はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

日々体力測定

2016-10-31 00:04:40 | 岩国エッセイサロンより
2016年10月29日 (土)
岩国市  会 員   貝 良枝

階段の掃除をしていたら足を踏みはずしそうになって擦り傷をつくった。同じ日、台所で指をやけどした。体が思うように動いていない。
 そこで体力測定をしてみる。私の方法は2階まで階段を駆け上がれるか。タンスの下段に服を片付けて一気に立ち上がれるか。ラジオ体操が力いっぱいできるか。どれも息が詰まる。
 これは体力が落ちている証拠。最近の生活を振り返り「だよね」と納得する。  
まずは、体力測定の項目が難なくできるようにしよう。私の体は、私が守らなくては。大きなけがをする前に。
   (2016.10.29 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

山の日に思う

2016-10-30 21:13:48 | はがき随筆






 今年始まった祝日・山の日。「日本は山国だし登山人口も多いのに、なぜ山の日がないのかなぁ」といつも言っていた亡夫を思いだし「お父さんの夢実現したよ」と報告した。
 リタイア後の3年間、彼は自分の短い命を予感したかのように九州の山々、出羽三山、スイスアルプスと山ざんまいの日々を過ごしていた。
 最後の山は、2人で登った大雪。季節外れの大雪に足がすくみ動けない私を励まし、やっとの思いで下山したときの安堵の表情を今でも懐かしく思い出す。そして夢に終わった岩手山。彼の地で夢はかないましたか?
 鹿屋市 西尾フミ子 2016/10/30 毎日新聞鹿児島版掲載

なぜ「寡黙」に?

2016-10-29 10:22:11 | はがき随筆
 毎日欠かさず見てきた「とと姉ちゃん」もついに終了した。戦後の生活の変遷は当時が思い出され懐かしかった。焦土と化した廃墟暮らしの中から、消費者目線で、安くて良い物を追及し続けた情念は、ついには世界一のものづくり大国への一助をなすまでに至った。この気概や戦争への反省は、現在でも決して忘れてはならないことだ。
 疑問を投げかけて締めくくりだと思う。広島に取材に行ったとき「寡黙」な人たちに直面したくだりだ。「なぜ寡黙に?」。実は鹿屋の特攻基地取材でも住民の「寡黙」に出会ったとの本(知覧の誕生)もあるのだ。
  鹿屋市 小竹幸雄 2016/10/29 毎日新聞鹿児島版掲載

古い畳と古女房

2016-10-29 10:14:40 | はがき随筆
 大工仕事は本職なみの夫である。しかし古女房がイライラするくらい無駄なこだわりを持っている。和室を洋間にリフォームすることにした。本職に依頼せず夫がすべて施工した。不用になった畳はゴミに捨てるのだが、夫が玄関の横に立て掛けてパンパンと棒でたたき、雑巾がけまでしている「バカじゃないの」と言いたかったが、堪忍袋の緒をしっかり引きしめて見ていた。翌朝ゴミ収集車がピカピカの古い畳をガリガリと木端みじんに切り刻んで収集していった。古い畳と同じように古女房も大事に思っているのかとジロリと夫の顔を横眼で見た。
  出水市 古井みきえ 2016/10/28 毎日新聞鹿児島版掲載

にんまり

2016-10-27 11:21:31 | 岩国エッセイサロンより
2016年10月27日 (木)
      岩国市  会 員   森重 和枝

 今年の里芋畑は今も葉が茂り株も太い。掘ってみた。姑から引き継いだ芋作りも10年余りになる。なかなか姑のようにはいかず、毎年がっかりする。
 姑の作る芋は株元から約30センチの所へ四方から鍬を入れ、やっと掘り上げる。子芋、孫芋がたくさん付いていた。例年のつもりでスコップを入れる。びくともしない。四方から入れ、力の限り持ち上げた。孫芋は少ないが、子芋が何個も付いている。7株掘っただけで15キロあった。
 早速、小粒を衣かつきにしてみる。掘りたての芋は粘りがあり柔らかくうまい! 姑にやっと追いつけた気がして嬉しい。
    (2016.10.27 毎日新聞「はがき随筆」掲載)

