はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ペンクラブ大隅 秋の勉強会

2016-10-06 06:16:33 | 毎日ペンクラブ鹿児島




恒例の秋の勉強会を、リナシティで開催。
毎日新聞・鹿児島支局長も参加してくださり
それぞれが持ち寄った、ショートエッセイを まな板に乗せ、
言いたい放題? に、批評し合う。

中には厳しい指摘もあり、自分では気づけぬ所を学び合う貴重なひととき。

Tさんの差し入れ、新米の美味しいお赤飯をいただきながらの、和やかな歓談がまた楽しい。

そして最後に支局長の講評。

みなさんお疲れ様でした。次は4月第一土曜日にまたお会いしましょう。

by アカショウビン 



健康一番は宝もの

2016-10-06 06:14:27 | はがき随筆
 健康一番には早寝早起きの規則正しい生活を営む。健康は一番の宝だと肝に銘じる。早起きは心身共に快いものだ。今日を爽快に歯車が回り、つつがなく一日を暮らせよう。異常気象の猛暑に人も万物も枯れ果てる。ラニーニャ現象が発生し、熱風のごとき砂漠地帯にたたずんでいる。熱中症で倒れる人もいる。食事も睡眠もしっかりと取る。暴飲暴食はしない。塩分は1リットルに2㌘を取る。スイカもいいね。梅干しはクエン酸を含む。夏の体には最適。暑さを吹き飛ばすには好きな趣味を生かそう。自分が一番よく知る、健康が一番を大切に……。
  姶良市 堀美代子 2016/10/6 毎日新聞鹿児島版掲載

雨の音

2016-10-06 05:59:21 | はがき随筆
 近くの学校に垂れ幕がある。生徒会スローガンで「水滴石穿」とある。わずかな一滴ずつでも固い石に穴をあけるように、努力を繰り返す大切さを掲げたものなのだろう。我が家の雨どいの下にもなるほど穴があいている。今夏の豪雨のせいかもしれない。大粒の雨音を聞く度に被災地のご苦労をよく想像する。被災した方々がいま取り戻そうとしているのは地震以前の日常である。私は毎日の家事、育児を一つ一つは大したことではないと思ってしまう。けれど、それらを日々繰り返せるということは、実はかけがえない幸福ではないのか、と改めて思う。
  出水市 山下秀雄 2016/10/5 毎日新聞鹿児島版掲載

新米の季節 眺め楽しむ

2016-10-06 05:50:31 | 岩国エッセイサロンより
2016年10月 6日 (木)
   岩国市   会 員   片山清勝

 近くの小学校のブロック塀の内側から、黄金色に実った稲穂がのぞいた。毎年この時期の散策の楽しみにしている。刈り取りが終わると、はぜ掛けで天日干しされる。
 私には米作りの経験はないが、毎年、妻の実家から届く新米で季節を味わっている。
 伝来の田んぼを守る義兄に感謝しながら、新米の味と香りを楽しむぜいたくは格別である。
 その新米の行き先がある。京都に住む孫はご飯が大好きで、帰省しても3食ご飯を食べる。そんな孫にお裾分けする。
 「秋の文化・体育行事や受験準備も頑張っている」と嫁が孫の様子を知らせてきた。新米を食べて思いっきり活動してほしい。
 昭和の半ばごろまで田や畑だった一帯は道路が新設され、次第に街の姿に変わり、稲穂は散策で見られなくなった。
 街中の小学校で続いている米作り授業は、日本の農業を引き継ぐ一助になると稲穂を眺めながら思う。

    (2016.10.06 中国新聞「広場」掲載)

箸を正しく持ちたい

2016-10-06 05:49:21 | 岩国エッセイサロンより
2016年9月30日 (金)
山陽小野田市  会 員   河村 仁美

身だしなみよりも、学歴よりも周りの人をがっかりさせるのが箸を正しく持てない人だと言われる。恥ずかしながら、お箸の使い方に自信がないまま、この年まで来てしまった。だから、食事シーンでは料理よりも箸の持ち方に目がいってしまう。
 ヒマワリの種を箸で隣のお皿に運ぶゲームを見ていたら、優勝した人が「おばあちゃんのおかけです」とコメントしていた。聞きながら次女に箸の持ち方が上手な理由を聞いた時のことを思い出した。「おばあちゃんの箸の持ち方が上手だから、持ち方をずっと観察したの。そして同じように持てるように練習したの」というではないか。
 3歳の孫は婿さんのおばあちゃんの特訓のおかけで2歳から箸を上手に使いこなす。
 箸を使う機会は毎日のようにあり、一生関わり続ける。今まで何度となく試みながらも克服できなかったが、孫に負けないように今年こそは直してみたいと敬老の日に思った。  
  (2016.09.30 毎日新聞「みんなの広場」掲載)

声三つ

2016-10-06 05:45:35 | はがき随筆
 裏の畑に出て、たくましく生い茂った草をながめていると、「ジー、ジー、ジー」と一斉に鳴き出すセミの声。今年は、セミの声が早かったような気がする。
 大きく育った陽ちゃんざくらの木を見上げると、あっ、あそこにもここにもとまっている、とまっている。1匹、2匹、3匹……。5匹ぐらい見つけた。すると「あんまり見上げていると、おしっこをかけられるよ」と母の声。その向こうでは、おいっこ家族の子どもたちのにぎやかな声。
 夏のひと時にみつけた声三つ。
  出水市 山岡淳子 2016/10/4 毎日新聞鹿児島版掲載

