映画 ご(誤)鑑賞日記

映画は楽し♪ 何をどう見ようと見る人の自由だ! 愛あるご鑑賞日記です。

アンナ・カレーニナ ヴロンスキーの物語(2017年)

2020-01-19 | 【あ】

作品情報⇒https://movie.walkerplus.com/mv65599/


以下、上記リンクよりあらすじのコピペです。

=====ここから。

 日露戦争が勃発した1904年の満州。軍医として戦地に赴いたセルゲイ・カレーニン(キリール・グレベンシチコフ)は、患者として運ばれてきたアレクセイ・ヴロンスキー(マクシム・マトヴェーエフ)と出会う。

 この男こそ、幼い自分と父から母を奪い、さらには母が自ら命を絶つ原因となった人物だった。一時は殺意を抱くほど憎んだ相手だが、年齢を重ねた今、母の真実を知りたいと願うセルゲイ。その問いに答え、ヴロンスキーは彼にとっての真実を語り始める。

 1872年の冬。母親を迎えるためにモスクワ駅を訪れたヴロンスキーは、政府高官アレクセイ・カレーニンの妻アンナ・カレーニナ(エリザヴェータ・ボヤルスカヤ)と出会う。後日、舞踏会で再会したアンナとヴロンスキーは、急速に親密になってゆく。

 2人の関係はたちまち世間の噂となり、アンナの夫カレーニン伯爵の耳にも届く。やがて、夫からヴロンスキーとの関係を問い詰められたアンナは、彼に対する愛を告白。さらに、アンナはヴロンスキーとの子を身籠っていた。

 だが、世間体を気にするカレーニン伯爵は離婚を認めなかった。そんなアンナの周りからは次々と友人たちが去り、ヴロンスキーと暮らすことのできないアンナには、嫉妬や猜疑心が芽生え始める。

 紆余曲折を経てヴロンスキーの子を出産したアンナは、ついにカレーニン伯爵と離婚。だが、夫が手放さなかった息子セルゲイ(マカール・ミハルキン)とは別れることに。娘のアーニャが生まれながらも、セルゲイと会えないことに苛立つアンナは、密かにセルゲイの誕生日にカレーニン伯爵の屋敷を訪問。再会した息子に、善良で立派な父を愛するよう泣きながら訴える。

 その一方で、罪悪感に苛まれたアンナは、ヴロンスキーとの間に生まれたアーニャを愛することができずにいた。ヴロンスキーは、そんなアンナを持て余しながらも、社交界から距離を置き、家族で田舎へ移る計画を立てるが……。

=====ここまで。

 もう何度も映像化されてきたトルストイの小説「アンナ・カレーニナ」を、ヴロンスキーの視点から描いたバリバリのロシア映画。
 

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 本作は、劇場公開時に見に行きたかったのだけれど、結局行けずに終映、、、。DVD化されたので見てみました。


◆ヴロンスキーがステキすぎる。

 それにしても、いくつも同じ原作の映画が既にあるのに、映画人にさらに映画を撮ろうという気にさせる原作「アンナ・カレーニナ」って、よほど魅力的な小説なんでしょうねぇ。未読なので分かりませんが。ストーリーだけ先に知ってしまったばかりに、どうしても「不倫メロドラマ」というイメージがあって、そんなドロドロ不倫を描いた長編小説に手を出す気になれず、、、。

 映画は、キーラ版とソフィ・マルソー版の2本を見たけど、どちらも見た後「やっぱし、つまんねぇ不倫モノやん」としか思えず、ホントに原作小説って名作なの??と、ますます読む気が失せた。

 ……が。

 本作は、見終わった後に、なんと! 原作を読んでみたくなったのであります。いやぁ、、、自分でもびっくり。

 というのも、タイトルの副題「ヴロンスキーの物語」のとおり、ヴロンスキー視点で、アンナとの出来事を、アンナが亡くなって30年後に日露戦争下の満州で、アンナの忘れ形見・セルゲイに語る、という設定が奏功していると思う。アンナ視点だと、どうしてもアンナに共感することは難しいけれども、ヴロンスキー視点にすることで話に奥行きが出たように感じる。

 また、本作はリョーヴィンに関する話が一切省略されていているのだが、それも良かったと思う。その代わりに、日露戦争に軍医として従軍したヴィケーンチィ・ベレサーエフの著作を融合させている。

 そして何より、ヴロンスキーがめっちゃイケメン!! ってのが大きい。ただ顔がイイ“だけ”の優男ではなく、品と知性が感じられる長身のこれぞ貴族! という雰囲気のヴロンスキーは、浮ついた不倫男なんぞではなく、人妻を図らずも愛してしまったことに葛藤する真面目な将校に見えるのだ。

