はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

耐震診断

2011-09-29 22:46:21 | アカショウビンのつぶやき
 耐震診断の結果が来た。なんと「倒壊の可能性あり」。

 市の広報誌に耐震診断の補助金制度のお知らせがあった。
去年も見たが「怖い結果が出たらどうしよう…」と迷っているうちに申請期間がすぎていた。
東日本大震災の怖さをまざまざと見せつけられた今年は、ためらわずに申し込んだ。
築33年の古い家だし、開口部が、かなりアンバランスな間取りのうえ、あまりお金をかけた家ではないので、結果は、残念ながら納得せざるを得ないだろう。

業者の説明によると、一部に弱いところがあって、総体的に評価が下がったらしい。
図面を見た段階では、特に問題はないと思いますよ…と言われたのだが…。
とても親切な業者で、何もわからないおばあちゃんの質問にも根気よく相手をして下さった。

「この家の中で1番安全な部屋はどこですか」と聞いてみた。
両親のために作った部屋が一番安全だと分かった。夫の気遣いだったのだろうか。

「先に天国に行く人に最高のものを!」といつも言っていた夫。

その夫が義母より先に逝ってしまった。
秋はやっぱりさびしいなあ。

ちょっとブルーなアカショウビンです。

感謝

2011-09-29 22:39:42 | はがき随筆
 私の叙勲の受賞に対して、教え子をはじめいろいろな団体やグループの方々が、祝賀会を開いてくださいました。
 私は27年間、保護司をしてきましたが、私のような者が叙勲の栄に浴し、面はゆい思いをしていたのに、その上、大勢の方々から丁重な祝辞と激励を頂き恐縮至極で、感謝感激のほかありませんでした。
 保護司が人に接する時の姿勢として「人はみな生かされて生きている」という相互扶助の精神が大切だといわれるが、この度の叙勲に当たり私自身多くの方々に支えられていたことを再認識させられる出来事でした。
  志布志市 一木法明 2011/9/29 毎日新聞鹿児島版掲載

怪物 徹子

2011-09-29 22:31:10 | はがき随筆
 私は朝のうちに、その日の予定を立てて家を出る。さしたる予定のない日は家でテレビを見る。そこに現れるのが黒柳徹子女史なのだ。あの「徹子の部屋」はそもそもいつから放送しているのだろうか? 私の若いころから彼女はしゃべっていたような気がする。しかも、ほとんど同じ容貌でだ。それに彼女に話しかけられた人は、まるで魔術にでもかかたように引き込まれるから不思議だ。徹子は言う。「相手の心を開くには、まず自分から心を開くことだ」
 そんなことはわかっているが、私には、それができない。
 やっぱり徹子は怪物だ。
  鹿児島市 高野幸祐 2011/9/28 毎日新聞鹿児島版掲載

自分の字を見ると気分が悪くなる

2011-09-29 10:03:28 | 岩国エッセイサロンより
2011年9月29日 (木)

  岩国市  会 員   山本 一

私はひどい乱筆である。自分の書いた字を見ると気分が悪くなる。手帳などに書いた字が、数日たつと自分でも読めないこともある。丁寧に書くと下手なのがよりはっきりするので、さっと書く。さらに悪いことは、我流で大体似た字を創作して書いてしまうことだ。「文章を書くことは好きだが、字を書くことは嫌い」という自己矛盾を抱え、長年苦しんだ。

この状況を一変させてくれたのがワープロの登場である。初期はたったの1行しか表示できない代物だったが「渡りに船」。時は流れ、今、パソコン全盛である。私は文章を書くことが大好きになった。だが、手紙を書く時はいつも心に引っ掛かるものがある。「パソコンでは心が通じない」という大勢の人の意見が、胸に突き刺さっているからだ。

それでもあえて、手紙を書くときはパソコンで書く。手紙を受け取る方に悪筆で迷惑をかけないために。自分の字を見て自分が苦しまないために。同じ文章のコピーなどは絶対にしない。相手の顔を思い浮かべ、心を込めてキーをたたく。せめてもの罪滅ぼしとして、日付と自分の名前は手書きする。

(2011.09.29 朝日新聞「声」掲載) 岩国エッセイサロンより転載

「新米に感謝」

2011-09-28 21:09:03 | 岩国エッセイサロンより
2011年9月28日 (水)

   山陽小野田市  会 員   河村 仁美

 科学技術が発達し、機械化が進んだ今日でさえ、農作物の収穫は天候に左右されている。今治市に住む叔母が、今年もふるさとの新米を送ってくれた。80歳近い叔母夫婦が丹精して作ってくれたお米だ。

 小さいころに手伝いをした、黄金色に色づいた田んぼの稲穂が目に浮かぶ。叔母の家はわが家からひと山越えた所にあり、父が手伝いに行くときは単車の後ろに乗って必ずついて行った。

 ついて行っても小学生の私にできることはあまりない。刈った稲をよいしょよいしょと稲架(はざ)まで運ぶのが私の役目だった。汗をかきながらも楽しそうにしていたら、いとこが言った。「仁美ちゃんは、たまに来て手伝うだけだから楽しいかもしれないけれど、僕はいつもせんといけんのだから」。その言葉が、40年以上たっても忘れられない。

