はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

自然の静ひつ

2012-10-30 12:49:23 | はがき随筆
 稲刈りを終えた田んぼに2羽のカラスと5羽のスズメがいる。落ちたもみ米をくちばしで突いている。が、追い払うこともなく、争うこともなく、もみ米を探している。ところが人間関係はどうだろう。国の境界線が犯されたと、争いが起きている。争いは冷酷で非人道的になる。争いはさらなる争いを生む。争いは何の解決策も生み出さない。人間には知恵がある。対話する能力がある。暖かい血が流れている。人を愛する感情がある。地球に住む我々は大きな家族の一員。お互いに助け合いたい。今こそ「愛」。
  鹿児島市 吉松幸夫 2012/10/30 毎日新聞鹿児島版掲載

白雲ぽっかり

2012-10-29 21:30:59 | はがき随筆
 9月から10月にかけて毎週のごとくゴルフをした。コンペである。当然、順位を付けられ表彰される。それをさかなに酒を飲むことが多い。なぜか4位が4回続いた。4位というのは不合理な順位である。表彰はコンペによって変わるのであるが、優勝、準優勝、3位、5位という順番で賞品が変わり4位の私はいつも賞品に恵まれることなく参加賞をもらう羽目になった。賞品はたいした物でないし、運も含めた表彰だから落胆することはないが、何となくしゃくにさわる。そこで一句。「夏の日に 白雲ぽっかり 置き忘れ」
  出水市 御領満 2012/10/29 毎日新聞鹿児島版掲載

たまには

2012-10-29 21:14:06 | はがき随筆


 日差しも柔らかくなったので、リュックにスニーカーで歩いてみる。緩い坂道を登るとバス道路に出る。彼岸花の赤や白。ピンクのかわいらしいネジ花も目を楽しませてくれる。高山川を渡る。橋の真ん中辺りで川面を眺めるのが好きなのだ。
 小魚たちが列をなし、上流に向かって頭を並べている。色とりどりの小石も輝いている。大きなコイがゆうゆうと横切り、姿を見せてくれた。
 帰りは小雨の中、ピンクの雨傘としゃれる。この日は6040歩。快い疲れと爽快感。たまに歩くのも良いものだ。
  肝付町 永瀬悦子 2012/10/28 毎日新聞鹿児島版掲載

お母さんコーラス

2012-10-27 21:56:03 | アカショウビンのつぶやき


今年も歌いました。
鹿児島県お母さんコーラス・合唱祭。
今年は県内各地から55団体が参加し、
コスチュームもいろいろ。楽しい演出もあり、
それぞれが練習の成果を発表しました。






信愛コーラスは、
なかにしあかねの女声合唱曲集「よかったなあ」から

「小鳥たち」と
モーツアルトの「アレルヤ」

毎年選曲に時間がかかるのですが、
今年の「小鳥たち」は、全員が「歌いたい!」
と選んだ曲でした。

小鳥たちは
あんな小さな鳥ですから
めいめい 自分の夢からか
神様の夢からか
夜のあいだだけは
その体が みんな くちばしの方へと
すぼまっていき みんなで つながって
ながい ながい 一本の笛の音になって
銀のいとのように…

ファンタジックな詩は、まだまだ続きます。
ともすれば、一本調子になりそう。

「詩を読むように、感情を込めて歌いましょう。」
「表情に気をつけましょう」

何回も注意されながら、本番はどうだったかなあ。

明後日は、本番のMDを聞きながら反省会です。
聞くのがこわい-。



再出発

2012-10-27 21:49:01 | はがき随筆
 仕事大好きな主人が後継者もいないしと余力を残し、かっこいいやめ方をした。私はこれから人生が始まると口笛を吹きたくなる気分だった。2人で家庭菜園、水泳、パソコンと思いをはせた。今ではすべて私の楽しみに。主人は「こいじゃいかん」と言いながら楽しみを見つけることができず1年半。不完全燃焼でくすぶっていた時、久しぶりの阿久根港のイワシの豊漁で火が付いた。古い乾燥機の修理をしながら気分全開。ついに仕事再出発となった。今夜の食卓には菜園でできたブロッコリー、トマト、里芋とイワシの塩干しが並んだ。あと何年…。
  阿久根市 的場豊子 2012/10/27 毎日新聞鹿児島版掲載

