映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

サスペリア(2018年)

2019-09-23 | 【さ】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv66229/

 

 以下、公式HPよりあらすじのコピペです(青字は筆者による加筆)。

=====ここから。 

 1977年、ベルリンを拠点とする世界的に有名な舞踊団<マルコス・ダンス・カンパニー>に入団するため、スージー・バニヨン(ダコタ・ジョンソン)は夢と希望を胸にアメリカからやってきた。

 初のオーディションでカリスマ振付師マダム・ブラン(ティルダ・スウィントン)の目に留まり、すぐに大事な演目のセンターに抜擢される。そんな中、マダム・ブラン直々のレッスンを続ける彼女のまわりで不可解な出来事が頻発、ダンサーが次々と失踪を遂げる。

 一方、心理療法士クレンペラー博士は、患者であった若きダンサーの行方を捜すうち、舞踊団の闇に近づいていく。やがて、舞踊団に隠された恐ろしい秘密が明らかになり、スージーの身にも危険が及んでいた――。

=====ここまで。

 1977年のダリオ・アルジェント監督によるホラー映画『サスペリア』のリメイク版。……といってもゼンゼン別物。

 

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 元祖『サスペリア』が公開された当時、ガンガンTVでCMが流されており、それで有名なのがあのキャッチコピー「決して一人で見ないでください」だった。あの当時、あの宣伝はかなり刺激的で、強烈なインパクトがあったから、アラフィフ世代以上は覚えている人も多いはず。

 かくいう私もその一人。当時のインパクトが強すぎで、大人になってビデオ化されてもあんまり見る気になれず、見たのは本作が公開されると聞いてから。で、見てみたら、そこには当たり前だがアルジェントの世界が広がっていて、ストーリー自体は正直言ってゼンゼン面白くなかったが、画的には非常に惹き付けられた。なるほど、これなら当時であれば世間が騒ぐのも当然だろう、、、と思った。

 本作については、公開前から話題になっていたけど、前評判で「まるで別物」と聞いていたし、難解だとも言われていたこともあって、オリジナルのファンでもないし劇場まで見に行く気にはならなかった。最近、DVDになっていたので、借りてみた。

 で、、、。ん~~~、アルジェントが本作を見て怒った、というのもちょっと分かる気がする。

 

◆アート系ホラー、、、か?

 本作の解釈についてはあちこちで書かれているので、ここでは感じたことをつらつらと思い付くまま書きます。

  見終わって真っ先に思ったことは、「果たして本作をホラー映画にしたかったのだろうか、この監督は……??」ってこと。オリジナルは一応ホラーで、そのリメイクなので、ホラーだと思って見たんだけれども、そもそもホラーのお約束(分かりやすい、尺は短め)を守る気など更々なさげな作りといい、エンドクレジットの後の意味深な映像といい、これはアート系映画であって、ホラーじゃねーだろ、、、と思ってしまった。

 もちろん、グロい映像は一杯出てくるんだけど、まぁ一応気持ち悪いけど全く怖くはないし、驚くような演出もないし、ホラーを期待しているとことごとく裏切られる作りになっている、、、と思う。

 思わせぶりな時事ニュース映像を挟んだり、オリジナルにはなかったクレンペラー博士という精神科医が出て来たり、ナゾがあちこちにばらまかれているんだけど、それが観客にとってはあまり面白い伏線になっていない。私も一度見た後、もう一度、気になるシーンをあちこち何度か見て、私なりに“こういうことか、、、?”と解釈したけれども、それだって、本当にそうなのかは分からない。

 多分、おおむね伏線は回収されているのだと思う。クレンペラー博士があそこまであのダンスカンパニーに固執したのはなぜか、というのも、終盤に、彼と亡き妻とのエピソードが出て来て、なるほど、、、となるし、そもそもスージーが最初から物怖じせずにあのカンパニーであのように振る舞えたのは、彼女自身が、、、、だからね、とか。大まかなことは私でも分かる。

 アート系で、よく分からないけどホラー、、、というと、グリーナウェイが思い浮かぶのだが、本作を見ていて、『ベイビー・オブ・マコン』がちょっと通じるモノがあるような、、、と思っていた。記憶が定かじゃないのが情けないが、あれは魔女でないが、ある種の邪教が舞台装置になっていて、その教えに背いた者たちを徹底的に殺戮するという終盤のグロの極みみたいなシーンが、本作の終盤のシーンとダブってしまったのである。あの映画を見たときの訳の分からなさと不快さが、本作でデジャヴだったのだ。本作の方が、アレに比べればまだしも意味が分かる、、、、とはいえ、見た目的にグチョグチョ系で生理的嫌悪感は上回るかもだけど。

