はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

出会いに感謝を

2013-01-30 18:09:20 | はがき随筆
 私はこれまで教育委員などのいくつかの公職を経験しましたが、中でも保護司は昨年の3月まで28年間勤めました。終わりの8年間は地区の会長として県内各地の会長とも交流を深める機会に恵まれました。
 「人は出会いの数ほど成長する」という言葉を聞いたことがあります。県内各地で、罪を犯した人の更正や、非行や犯罪のない社会を目指して、懸命に取り組んでおられる方々との出会いは、私の人生観を深めてくれました。
 退任して、再会の機会はなくても、出会いに感謝し、今後の生活に生かしていきたい。
  志布志市 一木法明 2013/1/29 毎日新聞鹿児島版掲載

流れ着いた物

2013-01-30 18:02:09 | はがき随筆
 高知県に、海岸を美術館にしている海沿いの町がある。砂浜が美術館なので、松原の景色や沖を泳ぐクジラなどが美術品だ。さらに、流れ着いた漂流物もすべてが。そこを訪れた娘から、お土産が届いた。
 帰宅してポストを開けると、郵便物の中からゴロンと黒い物体が転げ落ちた。縦横10×20㌢ほどの流木だった。通常送るには袋に入れる。娘はそのままの姿で送りたくて、迷惑を顧みず近くの郵便局員に依頼した。
 彼の暖かい心の波で運ばれ終着地に届いた。流木には国際文通週間のきれいな切手が貼られ、美術品として完成していた。
  鹿児島市 高橋誠 2013/1/28 毎日新聞鹿児島版掲載

心地よいねぐら

2013-01-30 17:56:30 | はがき随筆
 心地よい疲労を感じながら寝床に潜り込み、しばらくしてぬくもりを感じ始めた頃、想像にふける。イノシシの親子も自分のねぐらで同じようよ寝入っているのかなと。
 隣にいるのは、思春期に入った高校1年の長男と違って、まだまだくっつきひっつきしてくれる小学3年の次男である。寒いのか、母親が恋しいのか、2本の足を私の足の間につっこんでいる。寝入りばなの冷たさも、そのうちに、湯たんぽのようにほっかほかになる。寝具を洗濯してくれた妻の思いも味方。
 兄弟の寝顔が似ていることを今更ながら発見。ありがたや。
  垂水市 川畑千歳 2013/1/27 毎日新聞鹿児島版掲載

父と正月

2013-01-30 17:52:14 | はがき随筆
 子供の頃のお正月で思い出すのは父のこと。元日の朝、お茶に梅干しを入れたものを神棚に供え、父を芯に一年のむ゛じを祈願した。そのお下がりを父、母、三人のあね、末妹の私の順に頂いた。次に、謡曲の鶴亀や猩々を聞く。子供には少々苦痛であった。それが住めば町に待ったお節を頂き、百人一首やトランプに興じた。絵心のあった父は手作りの羽子板に日本髪の美しい女性を描いた。娘ばかりで時に寂しい思いをした父。せめて器量よくうまれていたら慰んだろうに。
 鹿児島市 内山陽子 2013/1/26 毎日新聞鹿児島版掲載

「雨の花道」

2013-01-30 17:50:22 | 岩国エッセイサロンより
     岩国市  会 員   林 治子

雨は朝になってもやまない。散歩はビニールの風呂敷を犬の胴体に巻きつけての出発となった。胴長で頭としっぽはまるっきり出ている。太ってもいるので、おなかで洗濯ばさみが踊っている。いつ外れてもおかしくない奇妙なかっぱ。行き交う人はニヤッと笑う。 
芝居好きな友に会った。「花道を『春雨じゃ、ぬれて行こう』でもないじゃろうに。いやにしずしずと歩くのね」「風呂敷が脚にまとわりつくのよ」と言い訳をする。「でも水玉模様とはなかなか粋じゃない」とからかわれてしまった。ちょっと役者気分。雨の散歩も捨てたものではない。

