はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

友の菜園 知恵に感心

2015-11-29 22:45:55 | 岩国エッセイサロンより
2015年11月27日 (金)

   岩国市   会 員   片山清勝

 菜園づくりが趣味の知人の姿を久しぶりに見掛けた。いつも肥沃な畑の様子は変わらないのに、何本ものペットボトル製の風車が、がらがらと音をたてて回っている。
 初めての光景に驚き聞くと「まあ、見てくれ」と指さす一画の野菜がしおれている。原因はモグラが地下で遊んだからと笑う。地中へ振動を伝えると侵入防止になることが分かり、風車を手作りしたという。
 ペットボトルで風車を作る。その風車の胴体に小石を入れる。風車が回ると中の小石が動き、音と振動が起きる。その音と振動は、風車を取り付けた細い鉄の棒を伝わって畑に届く仕組みだ。
 風車の設置でモグラの侵入は減少したが、せめぎ合いは続いている。友は、 「農業は脳業で脳トレにもなる」と話す。
 初冬の日差しが降り注ぐ畑。地下のモグラと菜園主の暗闘を知り、いつものように持たせてくれた野菜へのありがたみが増した。

        (2015.11.27 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載

蕎麦の味

2015-11-26 12:45:00 | はがき随筆


 蕎麦アレルギーの人を除けば私のように蕎麦好きが多いのではないだろうか。私は、外食のときなど蕎麦をよく食べる。
 10月末近く、生駒高原のコスモスを妻と見に行った。時季外れでコスモスはあまり見事とは言えなかった。帰路、高原のふもとの麺専門のある店で蕎麦を食べた。ところが思いもかけず、おいしい味。蕎麦の産地を聞くと北海道産とのこと。妻もおいしいと喜んでいた。
 近くでは、五家荘で食べた蕎麦の味も忘れられない。五木産の蕎麦を使っているということだった。蕎麦は冷涼な地のものがおいしいのだろうか。
  出水市 小村忍 2015/11/26 毎日新聞鹿児島版掲載


内省

2015-11-26 12:44:07 | はがき随筆
 昨年暮れにアイロンを買ったのに今までのばかり使い続け、今日初めて新品を使ってみた。すごく使いやすい。なぜもっと早くから使わなかったのか? 
 小2のとき、24色クレパスを買ってもらったのに、それまでの12色のチビちのだけ使っていたら「ケチヒロコ」と父が笑った。
 せっかくおいしい食べ物も気がつくと期限切れ……。へんてこなけち癖をひきずったまま年老いてしまった。
 壁に貼ってある金子みすゞさんの詩『私と小鳥と鈴と』が目についた。
 みんなちがった みんないい
  鹿児島市 馬渡浩子 2015/11/26 毎日新聞鹿児島版掲載

駅伝

2015-11-26 12:41:59 | ペン&ぺん
 

 4日に指宿市であった県高校駅伝競走大会。男子は鹿児島実業が終始安定したレース運びで18年連続の優勝を果たした。女子は鹿児島女子が神村学園を破って初優勝を遂げた。さらに15日の全九州高校駅伝で、4位に入った女子の樟南が地区代表として都大路への切符を手にした。県勢としては男子の鹿児島実業、女子の鹿児島女子、樟南の計3校が12月20日、京都市である全国大会に出場することになる。
 鹿児島女子は、昨年まで28回を数える女子の県大会の歴史の中で13回も準優勝に甘んじてきて、今回ようやく手にした優勝旗。ゴールの競技場は歓声があふれた。一方、敗れたとはいえ神村学園の追い上げも見事だった。1区はトップと1分差の4位だったが、4.5区の区間賞を含む力走で、鹿児島女子と24秒差まで縮めて2位に入った。
 都大路である全国大会は毎日新聞が主催者の一つ。私も3度ほど取材に訪れたことがある。
 ある年、何度も優勝経験がある福岡県の男子チームを担当した。選手の一人が大舞台の直前に体調を崩したのだが、監督はあえてオーダーを変更しなかった。優勝候補といわれながら、結果は8位。選手交代を考えなかったのかとレース後に聞くと、ベテラン監督は「負ける年もあるのがレースだ」とひょうひょうと答えた。負けはしたが、選手を信じて任せた監督の選択が印象に残った。そしてチームは翌年、見事に優勝を果たした。
 佐賀県の女子チームを担当した年、事前取材で合宿所を訪れ、監督とまちに飲みに出た。店にいた客が次々と私たちのテーブルに来て、監督に激励のビールをついでいく。地域住民の多くが選手の力走を祈っている姿を目の当たりにした。
 大会本番まであと1ヶ月足らず。チームのために懸命に走ってタスキをつなぐ。都大路での県勢の走りに期待したい。
  鹿児島支局長 西貴晴 2015/11/25 毎日新聞鹿児島版掲載


