はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

コンサート

2007-09-30 18:37:49 | はがき随筆
 大隅地区初の社会人吹奏楽団として結成された鹿屋吹奏楽団が20年を迎えた記念コンサートに出かけた。
 会場は、まだ木の香り漂うリナシティかのやのホール。年1回の定期演奏会とは一味違う趣向が凝らされ、ステージと客席との一体感をとても感じた。各ステージ前の解説、指揮者は数人の団員が交互に行い、客席に背を向けている指揮者の後ろ姿からも楽しさが伝わり、私も自然にリズムを……。
 マーチあり、民謡メドレーありで、しばし厳しい残暑も忘れ、余韻をしっかり持ち帰った。
 1月の定演が楽しみだ。
   垂水市 竹之内政子(57) 2007/9/30 毎日新聞鹿児島版掲載

実りの秋

2007-09-29 20:52:43 | アカショウビンのつぶやき





 遅くなってから頂いた、ひょろひょろのニガゴリが酷暑をものともせず、ぐんぐん伸びてきた。でも、なかなか雌花が咲かないので、半ば諦めていたが、葉っぱの陰に三つもぶら下がっていた(*_*)、エーッこんなに大きくなるまで気がつかないとは…。
 ちょっと早いかなと思いつつ、その一個を塩もみし、おかかをたっぷりのせて夕食に、うーん美味しい(*^o^*)。
チャンプルーもいいけれど、料理とも言えないようなこの一品が一番好き。これから幾つ収穫できるだろうか…楽しみだ。

10年近く前に姉が植えてくれたイチジクは、何故かちっとも実が生らず、伐った方がいいかなと思っていたが、今年たった一個の実をつけた。
熟れる前に落ちてしまうかもと案じていたが、小さいながらも奇麗に色づいたので、貴重な一個を今日食べてみたら、まあー美味しい。

食欲の秋を満足させてくれた、ニガゴリとイチジクに感謝して今日はたっぷり水をかけてやった。

頂いた手紙

2007-09-29 20:10:26 | はがき随筆
 秋の日々の中、今まで頂いていた手紙を整理した。
 再読する中に、一人の方より7通もの封書に込められた、優しさのあふれる激励に改めて感動の思いが……。
 文中に、家族への感謝、奥様を亡くされた時の心境、誰にも語らない深い文意も含まれている。お手紙をご家族にお返しして差し上げる方が、父の家族への思いが伝わり、遠い空より喜んで頂けると思う。
 庭に咲いている紫式部を眺めると、亡き人の温かさが再び、心によみがえる。
   鹿屋市 小幡晋一郎(75) 2007/9/29 毎日新聞鹿児島版掲載

水の泡

2007-09-28 07:30:32 | はがき随筆
 我が家の一人息子、遼太郎の行水には手を焼く。残暑厳しい真っ昼間、嫌がって四肢を突っ張り抵抗するのを何とか座らせる。左手で首根っこをつかみ、妻がシャンプーを掛けるのに沿って洗う。洗いにくい所はほとんど手抜き。洗いやすい背中中心。迷惑そうな遼太郎の目に妻が負けて、じょうろのシャワーで泡を流す。ふいてやろうとタオルに手を伸ばした一瞬、手から離れた遼太郎は身を震わせて水を切り、大地を転げ回る。妻と顔を見合わせ苦笑するのが精いっぱい。犬には言葉が通じない。しかし通じるが故に、親子殺し、祖父殺しがあるのは悲しいな。
   志布志市 若宮庸成(67) 2007/9/28 毎日新聞鹿児島版掲載

杞憂

2007-09-27 09:02:34 | はがき随筆
 毎日の新聞の占いに一喜一憂している。今朝も真っ先に運勢欄を読む。
 天秤座 手強い恋敵出現。対抗策は一に優しさ、二にまめさ。
 すわ一大事。恋敵にしてやられる。胸の鼓動が激しくなる。優しさは持ち合わせていない。「まめ」なんて我が辞書になし。この2点、長年連れ添った妻に未だに涙ながらに責められる。このままでは恋敵の思いのままだ。ああ彼女は早くも人の物になってしまうのか。完敗だ。俺の人生真っ暗だ。
 ふと「今のお前に彼女などいるのか」と冷めた声がどこからともなく聞こえてきた。一瞬の悪夢だった。
   肝付町 吉井三男(65) 2007/9/27 毎日新聞鹿児島版掲載