やっとゴール

2012-10-27 21:31:17 | はがき随筆


 やっと米の収穫にこぎつけた。秋空の下、コンバインが最後の1株を刈った。「終わった」。田植えから100日余。今年は秋の晴天続きが幸いした。が、手間がかかった。田植えまでの水田耕。植えてからの朝夕の水管理。悩んだジャンボタニシの駆除。あぜの草刈り。病虫害の駆除。スズメおどし。台風の心配などだった。そして、何よりも第4コーナーで少し倒れた。しかしやっと汗が報われた。夕食時、老夫婦で「乾杯! 乾杯!」だった。
  出水市 畠中大喜 2012/10/26 毎日新聞鹿児島版掲載

お願いします。

2012-10-27 21:24:39 | はがき随筆
 CDから流れるサックスの生演奏。それは「ジャス&スクリーンミュージック」。
 60年代の曲は懐かしく、過ぎ去りし日に連れ戻されていく。その昔、ラジオから流れる音楽に魅了され、亡き夫とダンスをしていたことが思い浮かぶ。
 スカートの両端をつまみ、「お願いします」と、足を出すと仕方なさそうに立ち上がる夫。
 私は背伸びして踊っていた。思い出すとちょっぴり感傷的になる秋の夜である。
 サックスの甘く切ない音色は私の気持ちをかき立て、笑顔の写真にそっとつぶやくのです。
 「お願いします」
  鹿児島市 竹之内美智子 2012/10/25 毎日新聞鹿児島版掲載

カップル

2012-10-27 21:19:13 | はがき随筆
 思い出がわき上がると、私の中でカップルが生まれる。
 娘の睦美がベビーだった頃、手と足は、ずんぐりむっくり不格好。柔らかくてピンクのはちきれんばかりの肉のかたまりで、つい吹き出してしまったものだ。愛犬ジョンがうちに来たときも、手と足がずんぐりむっくり、象のようにごつくて不格好でおかしかった。歩けずにころがってばかり、かわいい顔をしてクンクン鳴いていた。
 「母さんの思い出の中であなたとジョンはカップルよ」と言ったら、睦美が目を三角にするだろう。いつか言ってみようとチャンスを狙っている。
  鹿屋市 伊地知咲子 2012/10/24 毎日新聞鹿児島版掲載

秋の夜風

2012-10-27 21:13:39 | はがき随筆
 寝付かれない夜だ。障子に映る影絵に誘われて庭に出た。
 満天の星。静かな晩だ。
 心が洗われる? そのようなハイカラな気持ちなどない。月には思い出も多く、歳月だけを感じる。
 その時、ピーポ、ピーポ。
 近くで鳴りやむ。どこだろう。この音はいつも静寂を破る。
 あちこちのお年寄りの顔が浮かんできた。
 大事に至らなければよいがと願う。
 夜も更け、外気は冷たい風。救急隊の方もご苦労さま。
 この夜風はもう「おなごだまし」ではない。
  姶良市 山下恰 2012/10/23

家族の心に亡父の姿

2012-10-26 17:56:39 | 岩国エッセイサロンより
2012年10月21日 (日)
   岩国市   会 員   横山 恵子

 毎月やって来るめい夫婦と1歳6カ月の子ども。先日来るなり、仏壇の前で手を合わせた。

 2歳7カ月の孫は、私の手を引いてろうそくを指さす。付けてやると線香に火をともして手を合わせた。「ひいじいちゃん、喜んでるよ」と頭をなでてやると、うれしそうな顔をした。

 父が事故で亡くなって半年。悲しみも、孫たちのあどけないしぐさに癒やされる。

 父は公務員を定年で辞めて後、福祉施設で76歳まで働いた。退職後は庭の一角で、無農薬野菜作りに精を出した。

 父亡き後、長男一家が草取りに来た時、長男が突然大声で「すご―い。棒がずず― っと入って行く」と叫んだ。そういえば父は「畑づくりは土地づくり」と言って、堆肥を作っていた。