たったの一つ

2015-11-24 22:13:44 | はがき随筆
 10月は投稿できず残念であった。というのは、不意打ちの病に出会い、随筆1遍も書けなかった。思いは十分にあったものの、入院中はいっこうに書く元気もなく、10月は一瞬のうちに過ぎてしまった。一時休養であったか。
 11月初め、仮退院してようやくはがき随筆を創る。今の気持ち、書ける喜びを味わいながら創る。再スタートの感もしてくる。頑張れと声援あり。
 今からもハプニングが生じるかもしれない。毎月投稿できることを願い、前向きでコツコツと創作に打ち込める。願いはたった一つである。
  鹿児島市 岩田昭治 2015/11/24 毎日新聞鹿児島版掲載

1代目と2代目

2015-11-24 22:13:12 | はがき随筆
 「新しい車を買いやったなあ。音も全然せんなあ」と近所のOさんが、2代目デミオを喜んでくださった。
 私が出勤するとき、ブオーッ、ブオーッとものすごい音がするので、初代のマフラーが壊れているのではないかと心配してくださっていたようだ。
 なんとその音の原因は、マフラーに入っていたひび。これまで、いろんな部品を変えて乗ってきた初代の車。本当によくがんばって働いてくれた。今おもえば、悲鳴をあげていたのかもしれない。苦楽を共にし、いろんな思い出がよみがえる。みんなみんなありがとう。
  出水市 山岡淳子 2015/11/23 毎日新聞鹿児島版掲載

買い物難民

2015-11-23 19:59:13 | 岩国エッセイサロンより
2015年11月23日 (月)

岩国市   会 員   林 治子

♪お店がだんだん遠くなる、遠くなる♪と替え歌を口ずさみながら自転車のペダルをふむ。目指すはスーパー。今年に入って近くの店が閉店し、それより少し遠い店が建て替え中。やむなくその次に近い所とどんどん遠くなる。考えてもみなかったことが起こってきた。苦手なメモを片手にそれも忘れがち。これも脳トレかと記憶をたよりに店内をウロウロ。何と時間のかかること。心身共に使い果たし家にたどりついた時は大仕事を片付けた気分。「あーしんど」と思わず声が出た。昔はやった「買い物ブギ」のメロディーが聞こえてきたような気がした。
  (2015.11.23 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

運命の岐路

2015-11-22 06:28:25 | はがき随筆
 太平洋戦争末期の昭和19年、私の伯父家族(30代夫婦と4人の子供)が北九州の戸畑に居住していた。学童疎開があり、郷里鹿屋市から20歳の叔母が手伝いに。6月19日、食事中に空襲警報が発令された。B29が爆弾投下を始め、壕へ非難したが、出入り口を爆弾で塞がれ、全員死亡した。市葬になり、私の父と隣人で遺骨を受け取り、大勢の方に見送られて、戸畑駅で別れのあいさつ。実家で待つ祖母は、気も動転し、心の葛藤と闘いながら喪主を務めた。
 神棚の遺骨にセミがとまり、案ずることもなく眺めた5歳の私。71年前が鮮明によみがえる。
  肝付町 鳥取部京子 2015/11/22 毎日新聞鹿児島版掲載