かのやくるりんバス

2007-09-26 17:30:21 | アカショウビンのつぶやき






  昔から「陸の孤島」と言われ続けた鹿屋市
 JR大隅線は20年前に廃線となり、市民の唯一の足だった大隅交通ネットワークは昨年11月、事業縮小で、赤字路線を大幅に廃止したため、ますます不便になってしまった。地方ではマイカーなしでは生活できない、都会と地方の格差はますます広がるばかり…。
そこで登場したのが、コミュニティバス「かのやくるりんバス」。
鮮やかなブルーに、バラの町鹿屋のシンボル、大きなバラを描いた小型バスが、市街地の二つの路線を一日3往復走ることになった。

 午前10時から始まる教会の集会や、コーラスの練習に丁度よい便があったので、今日、初めて乗ってみたが乗客は私だけ…(>_<)。
マイカーよりも地球にやさしい乗り合いバスなのに。
もう少し便数が増えると利用しやすいのだろうが、不便で利用しない→採算が合わないから便数カット→ますます不便…の悪循環になってしまう。
病院通いや、温泉に行く高齢者の利用が多くなるかなと期待したのだが…。地方とうまく繋がらない今の路線では難しいのかもしれない。
ともあれ、この可愛い「かのやくるりんバス」いつまでも皆さんに愛され多くの方に乗って頂けるバスとなりますよう祈ります。

ごちそうさま

2007-09-26 17:08:30 | はがき随筆
 姶良町の妹夫婦から「子供たちから贈られた食券があるが、主人が忙しく食べに行けないので兄さん、付き合って」と電話。一応遠慮したが、食券がもったいないと言う。じゃ、ごちさうになるかと約束する。地元の京セラホテルだ。ありがたい。当日朝、軽食で食欲を蓄え、12時を待って妹と窓際に陣取る。高級食材の豪華な料理が間合いよく運ばれてくる。ゆっくりと賞味する。おいしい。残してなるものかとバンドを緩める。だが我が腹にも限界があった。既に食堂は満席の盛況だ。久しぶりに妹の話術に誘われ、昔日の懐かしさにひたる一時だった。
   霧島市 楠元勇一(80) 2007/9/26 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆8月度入選

2007-09-25 10:39:07 | 受賞作品
はがき随筆8月度入選作品が決まりました。
△ 薩摩川内市高江町、上野昭子さん(78)の「悲しい記憶」(14日)
△ 出水市高尾野町唐笠木、岩田昭治さん(68)の「幸せな夏、夏」(30日)
△ 出水市緑町、道田道範さん(58)の「遠い夏の一ページ」(29)
の3点です。
 秋彼岸の9月です。8月度は62回目の終戦記念日を迎えました。この日の前後に思い出を持つ方からの文章が数点届きました。
 上野さんの 「悲しい記憶」は、美しい月夜に宿泊先で家族を語り合った艦の青年乗組員たち、停泊中の翌日に攻撃を受け赤く染まった海に帰らぬ人となった彼らを対照的に書き、きれいな文章にまとめました。最後の、瞳の中の月と赤い海との対比も良いですね。また、池田春美さんの 「忘れない日々」(10日)は、終戦5日前、空襲で生家が焼けすべてを失ったのですが、そのことを文の始めから体言止めで協調しました。失ってしまった14歳までの自分を知りたい、と末尾を歌で結びました。シャレてますね。
 さて、月末に夏休み特集が組まれました。どの作品もすぐれたものばかりでした。
 岩田山の「幸せな夏、夏」は、大学の通信教育のスクーリング受講体験記です。まず障害学び続ける姿勢に敬服しました。また、若者と交流する様子がよく書かれています。夏、夏と重ねた題目が、恵まれたホットな浪を感じさせますよね。
 道田さんは、高校生の夏休みに川漁師のお父さんのアユ漁の仕組みとアユの動きがよく書かれ、大量のアユの運搬には、スピードも感じられます。「遠い夏の一ページ」文字どおりセピア色の映像を見る思いです。お父さんの行動の描写には「落ち」があり面白いですね。一木法明さんの「夏の思い出」(31日)は、少年時代の夏休みの楽しみがうまく映像になりました。
 田中京子山の「夏の旅人」(28日)は、暑い夏は苦手と決めて行動しなかった自分に気づき、夏の旅人になってさわやかな夏を過ごした体験です。来年も挑戦しようと前向きの勢い、元気がでますね。
 皆さん良い夏でしたね。
 (日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)
 
