柔道の古賀稔彦が亡くなりました。癌だったそうです。まだ53歳。ショックです。古賀の死を喩えるならサッカーのマラドーナ、ラグビーの平尾誠二が亡くなったのと同じくらいの衝撃です。柔道界を引っ張っていく存在なのに、古賀を失ったことは日本柔道にとって大きな損失だと思います。すでに6年前に斉藤仁を失っています。立て続けにリーダーを失う痛手はとてつもなく大きなものがあることでしょう。
「平成の三四郎」と呼ばれた古賀は天才でした。僕も高校時代に柔道部だったので、古賀の天才ぶりは信じられないくらいの才能だと感じていました。しかも古賀は才能だけではなく努力の人であり、闘志の人でもありました。格闘技である柔道に必要なものを全て持っていたからこその天才でした。バルセロナ五輪での怪我をかかえながらの金メダルは古賀の柔道の神髄を表現していたと思います。
長年柔道を見続けてきましたが、遠藤純男、上村春樹、山下泰裕、斉藤仁、小川直也、吉田秀彦、野村忠宏、井上康生、内柴正人、大野将平ら歴代の金メダリストたちと比べても、やはり天才性、そしてスター性という意味では古賀の前に古賀なく、古賀の後に古賀なしという気がします。強いて言えば田村亮子くらいでしょうか。いや、レスリングの吉田沙保里くらいかも。
斉藤、古賀と若いリーダーを失った柔道界ですが、かつて歌舞伎の世界でも同じようなことがありました。2012年12月に中村勘三郎(享年57)が急逝し、続いて2013年2月には市川團十郎(享年66)、さらに2015年2月に坂東三津五郎(享年59)と立て続けに人気実力を兼ね備えたスターが亡くなりました。彼らの穴を埋めていくのはとてつもなく大変ですが、それでも穴が空けばそこを埋めるように次代の主役は育ってくるもの。歌舞伎の世界では新しい顔が育ってきています。苦難を乗り越える日本柔道の姿を期待します。