はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

雪柳

2006-04-30 18:08:47 | はがき随筆
 長く寒かった冬を押しのけてやっと春が一度にやって来た。三つ葉つつじも満開。雪柳も咲き出した。切って菜の花、水仙、椿などと活けると互いに引き立ち合って実に美しい。家中に飾って楽しんでいる。母の所に持って行くと好評だったので、次は皆で見てもらうように、たくさん切って持って行った。切っても切っても細い枝を毎年出して花を咲かせてくれる雪柳。純白の小花の集まりは本当に雪の精が宿っているようだ。雪柳に限らず、どの植物も精いっぱいに惜しげもなく、おびただしい花を咲かせる。そのことは私は深く感動させられる。
   霧島市溝辺町崎森 秋峯 いくよ(65) 2006/4/30 掲載

みどりの日のぶろぐ

2006-04-29 08:53:17 | アカショウビンのつぶやき
 みどりの日限定のデザインです。
ちょっと見にくいかもしれませんが、今日一日だけですからごめんなさい。
明日は「優雅な百合」に戻します。
 
 明日、お越しくださり、素晴らしい「みどりの日のぶろぐ」を見られなかったあなたには、PC画面を「カシャッ」。どうぞこちらを
(アカショウビン)

蕎麦とエッセー

2006-04-29 08:46:57 | はがき随筆
 エッセーを一つ書き終えた私は、少し小腹が減ったので近くのそば屋へ出かけた。
 「おじさん、この蕎麦結構うまいけど、何か秘けつでもあるの」
 「そりゃあ、そば粉も大切だけど、肝心なのは繋ぎだね。繋ぎ一つで食感が変わるからな。それに葱と唐辛子だよ。唐辛子のピリッとくるところまで考えて味を付けんとだめなんだよ」
 蕎麦屋を後にした私はちょっと考えさせられた。繋ぎに唐辛子かあ、なるほどなあ。もう一度、原稿を見直してみるか。家路を帰る私の足は、心なしか速くなっていた。
   鹿児島市紫原 高野幸祐(73) 2006/4/29 掲載

今、息子にとって

2006-04-28 12:16:59 | はがき随筆
 13年間のたゆまぬ努力は無駄に終わるのか。今、決断を迫られている。福祉系大学を終え介護福祉士として頑張ってきたのに。主任職も得たのに。すべてのものが瞬時に総崩れようとしている。息子の心をどう癒すか。一言の力に勇気を奮い起こし負けてたまるか。時は刻々と流れていく。いつかの時に再起のチャンスが到来してしくると信じよう。一生を福祉にかけた息子に神の恩恵を生じさせよう。努力の足跡に陽光を浴びる時もあろう。無駄にする社会では……心底から信じよう。春もあり、冬もある。今、息子にとって冬であり我慢期である。
   出水市高尾野町唐笠木 岩田昭治(66) 2006/4/28 掲載

家族をテーマに作品を募集します

2006-04-27 18:45:12 | グランプリ大会
 毎日はがき随筆文学賞
 毎日はがき随筆大賞が、第5回を迎えるのを記念して、今年は「255字の世界~毎日はがき随筆文学賞」の作品を募集します。ペスト3を選び、6月11日(日曜)、福岡市で開く毎日はがき随筆大賞の発表・表彰式で同時発表します。
【募集内容】
テーマ(題)は「家族」。字数は、「はがき随筆」と同じ17字×15行(255字)以内。
【応募方法】
住所、氏名、年齢、郵便・電話各番号を明記のうえ、〒810-8551(住所不要)
毎日新聞福岡本部報道部「はがき随筆文学賞」係まで、はがき、または封書で。5月31日必着
【表彰】
ベスト3作品。賞状と副賞
【審査方法】
西部本社の加藤信夫編集局長、武田芳明代表室長、伊藤元信編集局次長ほか、福岡県内のはがき随筆担当デスクが選考します
    毎日新聞西部本社  2006/4/27 毎日新聞掲載より

桜の夜

2006-04-27 17:43:13 | はがき随筆
 東京のメル友〝武蔵野の雄太〟が来鹿した。就職も内定してひと息ついたところらしい。初めて知覧の特攻平和会館を案内した。
 彼は遺品や遺影を小一時間も見学していたが、目をうるませて出てきた。帰りの車中でも言葉が少ない。その夜、焼酎をたしなみながら、少年飛行兵を志願した心情、その時代背景、厳しい訓練風景を語った。「おじいちゃん、大変な時代を生きてきたんだね。不幸な時代だよね。ただ命をかけて貫いた精神力には感動する」
 外は雨になったようだ。散り急ぐ満開の桜を思う。
   鹿児島市伊敷 福元啓刀(76) 2006/4/27 掲載