 (2013.01.29 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載


「いたちごっこ」

2013-01-30 17:48:07 | 岩国エッセイサロンより
2013年1月26日 (土)
岩国市  会 員   山本 一

「70歳を機に、今後は年賀状を失礼させていただきます」。昨年の年賀状のち、約50人の方々にこんな添え書きをした。対象は、顔がぼちぼち思い浮かばない年下の方であった。ところが、書く段になって誰に欠礼したのか分からないはめに。メモするのを忘れたのだ。年々怪しくなる記憶頼りとなったが、結果は明白だった。
 新年を迎え、追加年賀状に追われるのはまだよい。「もう出さないはずでは!」と書かれたのが、数枚も遅れて届いた。昨年、欠礼連絡した人からである。退職後10年。年賀状とどう向き合うか、いたちごっこは続く。

(2013.01.26 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

どんど 深まる町の絆

2013-01-30 17:45:59 | 岩国エッセイサロンより
    岩国市  会員  片山 清勝

 今年最初の町内の催しはどんど焼きだった。点火は、会場を訪れた年男と年女が務めるのが恒例である。
 点火の直前、付き添いの人に手を引かれたお年寄りの女性が隣に立った。十数人の点火者にたいまつが配られ始めると、世話役の消防団員が、その女性の手を取って会場の中へ導き、たいまつを一緒に受け取る。
 「点火」の合図に、その女性は消防団員に手を携えられて、積み上げられた縁起物へ火を付けた。瞬間、勢いよく炎が立ち上る。消防団員は、抱えるようにして素早く女性を炎から遠ざけた。
 女性は、勢いを増す炎を安堵した顔で見つめている。炎に照らされるその顔は、点火を果たせた喜びと、消防団員への感謝の気持ちも含まれているのであろう。
 そんなことで、今年のどんどの炎に、これまでにない勢いを感じた。これで今年の町内の安心と安全と絆が強まる、そう思いながら会場を後にした。

   (2013.01.26 中国新聞「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載

体操おじいさん

2013-01-25 13:16:50 | はがき随筆
 仲間3人で毎月2回、体操教室を開いている。受講生と講師はともに70代。
 先日、鹿児島でラジオ体操の認定試験が行われ、私も受験した。九州各地から多数の受験生が集まり、高齢者もいたのて心強い。第1、第2とみんなの体操の筆記試験と実技試験があり、結構難しかった。
 1ヶ月間、テレビ体操のお嬢さんを見ながら特訓したが、家内には体が硬いと笑われた。
 万能川柳にこんな句がある。「もういてもいい体操のおじいさん」。そういえば、私も体操のおじいさん。合格はおぼつかないので、また挑戦したい。
  鹿児島市 田中健一郎 2013/1/25 毎日新聞鹿児島版掲載

「今だったら」

2013-01-24 19:51:14 | 岩国エッセイサロンより
2013年1月22日 (火)

岩国市  会 員   片山 清勝

 子どもの頃から頭が大きいと言われ、自覚もしていた。それに髪は硬くてフサフサ。丸刈りから長髪になる時、「こりゃあ料金割り増し」と日ごろ無口な散髪屋の主人が笑った。
 あれから何十年。しゃがんだ姿を上から撮られた写真、なんと頭頂に皮膚丸見えの薄毛の域が広がる。髪が減り寒暑の季節感をもろに感じてはいたが、「ここまで抜け落ちているとは」。隠しようのない状態に驚きとがっかりが入り交じる。 
 あの主人、はさみを使いながら、今なら「割り引いてあげる」と笑顔かも。3色の回転灯の灯が消えて、もう7年になる。
  (2013.01.22 毎日新聞「はがき随筆」掲載) 岩国エッセイサロンより転載





書き初め展

2013-01-24 11:31:12 | アカショウビンのつぶやき






ドキドキしながら、半世紀ぶり(+20y)の
書き初め会に参加したアカショウビンでしたが、
19日から27日まで、
肝属郡錦江町の文化センター・町民ギャラリーで
書き初め展が開催されています。

錦江町は鹿屋市から離れており、参加できない私のために、
「写真だけでも見てください」と、
一部の画像を送って下さいました。

書家の田貫独心先生のもとで指導を受けてる方々の作品は
本当に素晴らしい!

