマン」なんて英単語知らないなあとか思っていたのですが、エセル・マーマンのことで、「I GOT RHYTHM」の歌詞「I got my man」をモジってあるのですね。
 私はエセル・マーマンも『ガール・クレイジー』や『エニシング・ゴーズ』のオリジナル主演女優である、ということの知識くらいしかなくて、歌も聴いたことがないという不勉強さでしたが、でも楽しかったです。
 キャスト3人、ピアニストふたり(ファビュラス、ニュー版では中條純子、大隅一菜)だけで、でもとってもお洒落な舞台で鮮やかなことこの上ない!
 25年前に日本でこんなお洒落でインパクトのあるオリジナル・ミュージカルができていたんですねえ。まあ楽曲はアリモノかもしれないけれど、編曲のワザはすごいものです。

 3人がエセルの生涯を歌い踊るというので、若いころ・バリバリのころ・晩年、とかに別れて演じ分けるのかと思っていたのですが、そうではなくて3人一緒に出てくるんですね。そしてほぼ出ずっぱり。正味90分の舞台ですが、こりゃ大変だ。でもとてもおもしろい趣向でした。
 3人はエセルになるのを争ったり、3人一緒にエセルになったり、誰かがライバルになったり夫になったり親になったりする。そして、プログラムに役者の生身が出てしまう作品、とあってなんのことかいなと思っていたのですが、3人はエセルを演じつつもエセルの生涯を解説する女優、でもあり、その部分ではしょっちゅう「樹里ぴょん」とか「レイチェル」とか呼び合っていて、素のキャラクターも生かして舞台が進行するんですね。それもおもしろい。
 10年ぶりの再演ということで歌詞が現代的に変更されている部分もあるようですし、他の版はまたそれぞれキャストに合わせた細かい改変がされているのではないかなあ。そういうところも楽しかったです。
 とりあえず樹里ちゃんは宝塚歌劇出身、元男役であること、関西人であることが活用されていました(^^)。「ショーほど素敵な商売はない」では背負い羽とシャンシャンまで出てきましたからねー!

 そして…いかに樹里ちゃんしか見ていなかったかというと、途中まで西国原さんとMizさんを混同していました私…というか間違えていました。
 樹里ちゃんの基本立ち位置は下手。一番背が高くて、スリットががっと入ってはいますがすとんとしたラインのピンクのワンピース(大きなお団子ヘアがチャーミングでした!)。
 基本的にセンターなのが、ちょうと背の高さが真ん中で、顔が濃くてちょっとむっちり目の人、スカートがふわりと広がった赤いドレス。
 上手に立つのが、一番背が低くてやたらと「マジ」とか言うヤンキーキャラ、スモーキーな黄色というかオリーブ色みたいなホルターネックのドレス。
 なので私はこの小さい人が西国原さんかと思っていたのですよ…SDN48だもんね、この中では若いんだよね、そしてアイドルってたいてい小さいよね…みたいな。
 ところがすみませんこれがMizさんでした。パンチあるシンガーなのですね。
 となるとセンターが西国原さん…失礼ながら濃すぎる…! 春にはSDN48も卒業だそうですが、そうだよ舞台女優さんになった方がいいよ、そらSDNもライブ主体だろうけどとにかくテレビアイドルには向かないよ…と思ってしまいましたすみません。でもこれが初舞台! 素晴らしい。
 オーディションをちゃんと通っただけあって、本当に3人とも達者でまったく危なげがなく、歌もダンスも客席いじりも鮮やかで素晴らしかったです。

 いろいろくるくるしながら3人で舞台は進みますが、終盤に大曲をひとりずつ歌うのもよかった。ここから衣装チェンジ(重ね着しただけだけど)あり。

 でも3人で歌うときもさすがとても良くて、ハモりも美しいんだけど、ハミングでコーラスをつけるのがゾクゾクするくらい素敵でした。

 楽しくて手拍子が打ちたくなるのですが、スローダウンしたりテンポチェンジしたときが気恥ずかしくて、あまりしませんでしたすみません…
 でも拍手は惜しみなくしてきたよ!
 宮本さんはプログラムで「今の時代には合わないのではないか」と語っていますが、格別ハードなテーマやメッセージがある作品ではないと私は思いましたし、エセルの一生はある意味で普通というか、普遍的なのではないかなーと思いました。楽曲が古くなっていることもないし(編曲や訳詞が上手いのかもしれませんが)、いいキャストを得て再演を繰り返していってもいいのにな、と思いました。
 ちなみに劇団四季のミュージカルでは、もちろん観ていないものもいくつかありますが、私は『クレイジー・フォーユー』が一番好き。なので縁がありますね。
 そして『アニーよ銃をとれ』は未見なのでした。観てみたい。そして『エニシング・ゴーズ』が久々にまた観たいなあ…
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宝塚歌劇雪組『Samourai』

2012年01月19日 | 観劇記/タイトルさ行
 日本青年館、2012年1月17日マチネ。

 武士の世が終焉を迎えようとしていた頃、薩摩藩出身の武士・前田正名(音月桂)は討幕運動に奔走する坂本龍馬(緒月遠麻)と親交を深めていた。龍馬は近年著しく発展を遂げているフランスへの洋行の夢を正名に語り、愛刀を預ける。やがて非業の死を遂げた龍馬の遺志を受け継ぐべく、正名はフランスに留学するが…
 原作/月島総記、脚本・演出/谷正純、作曲・編曲/吉崎憲治。