はがき随筆3月度入選

2006-04-26 11:57:51 | 受賞作品
 はがき随筆3月度の入選作品が決まりました。
△ 鹿児島市紫原、高野幸祐さん(73)の「春見つけた」(23日)
△ 薩摩川内市樋脇町、下内良幸さん(76)の「娘に感謝」(1日)
△ 鹿児島市山田町、吉松幸夫さん(47)の「一期一会」(27日)の3点です。
 春本番ですね。たくさんの方々が春の花や鳥への思いを、行事の楽しさや喜びを、全身でたっぷり書きました。神田橋弘子さんの「春遠からじ」、古木一郎さんの「春待つ心」、吉利万里子さんの「花便りが元気の源」、東郷久子さんの「シクラメン」、馬渡浩子さんの「レンゲの花」、川畑マスミさんの「春告鳥」、横山由美子さんの「針供養」、中田テル子さんの「初午祭」、口町円子さんの「ツクシ取り」といった具合です。
 春を称える文章はいいものですが、高野さんの「春見つけた」は、春の証しを求めて公園に急いだ高野さんが、桜もカエルもトカゲも見あたらず、がっかりして近くのスーパーに入りブロッコリーの大きさと値段の安さに驚き「これが春なんだ。都会の春は野菜の値段にあった」と思う、というもの。高野さんの見つけた春は野菜の値段の安さでした。日常にある春を発見した面白さと、さらさら流れる文章の魅力が個性的で面白く読みました。
 さて春は良い話題が豊富です。下市さんの「娘に感謝」は、病気の母とその介護や慣れぬ家事をする父親のために、明るい雰囲気の中で大変に働く娘の話。吉松さんの「一期一会」は、お年寄りを助けようと近寄ったら少しでも人の役にたとうとして、たばこの吸い殻を拾うところだったという話です。竹之井敏さんの「小さな試み」は、認知症予防のため書いた文章が100枚になったということ、家族のために動く竹之内美知子さんの「ばあばは忙しい」、上野昭子さんの「20個片付け」など、皆さん自分のための努力ですね。
(日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)

係から
 入選作品のうち1編は29日午前8時40分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。作者へのインタビューもあります。「二見いすずの土曜の朝」はのコーナー「朝のとっておき」です。

お帰り

2006-04-26 11:22:55 | はがき随筆
 モモの花が咲き誇るころ、熊本県山鹿市に住んでいた長女が、4歳になった孫娘と我が家に戻ってきた。
 一昨年、夫を突然亡くした長女は、働きながら子育てを頑張ってきたが、疲れや寂しさから「帰ってもいい?」という電話に「いいよ」と私たち。「お帰り」に首をかしげる血液型O方の孫娘は、B型家族の執り成し役や主人公になりそうだ。
 ゆっくりしたら……と思う親心を背に「仕事や保育園さがしに行く」と出かける娘が心強い。
 古里に帰ってきた娘や孫のためにも、若い心でハッスルハッスル。
   出水市高尾野町柴引 清田文雄(66) 2006/4/26 掲載

公取委の動き

2006-04-25 12:26:31 | かごんま便り
 鹿児島県は南北約590㌔、東西約270㌔ある。平地はもとより、山間部があり、離島がある。鹿児島だけで考えても、あらゆる地域に毎日新聞は同じ価格で戸別配達(宅配)されている。他の全国紙、地方紙も同様だ。毎日届く新聞には、あらゆる情報がぎっしり詰まっている。
 この制度が崩れたら、離島や山間部の読者には配達料が上乗せされるかもしれない。あるいは価格の値下げ競争で残った販売店の受け持ち地域が広がり過ぎて、届けることが出来ない家庭も出てくるに違いない。
 こんな問題が実際に起こり得るような動きがある。公正取引委員会が宅配制度を支えている「特殊指定」の見直し方針を打ち出しているからだ。特殊指定の対象に新聞があり、異なる定価にしたり、割り引いてはならないなどの規定がある。
 メーカーが小売店に定価を指定するのを禁じた独占禁止法も、新聞や書籍の著作物などは例外的に「再販制度」で認められている。この再販制度と合わせて同じ価格での宅配制度は守られている。
 ところが、新聞が特殊指定からはずれると値引きの過当競争が予想され、弱い販売店は淘汰されてしまう。残った販売店は、消えた販売店の分まで配達しなければならない。競争で勝っても採算が取れなければ撤退するか、今度はそのエリアの新聞価格は値上げになるだろう。特に過疎地域の家庭への影響が大きいと考えられる。
 公取委が特殊指定の見直しをするのは「時間がたち、そぐわなくなったから」と理由は漠然としている。確かに新聞は「商品」ではあるが、より大切な使命があると思う。
 へき地にいても、中央や県外の動き、世界や経済の動向はもとより、身近な消費税や医療費はどうなるのかを知る権利がある。あるいは知らなかった分野への好奇心や知識を高めることが出来る。
 視覚的なテレビと比べても毎日、家庭に届く1部に凝縮されている情報量は多い。新聞を読まない人は増えているが、それは丹念に読んだことがないから面白さが分からないからであろう。
 施行された電気用品安全法にはリサイクル業者をはじめ、多くの人が時代にそぐわないとして批判の声を上げ、混乱している。おかしい施策には皆さんの声が大切であり、それを守るのも新聞の使命の一つでもある。