大らかな国

2016-10-27 11:20:07 | はがき随筆


 カナダ帰りの人の家に大角を持った鹿の首の剥製が飾ってあって、それを見た少女の日以来カナダは憧れの地であった。
 この夏ついに高1の孫と2人でツアー旅に行ってきた。90カ国の人々が暮らすという国は空も大地も広大だった。誇らかに、またようこそと言うように至る所に国旗が掲げられ、はためいているのが印象深かった。迫力あるナイアガラの滝。カナディアンロッキーの森といくつもの湖。溶けだす水をすくって飲んだ氷河。足元まで寄って来たシマリスや、バンクーバー島で餌をやったゴマフアザラシ。思い出してはうっとりしている。
  霧島市 秋峯いくよ 2016/10/27 毎日新聞鹿児島版掲載

からいも神様

2016-10-27 11:13:12 | はがき随筆
 指宿山川の徳光神社に詣でた。ここには400年くらい前に琉球から甘藷を持ち帰り、藩内に広めた前田利右衛門を「からいも神様」として祭ってある。当時日本列島は飢饉に苦しめられていたが、薩摩藩から餓死者は出なかったという。その後、江戸の青木昆陽は甘藷を入手し、将軍吉宗は栽培を全国に奨励して人々を飢餓から救った。昆陽も千葉の昆陽神社に「いも神様」として祭られている。
 私たちは日ごろ「からいも」に多大の恩恵を被っている。2人の神様はもちろんのこと「からいも」そのものにも感謝の念を禁じ得ない。
  鹿児島市 野崎正昭 2016/10/26 毎日新聞鹿児島版掲載

別姓夫婦です

2016-10-27 11:05:58 | はがき随筆
 昨年12月から私は怒っている。選択的夫婦別姓について最高裁が判断を国会に投げたからだ。私たちが結婚した二十数年前、この法案が国会に提出されそうな機運があり、私たちはお互いの人生を尊重したかったので別姓を選ぼうと思っていた。選択制ということは同性でも別姓でもふたりの合意で自由に選べるとしうことだ。しかし頭の固いオジサン議員だけでなく、一部の女性議員たちも反対し続けているのにはがっかりだ。
 人生の終末期に向かって、現行の法律ではいろいろと不利益を被ってしまう。そろそろ入籍を考えねばなるまい。
  鹿児島市 種子田真理 2016/10/24 毎日新聞鹿児島版掲載

田舎暮らし

2016-10-27 10:59:45 | はがき随筆
 子供(9歳)のとき父を亡くした。長男のため家を守る義務があり、憧れの都会に出られず農業の田舎暮らしとなった。
 夏から秋は田畑の仕事が多い。山間部のため動物が多く、農作業の前後、イノシシが湿田に生息する沢ガニを食べにあぜや水路を荒らした跡が見つかる。狩猟マニアに通報すると、喜んで「ありがとう、誰にもいっかせやんな(教えるな)ー」と言う。
 今まで便利な都市生活と比べて田舎暮らしといわれた農山村も、貴重な自然に恵まれ資源の中に生活しているんだなあと、その実感がわいてきた。
湧水町 本村守 2016/10/25 毎日新聞鹿児島版掲載

果たそう15回目

2016-10-23 22:22:16 | はがき随筆
 何度目かの友人のさそいにやっと応じて、今年で15回目に至った「県民第九」への参加。年年歳歳同じくむつみ合って来たこの道。始めるとやめられないたちの私も毎年「今年はできるかしら」と老いて懸念している。
 しかし四つの声の響きの美しさを恋い、シラーの詩のことばに魅せられるシアワセに自分を託する。平和で崇高なひととき、どうぞ今年もかないますように! いえ私だけでなく、子や孫や多くの友人のために祈りをこめてうたいます。
 12月18日、発表の日を無事迎えられますように。
  鹿児島市 東郷久子 2016/10/23 毎日新聞鹿児島版掲載

雑草

2016-10-23 06:54:06 | はがき随筆
 炎天下、雑草が一面に繁茂している。耕運して間もない白い畑にもポツポツと草が芽を出し、1週間もすると地面をはいつくばり、畑が隠れるほどだ。オイシバ、メヒシバ、スベリヒユ、コニシキソウ等すごい。最近の名もない外来種もさらに強い繁殖力だ。手入れも水もやらないのにこの生命力だ。引き抜くと、ちぎれてしがみついている。
 その昔、子どもたちの学級通信と卒業文集に「雑草」と名づけたが、あの子どもたちも、また、雑草のごとく強い人間になり、頑張っているにちがいない。
 出水市 畠中大喜 2016/10/22 毎日新聞鹿児島版掲載