 もちろん、アンナも艶っぽく美しい。致命的に色気がなく品のない笑顔のキーラ・アンナとは大違いで、妖艶かつ品のある本作のアンナは、真面目なイケメン将校ヴロンスキーと実に絵になるカップルなのである。

 主演の2人の雰囲気次第で、同じお話が、ここまで別モノになるのか……と、ある意味衝撃を受けた。映像化に当たってのキャスティングは、もの凄く大事だと改めて思い知る。

 ヴロンスキーとの情事の後、アンナが着替えるシーンで頭がクラクラする。途中、ヴロンスキーがアンナのコルセットの紐を締めるところなど、ねっとり描かれていて、これって監督の趣味か?とも思うが、ついさっきまであられもない姿態を晒していた女性が、身なりを整えていく過程をじっくりと描くことで、官能効果もググッと上がる。着替え終えたアンナが、部屋に残るヴロンスキーにチラリと視線をやって出ていくその姿は、色香を残しながらもキリリとしたご婦人に変貌していて実に美しいのだ。

 ヴロンスキーのいる場所が満州の野戦病院というのも、彼の心象風景となっている。現地の中国人の少女が折々に登場するが、片言の中国語で語りかけるヴロンスキーとのやりとりは、セリフであれこれ説明しなくてもヴロンスキーがいまだにアンナに囚われていることを感じさせられる。

 アンナとのシーンは全てヴロンスキーの回想として出てくるので、現在と過去がかなり頻繁に切り替わるのが気になると言えば気になるが、これだけの長編でメリハリをつける効果になっているとも思う。

 やはり(当たり前だが)、描き方次第で、メロドラマもこんなに格調高い文芸作品になるのだなぁ、、、と嘆息。


◆壊れるアンナ、、、。

 とはいえ、やっぱり不満が残るのは、アンナが列車に飛び込んじゃうまでの精神が崩壊していく過程の描き方。まぁ、どう転んでも、アンナが勝手に自分を追い込んで勝手に死んじゃった、ってことにしかならないので難しいのは分かるけど、、、。

 ヴロンスキーとアンナの気持ちや行動がいちいちすれ違ってしまうところは良いのだけど、その後、駅に向かって疾走する馬車の中でアンナが泣きながら絶望の言葉を叫んでいるのが、なんかね、、、。何でいきなりそうなるの??という感じで、この辺りがどう書かれているのか原作を読んでみたくなった理由の一つ。おまけに、御者のマントが翻って馬車が通りを駆け抜けていくところがスローモーションなのが、ちょっと演出的にやり過ぎな感じもして。

 本作でのヴロンスキーは非常に真っ当な感覚の持ち主で、情緒不安定になるアンナにできるだけ寄り添おうとする、誠実な男に描かれている。多分、原作のアンナも相当ヤバいんだろうな、と思うが、本作でもアンナの壊れていくのが速すぎて、ちょっと着いていけない。あれで自殺されては、ヴロンスキーが気の毒すぎる。

 こんなことを書くと身も蓋もないけど、アンナは要するに“ヒマすぎた”ってことなんじゃないかなー、、、と思った。他にすることがないから、ヴロンスキーに出した手紙の返信ばかり気になってしまう。今か今かと、外の馬車の音にも過剰に反応したり、、、。何事も“待つ”ってのは時間が長く感じるもの。やることが山ほどあって忙しくしていれば、そこだけに神経が集中しないから、悲観的になりすぎることもない。貴族って基本ヒマそうだもんね(ダウントン・アビーとか見ているとマジでそう感じる)。生活に追われる庶民は、男から手紙が来ないくらいで自殺することを考えたりする余裕はないのだよ。

 いずれにしても、アンナが壊れていく過程を原作で確かめてみたい、、、と思った次第。


◆その他もろもろ

 イケメン将校ヴロンスキーを演じたのは、マクシム・マトヴェーエフというロシア人俳優。品があり、知性を感じる顔立ちな上に長身で細身過ぎず、軍服が実に似合って美しい。これなら、アンナが惚れるのもむべなるかな、、、である。キーラ版やソフィ・マルソー版のヴロンスキーより断然ステキだ。舞台出身の俳優さんらしいが、あの容姿ならばさぞかし舞台映えすることでしょう。舞台上の彼を見てみたい。映画では、『オーガストウォーズ』(2012)に出演しているとのこと、俄然見たくなってしまった。