自由にのびのびと書かれた文字には、力強さを感じます。

その中に加えて頂けただけで、本当にうれしいことでした。

79歳のアカショウビンの書は、いったいどれでしょうか…

中沢さんを悼む

2013-01-24 11:08:02 | はがき随筆


 「はだしのゲン」の作者、中沢啓治さんが亡くなった。
 広島での原爆体験から「ゲン」を通して、放射能の恐ろしさや平和の尊さを訴え、核兵器の全てを憎んだ。近年は病と闘いながら福島の原発事故を強く非難し、脱原発を叫び続けた。願いがかなわず命尽きるのはさぞ無念であったに違いない。
 以前、中沢さんの教師向けの講演を聴いた。中でも被爆者の髪や衣が焼け落ち、腕の皮膚が溶け、垂れて地に着くと痛いので手を前に伸ばして歩く話に涙した。結びに教師の平和教育への役割を説かれ責任を感じた。
 中沢さんのご冥福を祈る。
  出水市 清田文雄 2013/1/24 毎日新聞鹿児島版掲載

画像は広島原爆ドーム

義弟の死

2013-01-24 10:53:50 | はがき随筆


 昨年11月、義弟が急死したという知らせを受けて、びっくり。あんなに元気な義弟が本当に死んだの?
 何かの間違いであってほしいと思いつつ、喪服をケースに入れて上京した。
 「前日の夕方も水泳をして何も変わった様子はなかったけど、朝起きてこなくて……」と義妹が話した。
 義弟宅はスカイツリーのすぐ近く。見に行きたいと思ってはいたが、まさか、こういう成り行きで見ようとは。
 天高く堂々とそびえ立つスカイツリーの先端を見上げていたら、喉に涙が流れてきた。
  鹿児島市 馬渡浩子 2013/1/23 毎日新聞鹿児島版掲載

今年最初のラジオ番組取材でした

2013-01-22 17:42:34 | アカショウビンのつぶやき


今年最初に取材させていただいたのは、90歳のIさんです。

Iさんは、NTTに長年勤務され、退職後は郷土史家として活躍され、
文筆活動、油絵、書道などと多才な趣味の持ち主です。

今回は、日本の電信史上、重要な役目を果たしながら、
人々の記憶から消えようとしている
「大浜電信局」について、紹介していただきました。

大浜電信局は、大隅半島の南端、肝属郡南大隅町・大浜海岸に
ポツンと記念碑だけが残っています。
当時は軍事機密事項もあり、近隣の人々にも知らされることなく
歴史の中に埋もれそうになっていた、大浜電信局の歴史を
地道に資料を集めて、まとめて下さいました。

Oさんは「トンツー屋(モールス通信)」の誇りを大切にしています。
既に死語となってしまった「モールス通信」ですが、
仲間も高齢化した現在、今のうちに当時の事をまとめておきたい。
とおっしゃってました。

「次はそれを話題にした番組を作りませんか」
とお願いしましたが、
「んにゃ、もうだれたがよー」と。

どう見ても80代前半にしか見えない、
万年青年のIさん、頑張ってくださいね。




画像はサイトより拝借




梅が香に…

2013-01-22 17:20:31 | アカショウビンのつぶやき


大寒から少しずつ春に向かったかに見える大隅半島。

我が家の梅もほころびはじめました。
この画像は大寒直前の猛烈に寒かった日。
たった1輪開いていました。
去年は、開花してから雪をかぶった梅ですが、
今年はまだ雪がありません。
しかし3月に大雪の記録もありますから…。

今日は午前中、とっても暖かでした。
午後は雲が出て、気温もぐっと下りました。

梅の馥郁とした香りに包まれる日もまもなくでしょう。

桜島は相変わらず活発な活動を続け、
年が明けてから60回を超えました。

つもった火山灰で紅梅は色褪せてしまいます。

柿の実の謎

2013-01-22 15:39:45 | はがき随筆
 11月に帰省した時、向かい側の兄の家の柿の木に、小さな柿の実が鈴なりになっていた。小粒で珍しい柿の実だ。この柿の木は、自然に自分で生えてきて、ぐんぐん大きくなった。
 種を運んできたのは鳥だろか、風だろうか。渋柿だろうか、甘柿だろうか。食べられるのだろうか、山柿だろうか……。そんなことを母と話しながら眺めていた。
 12月に帰省した時「カラスが熟して落ちた柿の実を食べていたよ。(兄が柿の枝を落としたので)食べてみたら甘くて種がたくさんあったよ」と母。柿の実の謎が少し解けた。
  屋久島町 山岡淳子 2013/1/21 毎日新聞鹿児島版掲載