スペイン語辞典

2016-10-23 06:48:08 | はがき随筆
 TVドラマや小説では、忘れれ物を関係者が偶然見つけることがある。それが事件解決の糸口だったり、人間関係をより複雑にしたりする。でもそれは虚構世界の絵空事と思っていたが。
 毎日ペンクラブの地区勉強会が7月にあった。帰り際にT氏が長テーブルの下の棚に置かれた本を見つけた。スペイン語の辞書だ。西語関係者は鹿児島では少ないと思いその場から、西語教室に通っている妻に「辞書を忘れた人はいないか」と電話した。「どんな辞書」と尋ねるので「青い表紙で黄色の付箋が2.3枚貼ってあるね」と答えると「あっそれ私のだ」。
  鹿児島市 高橋誠 2016/10/21 毎日新聞鹿児島版掲載

山坂達者

2016-10-23 06:39:42 | はがき随筆
 私より一回り年長の友人がいる。10年くらい前、2人で妙円寺参りに参加した。歩くことは好きだし、20㌔の道のりくらい軽いと思っていた。
 しかし、照国神社をスタートし、水上坂で早くも私の足は止まった。彼女はすいすいと登っていく。私がふうふう言いながらやっと坂の上に着くと「右足と左足を交互に出せば前に進むが」と笑っていた。翌年は少しトレーニングをして臨み、なんとかついて歩けた。
 彼女は現役時代、坂の上の家からバス停まで毎日上り下りを繰り返し、それが結果として訓練になっていたのである。
  鹿児島市 本山るみ子 2016/10/20 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆9月度

2016-10-19 17:22:37 | 受賞作品
 はがき随筆の9月度月間賞は次の皆さんです。

 【優秀作】21日「義母」伊尻清子=出水市武本
 【佳作】10日「遠い南の空」新屋正興=曽於市大隅町
 【佳作】25日「ざんげ」清水昌子=出水市明神町

「義母」は、94歳で亡くなった義母への追悼が内容になっています。夫に戦死された後、田畑を守り、子供を育て上げ、孫に優しかったその生きざまが、毎日一輪車を押して田畑に向かう後ろ姿に象徴されている文章です。戦争は政治家が始めて庶民が犠牲になるといいますが、70年間というその影響には考えさせられます。
 「遠い南の空」は、ニュージランド留学しているお孫さんが、滞在先のご主人の早逝に出会った。その体験にどのように対処しただろうかと、遠くから心配になっているという内容です。昨今肉親の不幸にもなかなか出会わない実情から考えれば、貴重な体験になるかもしれません。
 「ざんげ」は、肉親へのしつけの難しさが軽い後悔とともに描かれています。遊びに来た孫をかき氷を食べに連れていったら、オマケにおもちゃを一つずつもらった。ところが彼は二つも取ってきた。すかさずおじいさんはそれを注意したが、自分は見て見ぬふりをしてしまった。あの孟子でさえ、自分の子の教育は他人に頼んだといいますから、難しいものです。
 この他に3編を紹介します。
 種子田真理さんの「Tさんに大感謝」は、随筆や川柳などでご活躍のTさんに、映画についての情報を教えてもらったことへの感謝の内容です。単なる連絡や告知板では困りますが、随筆仲間の横の広がりは貴重なものだと思います。
 山下留美さんの「富士登山」は、山の日も設定されて、家族で挑戦した富士登山の印象記です。多い日の登山者は7000人を超えるというが、その目的はそれぞれ異なるとしても、それぞれの吐く息は富士の裾野に漂っているだろうという印象が興味深い。よほど大変だったのでしょう。
 永野町子さんの「夕顔」は、夕闇の中で一瞬にして咲く夕顔が、今年は猛暑のせいかなかなか咲かない。それが9月になって咲きはしたが、一瞬ではなく、「徐々に渾身の力」で咲いた。夕顔への愛情が表れている文章です。地球温暖化も心配です。
鹿児島大学名誉教授 石田忠彦

脊柱管狭窄症

2016-10-19 16:37:48 | はがき随筆
 今、普通に歩ける事に感謝している。2年前、ウオーキングで左足の違和感を覚え、まもなく歩く事が困難になり腰痛がひどくなった。脊柱管狭窄症と診断され、手術以外治る方法はないといわれ途方に暮れた。痛み止め薬で激痛に耐え手術を避けた。いざりながら家事をこなしてスラックスは何枚も破けた。歳月がたつうち痛みが少し和らぎ薬を減量した。リハビリに足、腰に負担をかけないように自転車を使った。これがよかったのか歩けるようになった。この間、夫の優しさ、周りの人の助けはうれしかった。身障者への援助を痛切に感じた。
  出水市 年神貞子 2016/10/19 毎日新聞鹿児島版掲載