 ……というわけで、ホラーってのは、もう少し分かりやすい方が良いと思うけど、監督がホラーだと思って撮ってないなら、しょーがないわね。分かりにくいと、怖さを感じる余裕がなくなる、というか。実際、本作は怖くはないしねぇ。でも、あの『サスペリア』のリメイクって言われりゃ、ホラーのつもりで見るよね、普通は。

 

◆漂うミソジニー

 以下、ネタバレです。

 でもさぁ。スージー自身が、いわゆる“ラスボス”であるのなら、マダム・ブランだって、そこそこの格なわけだから、スージーに対して何らかビビビと感じるものなんじゃないのかね? マダム・ブランのほかにも雑魚キャラの魔女がいらっしゃったのに。最後の最後まで誰一人見抜けないなんて、魔女も大したことないのね、、、なーんて。

 スージーは最初から魔女だったのか、、、というのもネット上では話題になっていたみたいだが、私は最初からだったと考えた方が面白いような気がする。全てお見通しだった、と。……でもそうすると、ちょっと辻褄が合わないところもあるんだが。

 本作は、監督が言うには、女性のための映画であり、女性解放の映画、、、という意図があるらしい。監督がそう言うなら、まぁ、そーなんでしょう。

 しかし、女の私が見て感じたのは、監督自身が持つ強烈な“ミソジニー”であります。監督がゲイだから、、、という先入観がないとは言わないが、『君の名前で僕を呼んで』と比べると、明らかにそう感じる。まぁ、この映画と比べて良いのか、、、という疑問もあるけれども。

 『君の名前~』は、男性と少年の恋愛を、まぁ、これでもかっていうくらい美しく描いていたわけよ。主役2人の男優も美しい2人を配し、ラブシーンももちろん、2人のシーンはどれもこれも全部色彩も含めて美しく撮っていた。が、本作では、終盤に出てくる魔女たちは皆グロテスクで美しさの対極にあるような描き方、なおかつアルジェント版の特徴だった美しい色彩はまるでなく、暗~~い単色系の画面ばかりで、極めつけは、本作でのキーになるダンスだ。およそ美しさからはほど遠い。コンテンポラリーダンスの特徴と言えばそうなのかも知れないが、アルジェント版のバレエスクールを敢えて、ダンスカンパニーに置き換えた意図も勘ぐりたくなる。

 魔女映画だって、アート映画だって、別にもっと美しく撮ることはできるはず(現にアルジェントは撮っている)だが、こういう作品にしたことに、私は、この監督の女性に対するイメージが現れていると思えて仕方がない。

 まぁ、クリエイターでゲイの人たちには、男尊女卑思想が根底にあることが多いのはよく知られた話だが、この監督がどういう思想の持ち主かは分からないけど、作品を見る限り、彼もご多分に漏れず、、、という感じがするなぁ、正直言って。『君の名前~』に出てくる女性の描き方もかなり杜撰だったしね(脚本はアイヴォリー氏ですが)。

 見る人によっては、監督が意図しないものを見出してしまうこともあるので、創造ってなかなか難しいもんですね。

 

◆その他もろもろ

 個人的に、私はティルダ・スウィントンという女優さんがあんまし好きじゃないので、それも本作をナナメに見てしまった遠因かも。でも、見終わってから、あのクレンペラー博士も彼女が演じていたのだと知って、さすがに驚いた。特殊メイクの技術ってスゴいのね、、、。

 そう言われてみれば、確かに博士の声は男性にしては高めだし、身体の線も細い。でも、言われなければ分からなかった、絶対に。

 あと、タイトルの『サスペリア』というのは、“Mother Suspiriorum”から来ているのだって。だから、“サスペリア”ではなく、“サスピリオルム”の“サスピリア”なのね、原題は。嘆きの母の名前だそう。この嘆きの母ってのが、最後の方で鍵になるのだが。

 前述で「驚くような演出もない」と書いたけど、1箇所だけ、ギョッとなるシーンがあった、そーいえば。突然なんでビックリするというか。……は?何で??って感じで、魔女たちの間の力関係に起因するものの様だけど、イマイチよく分からない。分からなくても、別に見ていて困らない。

 とにかく本作は、終盤に怒濤の謎解きとなるのだけれども、それでスッキリする、という訳でもありません。怖い映画を見たいのならば、本作を見てもあまり意味がないのでオススメしません。

 

 

 

 

 

 

当時のベルリンがあんなに血なまぐさかったとは知らなかった、、、。

 

 

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