駅長ニャン太郎

2016-10-06 05:39:56 | はがき随筆
 入道雲の横にいわし雲……。夏から秋へと移りゆく日に、肥薩線レトロ駅舎で心温まる猫と若いカップルとの出会いがあった。招き猫は突然現れて駅長に任命され、人なつっこく愛くるしい姿を一目見ようとたくさんの人がこの駅舎を訪れていた。そこに無心にカメラを向けていた若いカップル。「モジョかね~」と話しかけたが、返事が……。あ~聴覚障害の方と気づき自然と手ぶり身ぶり。「魅力的なニャン太郎でハズンダそしてワルタ」。心が通い合うことのうれしさと、ちょっと声をかけただけでこんな気持ちのいい出会いが。ふと僕はそう思った。
  さつま町 小向井一成 2016/10/3 毎日新聞鹿児島版掲載

田中健一郎さん

2016-10-06 05:33:25 | はがき随筆
 カレのことをわが家では「タナケンさん」と呼んでいる。「あなたの著書『高千穂スケッチ』を送ってください」というカレの突然の便りが知り合うきっかけだった。都会からIターン組。アクティブ派。マジシャン。元は大会社の大社長(?)――。カレについてはその程度しか知らない。一度妻のグループ絵画展にお越し頂き、そのとき顔写真だけ拝見できた。私は「自分に一回り年上の兄さんができた!」と勝手に決めた。兄さん! これからも「万能川柳」「はがき随筆」であなたの後を追いかけるつもりです。ご自愛のほど……。
  霧島市 久野茂樹 2016/10/2 毎日新聞鹿児島版掲載

ち寄り湯

2016-10-06 05:25:46 | はがき随筆
 鹿屋に帰省の途中、日当山の西郷どん湯に立ち寄った。やや深めの湯船につかる。初めての湯はいつもドキドキやなー。手足を伸ばし、昼間から良か気分で小原庄助さんの気持ち。しばらくして青い目の青年が入って来た。お主、何人かと問うとスウェーデン人で、日本の温泉大好きという。明日は指宿を訪ねるとのこと。指宿は俺らの庭やがな。ほっとく訳にいかない。
 翌日、砂むし、うなぎ温泉各所を案内して、夕刻駅で別れた。ラーメンの味は忘れないと笑顔で手をふる。案ずるな、旅は道ずれ、世は情けや。達者でな。いつかどこかで会おうぞ。
  指宿市 有村好一 2016/10/1 毎日新聞鹿児島版掲載

年齢詐称

2016-10-06 05:18:57 | はがき随筆
 2年前「愛犬は17歳」で載った。そのときも目、耳は不自由ながら可愛い仕草で一日の疲れを癒してくれた。息子が「飼えなくなった」と連れて来てから逆算して17歳のつもりだったが、先日、血統証明書がでてきて、1999年4月2日生。現在17歳5ヶ月。年齢詐称。
 今年の激暑でついに両手足とも不自由になり、寝たきりの介護犬になった。両肩両腰が床ずれになり、痩体の大半が大きなカットバンで痛々しい。2、3時間おきの体位転換である。朝一番息をしているのを見て「ホッ」。反面、この痛々しさから解放してあげたくて……。
  阿久根市 的場豊子 2016/9/30 毎日新聞鹿児島版掲載

料理教室

2016-10-06 05:10:49 | はがき随筆
 昼になり「そろそろこの番だな」と箸を持つ夫。元気で何でも食べてくれるのだが、3食の賄いに頭をこまねいている者にはいささかかちんとくる。とはいえ趣味優先で手抜きが増え、やる気がないのも確か。そこで市の料理教室に入会した。4、5人のグループで手際よくレシピをこなすのも年齢や個性が違って難しい。しかし指導者の言葉一つでなるほどと納得し出来上がっていく。健康目的で野菜中心の献立。かねて作る料理でも、ひと手間かけることでおいしくなることを学ぶ。でもやる気の信号は青ではなく黄色が点滅している。
  薩摩川内市 な中由利子 2016/9/29 毎日新聞鹿児島版掲載

夕顔

2016-10-06 04:59:03 | はがき随筆


 金子みすゞの詩で、誰もさわらないのにパラリと開く夕顔ってのがありますが、夕顔は夕やみせまる頃に、徐々にではなく、一瞬に咲くのです。 
でも今年の夏は風船のようにふくらむだけで、咲くことはありませんでした。朝、しぼんだ風船夕顔を見て、何故? 今年の夏は猛暑で夜中になっても気温は下がらず、夕顔にしたら夕刻がない。諦めていたら、9月になり咲いたのです。パラリとではなく、徐々に渾身の力で……。パチパチ、ヤッター。ありがとう。これからの地球温暖化について深く考えされられました。
  鹿児島市 永野町子 2016/9/28 毎日新聞鹿児島版掲載

ホウセンカと故国

2016-10-06 04:41:32 | はがき随筆


 私には、悲しいイメージがつきまとってしまう、ホウセンカの花が数本庭に咲いた。「鳳仙花」という、韓国の悲しい歌を聞いたことがあるからだ。
 どうやら、済州島や日本に連れてこられた韓国人たちが、故郷に帰りたいという思いを歌にしたものらしい。赤いホウセンカの花は実になった後、種がはじけて跳ぶ。その実のように遠くはじけて古里にかえりたい、と願ってつくられたという。
 庭の枯れたホウセンカの花はついに、実をとばせなかった。
 出水の飛行場建設で働かされた韓国の人たちは、戦後、何人、故国へ帰られただろうか。
  出水市 小村忍 2016/9/27 毎日新聞鹿児島版掲載