 保育園のころ、「一粒のお米にも万人の人の苦労がこもっています。感謝をこめていただきます」と言っていたのを、今でも覚えている。炊きあがった新米を感謝をこめていただいた。

   (2011.09.25 愛媛新聞「へんろ道」掲載) 岩國エッセイサロンより転載

ラジコ

2011-09-27 14:50:36 | ペン&ぺん
 「最近、中学生や高校生の中には、ラジオに触れたことのない子もいるんです」
 そんな話をMBC南日本放送の関係者から聞き、少し驚きました。
 私の経験では、中学生や高校生の時代は、ラジオから流れてくる音楽やDJのトークに心を躍らせた時期。ラジオから録音した音楽のカセットテープは、いわば宝物でした。
 ところが、今やパソコン時代。ラジオどころかテレビまでインターネットにつながります。子どもたちも、ラジオよりパソコンに慣れ親しんでいるようです。
 そんな中、10月3日からMBCラジオがパソコンやスマートフォン(多機能携帯電話)で聞けるようになります。ラジコの愛称で知られるネット配信サービスに、MBCラジオが加入。放送と同じ番組を、同じ時間にネット配信するそうです。
 MBCクロスメディア部によると、離島や県本土の沿岸部で電波が届きにくい地域があり、そんな難視聴地域でもラジコで番組を鮮明に聞けるとのことです。また、最近はアジア地域の経済発展で海外の放送局が多くなり、夜間混信して聞きづらくなるケースもあり、この問題もラジコなら回避できるようです。
 さらに災害時。持ち出した携帯ラジオの電池が万一切れてしまった時にはスマートフォンで地元ラジオを聞き、細かな災害情報を得ることもできそうです。MBCの担当者は「ラジオを聞くルートが増えることで、新たなリスナーが増えることを期待しています」とのこと。
 MBCラジオと言えば毎月最終土曜日、朝の番組で、本紙鹿児島版「はがき随筆」月間賞の作品を朗読してもらっています。受賞者のインタビューもあり、執筆のきっかけや裏話も聞けて楽しめます。ラジコの配信で新しいリスナーが「はがき随筆」に触れる機会になってほしいと思います。
 鹿児島支局長 馬原浩 2011/9/26 毎日新聞掲載

秋祭り

2011-09-27 12:00:34 | アカショウビンのつぶやき




信愛コーラスは、「東日本大震災復興支援・秋祭り大会」に参加しました。
最近ステージが次々ですが、皆さん頑張っています。

一曲目は、太鼓を鳴らしながら勢いよく、「村祭り」
と思ったのですが、初めて体験する野外の会場は、
音が散ってしまい、残念ながら、少し息が乱れました。

次は、「バラの街かのや」をイメージしながら、
「バラが咲いた」を、しっとり歌いました。

最後に、上を向いてあるこう!
会場の皆さんも一緒に歌って下さり、盛り上がりました♪

結果については、反省しきりでしたが、
初めての体験をさせて頂き、感謝でした。

輪読会

2011-09-27 11:11:51 | はがき随筆


 萩が咲き栗が落ちると、もう抜き差しならぬ灯火親しむの候。あれも読まねば、そしてこれも。昨年ある行事で知り合った数人で「源氏物語」の輪読会を立ち上げ月1回集まっている。手持ちの文庫本を拡大コピーし順番に好きなだけ読んで、あれこれしゃべり合うのが楽しい。声に出して読む。人の読むのを聞く。考える。そして忌憚のない意見を言い合う。こんな形で衰えかけた脳へ心地よい刺激を与えることで、ともすると沈みがちになる気持を取り直すことができるように思う。きっと老人性の鬱や認知症の予防につながると期待しています。
  鹿屋市 門倉キヨ子 2011/9/27 毎日新聞鹿児島版掲載

月の光

2011-09-27 10:57:53 | はがき随筆
 月が縁側を照らし、伸ばした指の影が床に落ちた時、ふと、幼き日を思い出した。
 電灯を消した座敷で、障子の向こうから「コンコン」。父の声と同時にキツネの影が映った。それから鳥の羽ばたきや箸を使って船頭が船をこぐ影など父の手からうまれるさまざまな影絵を姉妹と次は何が現れるかと期待して見入った。影絵を習って遊んだり、月夜に表に出て、影踏みして走り回った事も浮かんだ。遠い子供のころである。
 時の流れ、今、影踏み遊びなど消えているように思う。庭に出て見た。月光を浴びた草木が神々しく神秘に見えた。
  出水市 年神貞子 2011/9/26 毎日新聞鹿児島版掲載