蕨の宿命

2006-04-25 12:05:14 | はがき随筆
 あの山も、この山も少年時代は野焼きがあった。その後に生えた蕨折りはとても楽しかったなあ、と思いながら生まれ育った里に着いた。もしかして、と思い足を運んだ。茅と木立が茂っている。あった、あった。太く長い蕨たちが拳を天に突き上げ、自己主張している。枝も葉もない。何という幸運。しばらく眺めていると、昔、源氏に追われた平家の公達の宿命を思った。様変わりした自然に住処を追われた蕨たちが、こんな狭い場所で優雅に生き延びていたとは。蕨たちに申し訳ない思いで、ポキッポキッと折った。たちまち買い物袋いっぱいになった。
   霧島市福島 楠元勇一(79) 2006/4/25掲載

志風さんのこと

2006-04-24 08:18:57 | はがき随筆
 この随筆コーナーでおなじみの志風さんが亡くなられた。筋ジスという病気でありながら、清々しい生き方と優しさ、愛で誰よりも他の人々を励まし、勇気づけ桜の花たちと一緒に逝ってしまわれた。私と9歳の娘は、4年前から月に3回くらい志風さんと便りを交換していた。いつも「マイペースでいいんだよ。ゆっくりあせらずにね。がんばってね」という、優しい言葉が書かれていて、私たち親子は元気をもらっていた。志風さんからの優しさ、強さ、温かさに心から感謝している。私たち親子もゆっくりと頑張っていきます。どうか見守っていてください。
   鹿児島市真砂本町 萩原裕子(53) 2006/4/24 掲載

啄木にみる故郷

2006-04-23 14:10:57 | はがき随筆
 私のそばには、いつも啄木歌集がある。啄木ほど故郷にこだわった人物はいないだろう。啄木にとって故郷は「ふるさとの山に向かひて言ふことなしふるさとの山はありがたきかな」であり、「石をもて追はるるごとくふるさとを出でしかなしみ消ゆる時なし」である。故郷渋民村の自然は親友であるが、自分を偏見する人間は敵であるというゆがめられた思慕が同居しながらも望郷している。故郷は良きにつけ、悪しきにつけ永久に忘れてはならないものであるということを示唆しているようでならない。〝故郷〟、それは人間の心のふるさとなのかも知れない。
   鹿児島市鴨池 川畑清一郎(58) 2006/4/23 掲載

出水ツルマラソン

2006-04-22 08:37:09 | はがき随筆
 高空を水流が3羽飛んでいた。2000人近くの選手や、家族のひしめき。出水ツルマラソンの出場者が、陸上競技場のあちこちでサッ、サッ、サッと足慣らしをしている。
 1人の選手が後ろから3㌔コースをマイペースで走り出す。隻腕で足運びが独特だ。障害者かもしれないが、喜びに満ちた目のその人の走りは、私には輝いて見えた。「一緒に走りませんか」と誘っているようだ。
 心臓が悪く、もう走ることはない。友人の応援専門と思っていた私に、熱いものを感じさせた。寒い日だったが、わくような元気をもらった。
   出水は大野原町 小村 忍(63) 2006/4/22 掲載  
   写真は Ueno's Photorun Galleryより

スペクタル手品

2006-04-21 08:23:19 | はがき随筆
 両岸は枯れ草に覆われ、縦長く広い中州は、1㍍ほどの茶褐色の葦がびっしり。米ノ津川の六月田堰の一月の光景を、友人3人の脳裏に焼き付けてもらった。3月5日、機は熟した。彼らと同行して六月田堰の堤防を駆け登る。堤防や両岸に中州一面に、菜の花の群生が出現して春爛漫。茶褐色の殺風景を、50日で花畑に変えた。枯れ草と葦の繁茂を押し分けた菜の花を、誰が想像し得ただろうか。自然のスペクタル手品に、三人は驚嘆と驚愕の入り交じった「信じられない」を連発。川面を渡る菜の香りに乾杯。
   出水市緑町 道田道範(56) 2006/4/21 掲載

どっちワン

2006-04-20 07:06:23 | はがき随筆
 「ばあちゃん、この犬はなんて言う名前?」「あたいや、チビつゆかたを(私はチビと呼んでいる)……」
 じいちゃん亡きあと、1人暮らしのばあちゃん宅に番犬として最近やって来た。これまで、近くに住む息子さん宅で飼われていた老犬だ。
 後日、息子さんに犬の名前を聞くと、マリーと言うことが判明。ばあちゃんがわかるように、冷蔵庫にも張ってあると言う。
 長年、マリーと呼ばれていたチビは、気持ちよさそうに今日も日向ぼっこをしているが、心のうちはきっと「どっちワン」。
   垂水市市木 竹之内政子(56) 2006/4/20 掲載