 手堅い、過不足なくできていた舞台だったのではないでしょうか。
 ラブがもう少し欲しかったけれどねー。でもマリー(舞羽美海)とは結局は結ばれなかったんだろうから(原作を未読なのですが、彼女は架空のキャラクターなのかな? なんにせよ正名は帰国して日本人と結婚したんですよね…?)、あまりやりすぎると薮蛇感があるのかな。
 あとは、どうしてもストーリーありきの物語になってしまっていて、キャラクター造形がわりに単純に見えたのが残念だったかもしれません。そのあたりも、ファンならリピートして補完してしまうのでしょうから、十分なのかもしれませんが。
 でももうちょっと、お坊ちゃん育ちでまっすぐなことしか知らなかった正名を、酸いも甘いも噛み分けた豪放磊落な晴玄(早霧せいな)が変えていく感じとか、日本人を蔑視していてかたくなだったお嬢さまのマリーが変化していく感じとかを、具体的なエピソードを立ててもっと描きこめると良かったかな、とは思います。

 でも役者はすべてハマっていて、キャラクターのイメージを十分に体現してくれていたと思います。
 キムの安定感は本当にハンパない。きりやんほど歌・ダンス・演技の三拍子揃ったスター、みたいには言われない気がしますが、なんでもできる人ですよねホント。
 明るくさわやかな若武者っぷりがぴったりでした。
 ミミちゃんはさらに歌がしっかりしてきた感じで好感が持てました。レモンイエローのドレス、可愛かったなあ。
 だからこそもうちょっと出番を、ラブストーリー場面を作ってあげてほしかったけれどなあ。
 チギも生き生きと楽しそうにやっているのがなんとも言えずイイですね。ニジンスキーもバドもこれもアリなのは頼もしいことです。
 そして龍馬とオーギュスト・フルーランス隊長の二役のキタさん、これまた素晴らしい。どちらもしっかり務めていました。

 マリーの家の執事ノエル(奏乃はると)のニワニワがまたよかった。亀山社中での武士役からしてキラキラしていて目を引きましたが、ノエルになってからはぐっとシブく、しかしまた終盤が泣かせる泣かせる。芝居巧者だなあ。
 敵役のレオン・ガスタルディ少佐(大湖せしる)もよかったわー。久々に「売国奴」という言葉が正しく当てはまるキャラクターで、憎々しい役回りをあの白皙の美貌でやられたんじゃたまりませんよ観客は!
 オーギュストとレオンの確執ってなんかもっといろいろイロイロあったんじゃないですかねと妄想してしまうのは邪推ですかそうですか。ともあれ、なのでレオンはオーギュストに殺させてあげたかったかなーという気もしなくもなかったです。でもまあ、悪を成敗するのは主人公の役回りか。
 市民兵チプリアニ(香綾しずる)がまた泣かせました。ホントほとんど卑怯。
 アバンの新聞記者とガスパール(彩風咲奈。これも新聞記者かな? そして涼花リサ演じるブランシェの弟だからガスパールなのか…?)も、説明台詞をきちんとこなしていてよかったです。

 雪組が誇るお姉さま陣は、まず前田光子訳の麻樹ゆめみ。正名の息子に嫁いだ人でタカラジェンヌ、今回の演技指導に入っている立ともみの母・須磨磯子さんと同期生、とは奇縁ですよねえ。
 それはともかく、アバンで物語に観客を誘う力が素晴らしい。そして後半、パリ市民として出てきてからは、何をしているというわけでもないんだけれど、凛々しい気迫が漂ってきて、こうして戦ったパリジェンヌも多くいたのだろう、と思わせてくれました。
 「酒場の女将」なんて書かれ方が残念なブランシェは涼花リサ。今回開眼させられるくらい良かった! 杏奈さまとセットで使われることが多い人で今回もそうでしたが、全然色が違っていて…台詞はすごく少ないんだけれど、みんなと同じように銃を手に踊るだけでも、いつも眉間に皺が寄っていて、ああこの人は単純に高揚したりする人じゃないんだ、戦闘の苦しさ厳しさを知っていて、それでも参加することを選択した人なんだ…なんてことを思わせてくれました。
 対するモリエール座の女優レティシア役の花帆杏奈は男に貢いじゃうような女として描かれているようですが、その嫋々とした雰囲気がよく出ていて、これまたせつなくて魅せました。
 最初はマリーのお嬢さま仲間でちょっと軽薄で、のちに戦闘に参加してからは弱音吐かずに戦っていそうだったジャクリーヌ役の早花まこもよかったです。

 私は様式美好きなので、たとえばアバンのあと、本筋の幕開きにまず正名が上手で歌ったのに呼応するように、パリに移った場面でまず紳士役のサッキーナが上手で歌う、みたいな作りが美しいと思いました。
 プロローグの祝獅子とフィナーレの黒燕尾もスター配置が揃っているようでしたし。
 そういえば、歌手をひとりに一本被りにせず、いろいろな生徒を歌わせているのもよかったです。
 アバンのアシリレラ(花瑛ちほ)やモン・パリ場面でのパリジャンたち、第2幕プロローグのパリジェンヌたちなどなど。歌える人が多いのはいいことです。

 『ダンクレ2』のお稽古が休みなのか、コムちゃんが観に来ていました。
 カーテンコールでキムが紹介し、「ポッとしちゃいました」と言っていたのが可愛かったです(^^)。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする