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「国家の罠」を読む

(「国家の罠」佐藤優著)

「国策捜査」という言葉がある。国の進む方向を変えたり、旧体制を排除しようとするとき、最も影響が効果的な政治家を血祭りに上げて、国の進むべき方向を国民に示す。具体的にはその政治家を逮捕し、とにかく罪状を作っていく。もちろん冤罪や違法捜査は法治国家には許されない。法律は変えなくても、今までは罪にするほどの違法性はないと目こぼししていたものを、違法性の基準を下げることで網に引っ掛ける。「国策捜査」に引っ掛かったものは、どんなに抗っても逃れることは出来ない。

小泉政権が出来て、論功行賞として、田中真紀子外務大臣が成立した。「人間には、敵か、家族か、使用人の3種類しかいない」と公言する真紀子女史だから、自立性の高い外務官僚とうまくいくはずは無い。外務官僚との確執に加えて、政治家としては珍しい外務に活動の中心を置き、外務大臣の頭越しに活動していた鈴木宗男代議士とも犬猿の仲となり、田中真紀子、鈴木宗男両氏の影響力を同時に排除しようとする、外務省中心の勢力によって、田中真紀子外務大臣は更迭され、鈴木宗男代議士は背任の疑いで逮捕された。折しも、相手国の政治家との個人的な関係を築いて外交を推し進める手法が行き詰まり、方向転換が目指されていた渦中に、その権化ともいうべき鈴木宗男代議士に司直の手が伸びた。

「国家の罠」の著者はロシアと個人的な関係を築き、ロシア外交を裏で操るとして、外務省のラスプーチン(注)と称されていた、佐藤優という外交官である。鈴木宗男代議士にくっ付いてロシア外交の一端を担っていた著者は、鈴木宗男代議士に連座して背任の罪で500日を越す勾留生活をしてきた。

    (注)ラスプーチン(1872頃-1916) 帝政ロシアの宗教家。シベリアの農民出身で、各地を巡礼し、皇太子の病気治療によりニコライ二世と皇后の信任を得て政治に関与し、権力を振るう。反対派貴族に暗殺された。怪僧の異名をもつ。

担当検察官も、もともと検察がハードルを下げて作り上げた国策捜査だから、個人的に罪を問うという意図は少なく、起訴することでほとんど目的は達成する。判決も執行猶予が付いて終ってくれればよいと考えられていて、変に突っ張られたり、傷ついて自殺されるようなことがあるのが一番困ることなのだと語る。

「国家の罠」は検察の特捜の活動に関して、自分が抱いていた幾つかの?に答えをくれた。もう一つの大きな?は誰が特捜の活動を操っているのかという点である。時の官邸なのか、主流の役人なのか、検察の上層部なのか。
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