佐木隆三さん

2015-11-21 23:53:24 | はがき随筆
 佐木隆三さんが亡くなられた。数年前、鹿児島の裁判に傍聴で並ぶと、たまたま私の前が佐木さん。初対面だが、あいさつを交わし、立ち話をした。
 閉廷後「2人で飲みませんか」と誘われた。若い頃は沖縄でデモの首謀者に間違われて拘留されたり、泥酔し、タクシーのガラスを割って逮捕されるなど、失敗談が面白かった。正義感が強く、優しい人柄だった。
 2軒目の店では記者も加わり裁判の行方を心配されていた。酩酊されたので、記者とホテルへお連れした。佐木さん! そちらでもお酒を飲んでいまますか? またご一緒しましょう。
  鹿児島市 田中健一郎 2015/11/21 毎日新聞鹿児島版掲載

2015-11-21 23:36:07 | はがき随筆


 先日、小倉の妹から栗が送られてきました。自宅から離れた所に小屋があり、そこで育った栗です。栗はいがを割って実を取り出すのは面倒です。せっかくの栗ですから、今年は渋皮煮に挑戦しようと思い立ちました。正月に嫁が食べさせてくれ、作り方の話を聞いていたので、グーグルで検索。あまり多すぎしっくりいかず、むかし主婦の友社の料理本で読んだことを思い出し、その本を見つけて自己流でやってみました。栗の皮をむき渋皮を傷つけないよう、重曹であくを抜き、水を替えながら丸1日がかりで完成。試食もおいしく84歳万歳でした。
  鹿児島市宇宿 津田康子 2015/11/20 毎日新聞鹿児島版掲載

長生きしてよ

2015-11-20 22:52:22 | 岩国エッセイサロンより
2015年11月20日 (金)