伝説の大楠

2011-09-27 10:38:34 | はがき随筆


 目前の、出水や蒲生の大楠の幹の洞は、伝説の恋の傷跡か。
 約1300年前、出水市広瀬の井出に住む幸媛という娘と雅彦という青年は、人もうらやむ恋仲だったという。ところが、稲置という当時の権力者に、幸媛は横恋慕され、雅彦は蒲生に追放されることになった。
 どんなに無念だったことだろう。別れ際に、幸媛は二つの楠の実の一つを雅彦に渡し「私の身代わりと思い蒲生で育てて」と頼み、他を井出に植えた。
 楠は恋を託され、幾星霜。ごつごつした幹に想いをいっぱいこめた楠。いつまでも伸び続けてせめて天で結ばれてほしい。
  出水市 小村忍 2011/9/25 毎日新聞鹿児島版掲載

彼岸花

2011-09-24 21:17:14 | はがき随筆


 台風の接近で、朝の空は曇っていて細かい雨が降っていた。あるいはと思って庭に出てみたら案の定、芽を出していた。
 彼岸花である。土の中でどうして季節の移りを感じるのか。まず、それが不思議であるが、その柔らかい芽で固い土を破って出てくることに神秘的なものを感じる。そして彼岸花を見ると、もう10年以上前に行った牧水の生家の前に咲いていた彼岸花を思い出す。何回も行ったが、また出かけてみたい。
 花を見ると、墓参りと思いは続くが、今年の秋もその神秘さに浸り愛でたいものだと思う。
  志布志市志布志小村豊一郎 毎日新聞鹿児島版掲載

涼風

2011-09-24 21:11:09 | はがき随筆
 夏休み、子どもたちのいない教室で、一人静かに仕事をしていると、時折、すうっと冷たい涼しい風が通り抜ける。ああ、これが俗に言う極楽風かなと思いながら、風に感謝する。その風の話をすると「海からの風で涼しいのだろうね」と、母は言う。教室の窓から見える海の色は、その時々によって変わる。晴れた日、雨の日、くもりの日、朝、昼、晩……と、違った色を奏でる海。
 からっと晴れた夏の日。真っ青な空、真っ白な雲、青い海、緑の山々。そこをかけ抜ける海風、山風。扇風機の風と共に、涼しい風をありがとう。
  屋久島町 山岡淳子

ゲゲゲ…

2011-09-24 21:04:51 | はがき随筆
 「この人を見ると、お母さんを思い出す」。父がぽそっと、つぶやく。病室のテレビに目を向けると、そこには去年の朝の連ドラで、漫画家の妻の役で脚光を浴びた美しい女優さん。
 申し訳ないが、全く似ていない。噴き出しそうなのをこらえ「へえ、どんなところが?」父は「背がスラッとしてスタイルがよく、お母さんそっくりだ」認めよう。確かに若いころ母は細身でスラリとしていた。私たちの知らない母の姿。笑いをかみ殺していた自分が情けない。人前で父から褒められたことのなかった母。今ごろ草葉の陰で大喜び? うれし泣き?
  霧島市 福崎康代 2011/9/22 毎日新聞鹿児島版掲載

クロアゲハくん

2011-09-24 20:44:08 | はがき随筆


 この時期に飛び交う赤とんぼ。今年はどこにいったことやら、そこにクロアゲハが舞ってきた。
 君も暑さを逃れたいのか。苦瓜(ゴーヤ)の花で、一休み。木陰から、それを目で追っていた母。危ない、アゲハ君。そっと手を伸ばす母。
 母の年齢を考えて、軍配は君にあげていたのに。
 「やった」と母。
 「やられた」とアゲハ君。
 女を甘く見たな。それとも年寄りと思っていたか。明らかに君の油断だ。しわくちゃ顔に勝ち誇った笑み。大正期に戻った至福の時か。
  姶良市 山下恰 2011/9/21 毎日新聞鹿児島版掲載

おじゃったもんせ

2011-09-24 20:31:56 | 女の気持ち/男の気持ち
 鹿児島の人とご縁があって一緒になった。
 先日、その夫の姉の葬儀があった。新幹線で鹿児島中央駅に着くと、広々と明るい構内に「おじゃったもんせ」と朱書きで大きく書かれた横断幕がかかっていた。その上に墨字で「いらっしゃいませ」と添えられている。
 ああ、この言葉、何度聞いたことだろう。帰省のたびに出迎えてくれる姉妹たちの口から発せられるその優しい響き。「これを聞くと、ああふるさとに帰ってきたんだなあとほっとする」と言っていた夫ももういない。
 中央駅から日豊本線に乗り継ぎ東洋のナポリとも言われた桜島と錦江湾を右に見ながら、今日は一人の帰省旅である。
 帖佐駅には甥が迎えに来てくれていて、姉の葬儀へ。「この姉には独身時代ことのほか世話になり、面倒を見てもらった。病気で心配もかけた」と夫が言っていたので、私が元気なうちに姉を見送る務めを果たすことができて、ほっとしている。
 歳月は流れ、甥たち姪たちもおじさんおばさんになっているが、その優しいこと。私が高齢だから気遣ってくれているのかもしれないが、鹿児島の人たちはみんな優しい。姉も90までいきたのだから心残りはないだろう。
 中央駅の「おじゃったもんせ」は、旅人を優しく迎える最高のもてなしだと思う。
 ありがとうございました。
  熊本市 酒匂禮子 2011/9/20 毎日新聞の気持ち欄掲載