平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
「水濃徃方」の解読 20
(庭のフリージア)
区の集金、第一回目の自動振替の手続きにJAに行き終わった。
駿河古文書会の予習をした。一回分を終える。
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「水濃徃方」の解読を続ける 。
取替兵衛之篇
千年/\三千年と売り弘めしは、親(おや)中村七三が地黄煎。その後、廣治が三官飴、国性爺の浄瑠璃語りし頃まで、世の流行り事もしおらしく、浮世をめぐるきりや徒む。大磯の虎ぎすなんぞも、今に茶事の咄しに残る。所縁(ゆかり)の色の沢之丞帽子。抑(そもそも)芝居という事、何者の仕始めし事にや。役者の発句(ほっく)といえば、やんごとなき玉簾(たまだれ)の内までも、伝(つて)を求て、定家(ていか)、家隆(かりゅう)の真跡(しんせき)の想いをなすこの時節。
※ 親中村七三(おやなかむらしちざ)➜ 初代中村七三郎。元禄期に活躍し、江戸和事の祖と称された歌舞伎役者。
※ 地黄煎(じおうせん)➜ 水飴のこと。漢方の地黄を煎じたのに水飴を混ぜて、飲みやすくしたのが元で、のちにただの水飴や竹の皮に引き伸ばした飴、固形の飴の名称となった。
※ 三官飴(れい)➜ 江戸時代から昭和時代にかけて豊前国(福岡県)小倉名物として販売されていた飴のこと。
※ 国性爺(こくせんや)➜ ていせいこう(鄭成功/国姓爺)。(浄瑠璃では「国性爺」と書く)浄瑠璃「国性爺合戦」の主人公。明朝再興のために戦った鄭成功をモデルとする。
※ 虎ぎす(とらぎす)➜ 関東以南の太平洋岸に棲息する海水魚。
※ 沢之丞帽子(さわのじょうぼうし)➜ 女性のかぶり物の一種。元禄時代の代表的な女形である荻野沢之丞が使用したもので、帽子の両端におもりを入れて布が返るのを防いでいた。婦女子の間で流行した。
何をがなと、女の求むる鬢付(びんづけ)、花の露。皆な彼等が名題(なだい)を借りて、品の善し悪し、直段の高下を論せず。僅かの間に建て並ぶる家蔵(いえくら)、畢竟(ひっきょう)役者に立てて貰う同前なるべし。それさえ二十年已前(いぜん)までは、女中(じょちゅう)の好み。衣装、髪の上にのみ止(とどま)りて、ばしなるの、派手なるのと笑う人もあれど、何も知らぬ繁華の地の女心には無理とも云われぬ事なりしに、この頃は女中の好みも一等向上の花奢(きゃしゃ)風流。
※ 何をがな(なにをがな)➜ 何かよいものがあればそれを。何かを。
※ 鬢付(びんづけ)➜ 鬢付け油。主に日本髪で、髪を固めたり乱れを防いだりするのに用いる固練りの油。木蝋(もくろう)・菜種油・香料などを練ってつくる。
※ 花の露(はなのつゆ)➜ 江戸時代、女性用の上等の鬢付油の名前。
※ 名題(なだい)➜ 名題役者。歌舞伎で、名題看板の絵組に描かれる資格の役者。幹部級の俳優の総称。
※ 女中(じょちゅう)➜ 婦人を敬っていう語。御婦人。
※ ばし ➜ 軽薄で落ち着きのないさま。
※ 花奢(きゃしゃ)➜ 物事の状態が上品で優雅なこと。
(「水濃徃方」つづく)
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