岩国市  会 員   貝 良枝

早朝、電話が鳴る。出られなかった。また鳴る。出ると切れた。

 父も義母も亡くなった知らせは早朝だった。そう思うとやっぱり気になる。着替えもそこそこに、母の家に急ぐ。

近ごろ、顔が小さくなったなアと感じていた。昨日は足がむくむと言っていたなア。

鍵は開いている。声をかけたが返事はない。

「お母ちゃん!」

 洗面所から驚いた様子の母がのぞく。

 「お、おはよう」。電話は母ではなかったようだ。ひとり胸をなでおろす。母87歳、一人暮らし。

    (2015.11.20 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

はがき随筆10月度

2015-11-20 17:30:55 | 受賞作品
 はがき随筆の10月度月間賞は次の皆さんです。

【優秀作】25日「蝸牛」堀之内泉=鹿児島市大竜町
【佳作】1日「置きみやげ」竹之内政子=垂水市田神
▽6日「防止帽子」門倉キヨ子=鹿屋市串良町


 「蝸牛」は、カタツムリの観察が実に細やかです。文章は観察であると言ったのは島崎藤村でしたが、鋭い歯や殻の入り口の薄い膜など、普通は気づきません。その観察を支えているのは、「露払い」とか「晴耕雨読」などの比喩の巧みさです。結びに昆虫(自然)と人間との共生の難しさに触れているところは考えさせられます。
 「置きみやげ」は、地域とのつながりを大事にした高校の校長が、彼岸花を校庭に植えることを提案した。十数年がたった今、彼岸花は確実にお彼岸ごろに咲き、見ていると肉親を思い出す。それを植えた先生に報告したいという内容です。先月も触れましたが、確かに彼岸花は懐かしい花ですね。
 「防止帽子」は、以前転倒したことがあったが、それを心配した知人が手のひらに5個も載るくらいに小さな手編みの帽子を贈ってくれた。どうも転倒防止(帽子)のシャレらしい。あちこちに付けてマスコットにしている。読んでいて温かい気分になる文章です。この他に3編を紹介します。
 高橋誠さんの「ミイバア」は、近くの雌猫が食事どきになると食事をしに来る。食べ終わると「あいさつもせず(?)」に自宅へ帰っていく。人間でいえば後期高齢者にもあたろうか、顔を見ると愛嬌があるので、「ミイバア」と読んで夫婦で可愛がっている。傍若無人は言い過ぎかもしれませんが、猫の態度が目に見えるようです。
 年神貞子さんの「いとおしき虫たち」は、年々、小鳥や虫が少なくなる。季節には菜園で見かけたアオイトトンボもハグロトンボもトカゲも見なくなった。理由はどこにあるのだろうか。風呂場の窓のヤモリだけがいとおしいという、現代版の「虫愛づる姫君」です。
 武田静瞭さんの「花の名で脳トレ」は、美しい花を楽しんでいても、その名前がなかなか思い出せない。パソコンで調べて思い出したが、1時間もたつとまた忘れた。夫婦で花の名を当てっこして脳トレに励んでいるという、微笑ましい内容です。
  鹿児島大学名誉教授 石田忠彦 2015/11/19 毎日新聞鹿児島版掲載

夜明けの鶴

2015-11-20 17:29:06 | はがき随筆
 庭に出ると、夜明け前の満点の星が美しい。車を出して鶴の越冬地に行ってみた。クワッ、ピヨッ、クワー。遠くねぐらの水が細く光るほかは何も見えない。双眼鏡をのぞくと水の上に鶴が黒く見えた。しばらくしてひときわ高く見える紫尾山の尾根の後ろから明るくなると、鶴は餌を求めてだろう飛び立った。
 辺り一面二番穂が垂れ、あちこちに降りて行った。なんと優雅な夜明けの風景だろう。まだ鶴の飛来も少なく、幼鳥の鳴きが可愛い。ちょうど高尾野中学のクラブのカウントで350羽だそうだ。今年も万羽鶴を期待しながら帰路に就いた。
  出水市 年神貞子 2015/11/19 毎日新聞鹿児島版掲載

ペンクラブ賞に堀さん、馬渡さん

2015-11-19 11:31:15 | 毎日ペンクラブ鹿児島


 毎日ペンクラブ鹿児島の秋の研修会が15日、鹿児島市の市勤労者交流センターであった。昨年10月からの1年間、本誌鹿児島版に掲載された「はがき随筆」の中から選ぶ「ペンクラブ賞」の表彰式もあり、姶良市加治木町の堀美代子さん(71)と鹿児島市慈眼寺町の馬渡浩子さん(68)に高橋宏明会長からそれぞれ記念の盾が贈られた。
 堀さんの作品「祖母の手仕事」は96歳の祖母にちゃんちゃんこをひしらえてもらった思い出をつづり、短文を積み重ねた独特のリズム感が評価された。馬渡さんの「又もやへまを」は往復はがきの折り目をまっすぐ切り離せず、さらに切手を上下反対に貼ってしまった失敗談をユーモラスに描いた。
ペンクラブは「はがき随筆」「女(男)の気持ち欄の愛好者でつくるグループ」。研修会後は別会場で懇親会もあり、会員同士が交流を深めた。
  【西貴晴】 2015/11/17 毎日新聞鹿児島版掲載


思いやりの心を

2015-11-19 11:30:28 | はがき随筆
 スーパーの3階から階段を下りていた。おぼつかない足取りを見かねて女性が「持ちましょうか」と声をかけてくれた。
 「ありがとうございます。助かります」。その人は急ぎ足で1階まで下りていかれた。「ここに置きまーす」。階段を下りながら軽く会釈した。
 ホットな気分で食品売り場を歩いていたら、後方から男性の押すカートが弱い左足の踵を直撃した。あまりの痛さにその場にしゃがみ込んだ。
 無言で立ち去る男性に少しでも思いやりの気持ちがあれば、痛みも和らいだかもしれない。
  鹿児島市 竹之内美知子 2015/11/18 毎日新聞鹿児島版掲載