係から
入選作品のうち1編は29日午前8痔20分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。「二見いすずの土曜の朝は」の「朝のとっておき」です。

メッセージ

2007-09-25 08:59:19 | はがき随筆
 娘たちの手料理が出来上がり、恒例の家族敬老会がありました。
 毎年楽しみにしているのが孫たちからの御祝いのメッセージ。最年少の保育園児の私の似顔絵に驚嘆し、奉仕肩たたき券つづりの入ったお手紙。夏休み中に果たせなかった焼き肉大会を改めて催促する食いしん坊の孫。紙面いっぱいに細長い大きな字で「150歳まで長生きしてください」と流し書きしている孫。じいちゃんばあちゃんの優しい笑顔がいつまでも見られますように、と一人姫孫の思いやり。
 毎年のメッセージに孫たちの成長を感じ、余生への元気を頂くのでした。
   鹿児島市 春田和美(72) 2007/9/25 毎日新聞鹿児島版掲載

赤字県政

2007-09-24 22:17:41 | かごんま便り
 Aさん方の年収はおよそ114万円。だが222万円の借金があるのに対して、貯金はわずか5万円弱――。
 県財政の状況(05年度決算)を1世帯あたりの数字に置き換えるとあらかたこうなる。現在は借金がスズメの涙ほど減った代わりに、貯金はぐっと減って2万円を切り、状況はさらに悪くなった。
 もちろん、これは数字として表れるお金だけの分析で、もろもろの資産は含まれない。道路や橋、河川整備、公的施設などへの公共投資は、建設時点では相応の費用がかかるが、できてしまえば財産になる。それでも、貯金がほとんど底を尽きかけている時に、年収の倍近い借金があるのは気持ちの良いものではない。ぜいたくと無縁な暮らしの中でも、借金は一定額を返済し続けなければならず、がけっぷちの生活を迫られていると言える。
 今後も多額の財源不足が避けられない危機的状況の周知を図ろうと、県は4日から職員への説明会を開催、このほど一巡した。財政課の説明では、47都道府県で県の人口は全国24位だが、06年度の当初予算額は17位。そのうちの普通建設事業費は9位、借金返済に充当する公債費は13位、前年度末の借金の残金である地方債残高は14位という。県の規模の割に予算額の諸項目が高めなのが分かる。早い話が「身分不相応」ということだ。
 県土が広く山間地や多くの離島を抱え、しかも自然災害の常襲地帯。高齢化率も極めて高い。他県よりコスト高の要因はあるが、県の財布を圧迫している主因は明らかに、威容を誇る県庁舎をはじめ過去に箱物に投じてきた巨費のつけだろう。
 先日ある新聞に「佐賀県『3年後破産』」という扇情的な見出しが踊った。かつて佐賀県政を担当したので、少々いぶかしく思い、よく読むと「今の状況を放っておけば」の条件付き。支局の県政記者に話を向けると「同じ条件なら鹿児島県はとっくに破産してます」と一笑に付された。確かに佐賀県の借金は予算規模の約1.5倍弱で、鹿児島県よりかなりましである。
 赤字財政に苦しむ全国の自治体の中でも、鹿児島県の状況は目立って悪い。県財政課は、今後さらに縮減が求められるのは人件費の他に普通建設事業費と一般政策経費という。ならば県職員向けにとどまらず、一般県民にももっときちんと説明すべきだと思うが……。
  毎日新聞鹿児島支局長 平山千里
  2007/9/17 毎日新聞鹿児島版掲載

