映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

オネーギンの恋文(1999年)

2014-09-02 | 【お】



 9月号の文芸春秋を間違って買ってしまい(本当は季刊秋号を買う予定だったのに・・・。池上&佐藤の対談を読もうかと思って)、あんまし興味ない内容ばっかだなー、などと思いながらパラパラ見ていたら、いきなり「レイフ・ファインズ」の文字と、彼のすっかり老けた写真が目に入って、なんだなんだ、と思ってよく見ると「スターは楽し」という芝山幹郎氏のコラムでありました。vol.99とあるので、随分長い連載なんだと思うけど、初めて見たわ。まあ、分厚い冊子の、ほんの見開き2ページだから見過ごしちゃってたのかなぁ・・・。たまにしか買わないしね、文芸春秋。

 で、芝山氏、えらくレイフ・ファインズをホメていらっしゃいます。へぇー、なんか意外。『グランド・ブダペスト・ホテル』で、彼が新境地を開いたと非常にお喜びです。確かに新境地は私も同感だわ。良かったですねー、パチパチ。

 というわけで、レイフ・ファインズです。本作は、彼に尽きる映画なわけですが、まぁ、長年彼を見てきたけれども、やっぱしこういう、どーしよーもない男が実に似合いますね、この人は。ジェレミー・アイアンズと、「ザ・情けない男」を演じさせたら大ハマり、で双璧でしょう。

 オペラにもなっているくらい有名なお話なんで、ストーリーはともかく・・・。まあ、オネーギンがタチアナの思いを拒絶するってのは、非常によく分かります。若い男性、特に、オネーギンのような世の中斜に構えて見ているニヒルなヤツは、若いが故に分からないんですよね、失うととてつもなく痛手を負うもの=愛、ってのが。でも、歳を重ねて、世間が見えてくると、急に、失ったものの大きさが分かってくるんだけれども、すでに時遅しの場合が多く、本作でももちろん「遅すぎる」とタチアナに拒絶されます。哀れなり、オネーギン。

 ただ、再会したタチアナが、以前に増して美しくなっていたことと、何より「公爵夫人」になっていた、ってことが、オネーギンの喪失感に火をつけたのは間違いありません。タチアナが、以前よりやつれ、貧乏貴族か成金の妻になっていたら、オネーギンは若かりし日の自分の選択の正しさを再確認して終わりだったわけで。ここが、人生の皮肉ですねぇ。そう、女が、自分を振った男へ復讐したいのなら、今の100倍美しくなること、そして現代女性ならば玉の輿婚なんぞでなく、確固としたものを身に着けていること、これに尽きます。

 象徴的なシーンがあります。若いオネーギンは、タチアナからの情熱ほとばしる恋文をいったん暖炉に投げ入れるんだけど、思い直して取り出し、丁寧にたたみます。一方、2人が再会後、オネーギンからの哀切極まる恋文を受け取ったタチアナは、ビリビリと破いて暖炉に放り込み、手紙は灰となります。一方のオネーギンは焦げ付いたタチアナからの手紙を後生大事に胸にしまっているのです、ずーっと。嗚呼、オネーギン!!

 でも、私はタチアナを拒絶した若いオネーギンを「大馬鹿野郎」の一言で嘲笑う気にはなれないのです。男に限らず、女だって、若い頃は、若さゆえの怖いもの知らずな傲慢さを持っています。一人でも生きていける、なーんて思っちゃう。でもでも、やはり一人で生きる、ってのは言葉で言うほど簡単な、いや、楽なものではないのです。パートナーがいたらいたで苦しみは生じるけれども、一人で生きることの寂寥感は、歳を重ねてみないと分からないのではないですかね。そうして、傲慢だった自分が自ら手放したものの大きさに押しつぶされる、、、。まあ、恋愛に限らずですが、こういうことは生きていれば誰にでも経験があるわけで、オネーギン、君だけじゃないよ、愚かなのは! と言ってあげたいです。

 ところで、芝山氏のコラムでは、レイフ・ファインズのDVDベスト3として『シンドラーのリスト』『クイズ・ショウ』『ことの終わり』が挙げられているんだが、この中で、同意できるのは『クイズ・ショウ』だけかなぁ、私は。恋愛ものじゃないのも結構イイんです、彼。

オネーギン、君だけじゃないよ、愚かなのは!

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ブロンテ姉妹(1979年) | トップ | バンテージ・ポイント(2008年) »

コメントを投稿

【お】」カテゴリの最新記事