 アンナを演じたのはエリザヴェータ・ボヤルスカヤという、こちらもロシアのお方。ポスターの画像はイマイチだけど、上品ですごく美しい。完全無欠な美人というよりは、表情が本当に美しい。写真よりも、動いている姿の方が美しさがより分かる。ネットの感想で「アンナが不美人」と書いている人がいてびっくり。どういう審美眼なのだろう。キーラやソフィ・マルソーのような美しさとはゼンゼン違うのは確かだけど。

 でもって、このマクシム・マトヴェーエフとエリザヴェータ・ボヤルスカヤは実生活でご夫婦だというのでビックリ。こんな絵になるカップルが実際に夫婦として存在しているのか~、と嘆息。

 ヴロンスキーとアンナが決定的に恋に落ちる舞踏会のシーンが素晴らしい。美術も衣裳も豪華そのもの。ただの舞踏会なのに、ある意味、官能シーンになっていて、このあたりの演出が凄いなぁ、、、と感心する。やっぱし、ロシアの原作は、ロシア人が制作する方がハマるんだろうなぁ、と妙に納得させられた。ヴロンスキーのイケメンっぷりは、本作の公式HPの予告編でご覧になれます。

 カレーニン氏を演じたヴィタリー・キッシェンコも良かった。イイ人なんだかイヤなヤツなんだか微妙な感じを実に上手く演じておられました。

 そうそう、セルゲイの子ども時代を演じた少年がすごく可愛かった! あんな可愛い子に「ママが一番好き! 行かないで!!」なんて泣かれたら、私がアンナだったらセルゲイをあのまま拉致してヴロンスキーのところに連れ去ってしまうかなー、などと妄想してしまった。恋も息子も!と、アンナももっと欲深く生きれば良かったのに、、、。時代的にムリだったのは分かるけど。

 アンナと不倫していた頃の若きヴロンスキーもステキだが、30年後に満州で傷ついた50代後半と思しき枯れたヴロンスキーもイケている。皺が深くなり、髪も白くなっているが、歳をとってもイイ男はイイ男。軍医になったかつての美少年セルゲイとのやりとりは、これまでの「アンナ・カレーニナ」の映画にはない味わいがあって、これはこれで良いと思った次第。

 監督のカレン・シャフナザーロフ氏は、ロシアでは巨匠のお一人のようだ。独ソ戦をテーマにした映画も撮っているみたいだから、見てみたい。
 

 

 

 

 

 

 

 


キャスティングの重要性がよく分かる逸品。

 

 

 

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2 コメント

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観ました! (フキン)
2020-02-11 16:57:58
こんにちは!
すねこすりさんは今日の休日、映画館に行かれてるのでしょうか??

すねこすりさんのこちらの記事読みまして、興味湧き見た次第です♬
「アンナ・カレーニナ」初鑑賞でした。
不倫ものはな・・・という思いもあってあまり食指動かなかったんですがこちらではこの作品が一押し!!みたいに推されてたんで。笑

これしか見てないのですが、アンナの息子に語る形での展開はなかなか味がありましたね。
ブロンスキーの俳優、すてきでしたね♪
静かで大人しい感じでまさに優男!!!
ああいうタイプが、人妻にやられるんだよねって感じやわー!!と思って観てたら、アンナ役の女優とあの俳優が夫婦??!!!

アンナ役の女優さん、私も実はそこまで美人ではないな・・と言う印象でした。
でも、ラストで馬車の中で壊れた演技をする彼女は差し迫るものがありました。

でも、やっぱり不倫もの。
心に何かが引っかかる…苦笑

ロシア、もうすぐですよね??
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Unknown (すねこすり)
2020-02-11 23:05:52
フキンさん、こんばんは☆
わー、嬉しいです! もしかしてガッカリさせちゃってたらスミマセン(..)
ヴロンスキー、素敵ですよね〜♪ 私が見たアンナ・カレーニナで、ヴロンスキーが素敵だと思ったの、これが初めてです。ホント、いかにも人妻の餌食になりそうな…(^^)
アンナ役の方、イマイチでした? 私はとっても魅力的に見えました。多分、ソフィー・マルソーやキーラと無意識に比べちゃってるんだと思います。
今日は、名画座でロシアもの二本立てで見た後、フォーフェラ見て来ました。前の2本が脳髄直撃系だったんでボー然としてたんですが、フォーフェラでホッとしました〜(´∀`*)
ロシア、先日ようやくビザがおりました(^^)v
でもまだ、ホントに行くんかしら?みたいな感じです。準備もゼンゼンしてないし。3足千円の発熱靴下とかいうのを買ったくらいです(^^;
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