Mさんに感謝

2007-09-24 21:44:48 | はがき随筆
 芙蓉の花が一輪ずつ咲き、挿し木のトマトが赤く色づき、ヤマイモの葉の付け根に、むかごが多くできている。庭では、雑草とこぼれ種で咲いた花が元気だ。しかし、私は猛暑に体力も気力も失い、書の社中展の作品も書けず、目標は何一つ達成できなかった。心の弱い甘えが恥ずかしい。
 知人のMさんは胃を摘除し、抗がん剤の治療を受けながら大阪から励ましの言葉や便りをくれる。それに応えたい。気はあせるが回復は遅い。
 今日、シルバー作品展でやっと小さな賞を受けた。青空にさるすべりのピンクがまぶしい。
   薩摩川内市 上野昭子(78) 2007/9/24

南瞑館

2007-09-23 08:54:22 | はがき随筆
 鹿児島評論で取り上げられた枕崎市・南瞑館での「風の芸術展」。私とめいと2人で、8月26日の「風のコンサート」に出演してハープを弾いた。
 楽器の搬入口などを調べるため、事前に現地を訪ねてびっくり。上品な木造の館、人肌の感触がする広々とした木のフロア、半円形のステージのある瀟洒な音楽ホール。建物も周辺もすべてが芸術品。すばらしい。眼下には青い海も。
 力不足で、大きなへまをしたコンサートになってしまったが、木の香りに癒されたのか、すがすがしい余韻が残った。
   鹿児島市 馬渡浩子(59) 2007/9/23 毎日新聞鹿児島版掲載

思いつき

2007-09-23 08:47:56 | はがき随筆
 80歳を過ぎたころから視力が衰えて、小さな活字が読みづらくなってきた。大好きな読書に支障があるが、目は見えるだけで良いと思っていた。しかし、読めないことはつらい。
 そこで好きな詩歌、俳句などを抜粋して手書きの本を作ることにした。まず帳面を作り、筆ペンで、眼鏡なしで読める大きな文字で写してゆく。
 まず旅と風雅の人の作品から始め、西行、良寛、芭蕉、牧水、山頭火。つづいて「いのちの歌」「花と人生」「心に風の吹くとき」「さくら秀歌」「名詩抄」と10冊作成した。小冊を傍らに視力対策に励んだ今年であった。   
   肝付町 竹之井敏(82) 2007/9/21 毎日新聞鹿児島版掲載

白い顔

2007-09-21 14:25:48 | はがき随筆
 4月吉日。同じ学級のJからハナトラノオの小株を震えるような手でもらい受けて庭の隅に植えた。やがて淡くやさしい紫色の花が咲いた。そのころ私は、すらりとしてお下げ髪のJにあこがれていた。そんな日、無人の廊下で水音に誘われ、蛇口の下のトレーをのぞくと、現像したての写真が水中で揺れ動いている。中の1枚に、木にもたれ遠くを見つめるJの白い顔があった。思わず見入っていると人の気配がして慌ててしまった。あれからもう50年近い。15歳の春、集団就職列車で行ってしまったJ。今でも木にもたれたJの姿がふと思い浮かぶことがある。
   出水市 中島征士(62) 2007/9/21 毎日新聞鹿児島版掲載

命のリレー

2007-09-21 09:52:08 | はがき随筆

 9月中旬に行われた、がん患者さんを対象にしたイベント「つなげよう! 命のリレー」に参加予定だったが、どうしても都合がつかなくなった。
 がんと闘う子供たちへ届けられる千羽鶴を折るため、事務所内に折り紙と箱を設置したのは7月初め。昼休みに職員が1羽、2羽と折ってくれる。
 私は、せめてたくさんの数を、と始業前や、家に持ち帰って折ったりした。台風で家に閉じこめられた日は文字通り一日中、三角に四角にと流れ作業のように100枚単位で折っていく。
 イベント前日、総数は3032羽となった。この思いが届きますように。
   鹿児島市 本山るみ子(54) 2007/9/20 毎日新聞鹿児島版掲載