 末っ子が「おじいちゃんの頑張ってる後ろ姿は目に焼き付いているよ」とも。たとえ肉体はなくとも、魂は心の中で生き続けるものと思う。これからも何かにつけ、思い出しながら生きていくのだろう。ありがとう、父さん。

   (2012.10.21 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載

「どっちかなー」

2012-10-26 17:53:43 | 岩国エッセイサロンより
2012年10月19日 (金)

    岩国市  会 員   吉岡 賢一

 満1歳の誕生日と定年退職が重なったあの日から、ジジの暇つぶしであり遊び相手となってくれた初孫君。今や小学6年生。ここ1、2年はお友達との付き合いやスポ少の練習、英会話塾などでジジ、パパに付き合っている暇がない。それでも、自分の一大事には間違いなくやってくる。
 今回は修学旅行で、北九州や下関、山ロヘ行くという。「楽しんでおいで」。白い封筒を渡す。二ッコリ、とろけるような笑顔で「ありがとう」。おむつを替えながら、寒さに震え暑さをしのいで公園をはしごした日々。感謝するのはどっちかなー。
   (2012.10.19 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

我が家の秋の味覚です

2012-10-25 22:42:45 | アカショウビンのつぶやき


事情がいろいろありまして、最近は更新が滞っております。
折角おいでいただきました方々、ホントにゴメンナサイ。

今日は久々にちょっと時間ができたので…。
我が家自慢のフルーツをアップします。

フェイジョアの季節になりました。
毎日、ボトボトと落ちています。
フェイジョアは、枝をゆすって落ちたときが食べ頃。

毎朝、ゆさゆさと揺すっては拾います。
今年は台風の被害がなかったので、
摘果のチャンスがありませんでした。
そのため小粒ですが、香りもよくお味も申し分ありません。
毎年楽しみにしてくださる方々に召し上がっていただきます。


今日は、立派な、からいも(サツマイモ)と、ムベをいただきました。



本当に久しぶりのムベをおいしくいただきました。


あら、まあ

2012-10-25 18:30:18 | はがき随筆
 夏休みに帰省した孫娘ナディアは、認知症の曾祖母が気になって仕方がない様子でした。
 「ナアちゃんよ、分かる?」
 「うん」とうなずけば大喜び。
 「由井おばあちゃんは誰がお世話するの? ママは私がみるのよね」
 小学3年生なりに考えている感じでした。 
 帰る朝は大粒の涙を流して「ひいおばあちゃん、お願いだから、ひとこと語ってよ」と言っていました。
 iPad(アイパッド)に、可愛いダンスと、私のほうれい線入りの似顔絵を残し、帰っていきました。
  阿久根市 別枝由井 2012/10/22 毎日新聞鹿児島版掲載

生まれ変わる

2012-10-25 18:25:18 | はがき随筆
 郷里の出水の自宅の車庫と倉庫を解体することになった。
 この車庫と倉庫は、長年さくさんの人たちの役に立って生きてきた。その思い出を、こんなこともあったね、そんなこともあったねと、母と語る。
 やがて、車庫と倉庫は、静かにその役目を終え、広々とした広場に生まれ変わった。
 近所の方々も、その広場を眺めて、きれいになりましたねと、皆ほめてくださる。私も母もうれしい。車庫も倉庫も広場も喜んでいることだろう。
 新しく誕生した広場は、これからまた新しい歴史をつくっていく。心からありがとう。
  屋久島町 山岡淳子 2012/10/21 毎日新聞鹿児島版掲載

サプライズ

2012-10-25 17:58:23 | はがき随筆
 昭和37年度、松山中卒業生の教え子たちの同窓会が名古屋で行われ、招待された。特に卒業50年を記念しての同窓会だからどうしても都合をつけて出席してほしいと、往復の航空券まで送ってきた。当時の卒業生の多くは関西や中京などの工業地帯に集団で就職し、名古屋市周辺には多くの物が在住している。
 還暦同窓会に続いての同窓会だが、五十数人が参加の予定だという。ただ私の出席は幹事数人で決めたサプライズだという。
 当日は幹事の手配通り部屋に待機し、集合写真のセットが終わったその時、サプライズは解かれた。
  志布志市、一木法明 2012/10/20 毎日新聞鹿児島版掲載