駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

三木笙子『人魚は空に還る』(創元推理文庫)

2012年01月20日 | 乱読記/書名な行
 富豪の夫人の元に売られていくことが決まった浅草の見世物小屋の人魚が、最後に望んだのは観覧車に乗ることだった。だが客車が頂上に着いたときね人魚は泡となって消えてしまい…!? 心優しき雑誌記者と超絶美形の天才絵師、ふたりの青年による帝都探偵絵図シリーズ第一弾。

 一風変わったホームズとワトソンが明治の世に織りなす探偵物語オムニバス。
 今のところ魅力的な女性キャラクターがいないので、どうしてもBL臭が漂うよね…
 高広が優しくて気弱で薄給の雑誌記者で、でも意外に武道に秀でていて、実は司法大臣の養子で、なんてのもよくできている。
 かたや、美形で売れっ子だけど偏屈で気難しい礼が、高広には懐いている、と。
 決してあからさまな描写はなく、むしろ淡々と話は進み、いつも小さな事件を解決しつつ、基本的には人情話とこの時代の風俗を楽しむ作りにはなっているのですが…文体に芸がないところがネックかなあ。
 まあでも映像化とかされちゃうと売れちゃうんだろうなあ…
 という読書感想でした。

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楊逸『獅子頭』(朝日新聞出版)

2012年01月20日 | 乱読記/書名さ行
 巨大な肉団子「獅子頭」が評判で、貧農の子・二順は日本の中華料理店へ。食・言葉・恋愛など中日文化差の狭間で中国人青年が送る波乱万丈の日々を描く成長小説。

 新聞小説ですが、なんの話なのか皆目わからず、イライラしながら読みました。
 次第に料理の話でも文化摩擦の話でもなく、ただ主人公の人生を淡々と描いている作品なのだな…とわかってはきましたが…
 私は小説にはテーマとかメッセージとかがあった方が好みなので、最後まで漠然としたまま終わるこの物語にはなんとも複雑な思いがしました…
 そりゃ実際の人生ってこんなものかもしれませんけれど。そして死ぬまで続くんだからどこかで切り上げるしかなかったのかもしれませんけれど。
 みんながみんな主体的に生きているわけはないし、主体的に生きていたって思うとおりにならないのが人生だということもわかりますが、しかしこの主人公はひどすぎる。
 田舎者だとかお人よしだとかいうレベルを超えているのでは? みんなこんなものだよとか、教育を受けていないんだからこんなものだよということなのかもしれませんが、主人公キャラクターとしての魅力にあまりにも欠けていませんか?
 そして帯には「成長小説」とか書かれていますが、彼は別に成長なんざしていないじゃないですか。何も変わっていない。ただ流されているだけ。
 周りも、そんな彼の優柔不断さに迷惑受けてばっかり、とは言いませんよ。ちゃっかり利用している部分もあると思いますし。
 でも、そういう全部含めて、別に何かがよくなっているとか変化しているとかいうことがない話なんですよね。じゃ、なんなの?って気がしてしまう…
 しいて言えば大事なことは「大事にしてくれる人を大事にすることだよ」みたいな台詞に集約されるのかもしれませんが、この主人公、それも別にできるようになっていませんもんね。
 自分を大事にしてくれている人って誰なのかわかっていないし、その人を大事にすることもできていない。ただ日々を送っているだけじゃん…
 そんな普通の、もしかしたら自分そのものみたいな人間の日常なんか、人はわざわざ小説で読みたいと思っていないと思うんだけどなあ…

 芥川賞作家ですが、初めて読みました。
 同じ時期に在学していたんだわと思うとなかなかに感慨深くはありますが…
 でもやっぱり日本語がネイティブじゃない。不思議ですね。こんなにきちんと書けているのに、間違いはまったくないのに、でも普通こういう言葉は選ばないよな、というのが散見される。
 でもそれと小説としてのあり方はまた別問題だからなあ…ううーむ。
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